「女子大生会計士の事件簿」シリーズや「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」の著者は、山田 真哉(やまだ しんや)さんです。
●公認会計士 山田真哉工房 〜『女子大生会計士の事件簿』公式サイト〜
http://www.cam.hi-ho.ne.jp/shinya-yamada/
山田さんは雑誌「DIME」にて、「女子高生とさおだけ屋 5分間の会計学」という連載をしています。
●今回のテーマ
「なぜ、商店街にある昔ながらのお店は潰れないのか?」
実は会計的に見て、非常に収益性の高い仕組みが隠されているのです。
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お客さんが殆どいない商店街のお店。
一見、引退間際の店主が趣味でやっているように思えますが、実は違います。
商いを継続していくには、利益を出すことが必要です。
「売上-費用=利益」
個人の場合ですと「収入-消費=貯蓄」となります。
つまり利益を出すには、売上を増やすか、費用を減らせば良いのです。
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会計の世界では、在庫のままロスとなる損失のことを「棚卸減耗損(たなおろしげんもうそん)」と呼びます。
また、在庫が増えれば、管理のために人件費がかかり、しまっておくための倉庫代が増えます。
例えば、商店街の焼肉屋はロスが殆どありません。
お店は持ち家、従業員はおばあさんだけ。
仕入れを行うのは、昔なじみのお客さんが来る時だけなので、その日のうちに売り切ってしまう。
売り上げから引かれる費用は、純粋に仕入れ代だけなのです。
このロスを無くすという考え方は、家計でも見習うべきです。
積まれたままの本、殆ど着ない洋服、タイムサービスで安かったからと買ったまま冷凍庫で眠った食材・・・。
家の中にロスの塊が目につくようならば、買い物について再考が必要です。
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昔ながらの自転車屋、洋品店、文房具店。
なぜ潰れないのだろうと思ったら、周囲数百メートルを調べてみてください。
公共的な機関(学校、病院、警察、郵便局)があるはずです。
公共機関は住民にサービスを提供するだけではなく、地元の経済に貢献する役割もあります。
そこで出来たのが、「指定店」「特約店」といった制度です。
学校指定の体操着・制服を取り扱う洋品店。
病院が紹介する介護商品販売店。
警察近くの証明写真スタジオなどがそれにあたります。
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「現金」の流れに着目する経営を「キャッシュフロー経営」と呼びます。
現金がどういうふうに動いたかを追っていくのです。
商店街にある昔ながらのお店は、一般のお客さんを相手にした売上である「定期低収入」と、公共機関からの売り上げである「不定期高収入」の2つがうまく補いあっています。
自転車屋ですと、日頃はパンク修理や部品交換などで定期低収入を確保。
たまに入る警察や郵便局の自転車の大量メンテナンスで不定期高収入を得ることで、商いを続けていけます。
このように、現金の流れを「定期低収入」「不定期高収入」という形で見ていくと、商店街のお店が潰れない理由がわかります。
※
節約や副業を考えるサラリーマンが増えたのは、キャッシュフローのバランスが崩れているからです。
以前ですと、昇給のある給与(定期低収入)と年2回の賞与(不定期高収入)が当たり前のようにありました。
節約をしなくても貯金が出来たのです。
しかし不況により、給与は横ばい、ボーナスは下がっています。
「収入-消費=貯蓄」のうち、「収入」に大きな打撃を受けているサラリーマンが多いのです。
副業でボーナスの代わりとなる収入を作りだそうと思っても、時間が無いので、なかなか難しいものです。
つまり今後、サラリーマンにとって大きなテーマは「節約」となります。
商店街の焼肉店のような、ロスの少ない生活が理想の姿なのです。
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商店街の魅力を伝えるには様々な方法があると思います。
しかし、ある程度年齢が過ぎたビジネスマンには、お店で取り扱っている商品をアピールされても今ひとつピンと来ないかもしれません。
理由は、それらの商品を使うのは自分の嫁や子供であって、自分では無いからです。
セレクトショップに並んでいるお洒落なアイテムについて説明を受けても、なかなか引き込まれないでしょう。
理由は、自分の好きなブランドは決まっており、それを買うルートも決まっているからです(無ければネットで買う)。
それよりも、セレクトショップのバイヤーとして必要な能力についてお話しを聞く方が面白いかも。
バイヤーに必要なものは、流行を感じ取るアンテナでも、ファッションセンスでもありません。
重要なのは、お客さんを納得させる値付け感覚と、適切な仕入れ数を見極める能力です。
直感やセンスに頼らず、常に数量で分析する。
「感情」ではなく「勘定」で考えるのが、会計の基本。
新しいお店を構える際、定期低収入と不定期高収入を得るためのルートを作っておかないと、多くのお店は潰れてしまいます。
会計を知らないで、自分のセンスだけでやっているのが原因です。
魅力のある街づくりとして、いろんなお店を街の中に増やしたいのならば、そういった会計という側面から商いというものを教える必要があると思います。
そういうのを市政なり、商工会議所がやっていたら良いのですけれどね。
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