2012年01月31日

日本初の放課後コーディネーター平岩国泰さん〜「放課後NPOアフタースクール」が子供たちに体験プログラムを提供

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【日本初の放課後コーディネーター】

日本初の放課後コーディネーター・平岩国泰(ひらいわ・くにやす)さんが、雑誌のインタビューにこたえていました(投資&IRマガジン・ジャパニーズインベスターより)。

平岩さんは、NPO法人 放課後NPOアフタースクール代表理事です。

●特定非営利活動法人 「放課後NPOアフタースクール」
http://www.npoafterschool.org/

今の子供の9割は、アポなしで遊んだことがありません。
塾や習い事で忙しく、遊びは公園より室内ゲーム。
安全な遊び場の減少、受験戦争の激化。
そんな状況に風穴を開けようとしているのが、このNPO法人なのです。

このNPO法人は、地域の大人たちを巻き込み、放課後の子供たちにユニークな「体験プログラム」を提供しています。
既に2万人以上の子供が参加しました。

【子供たちに体験プログラムを提供】

現在、放課後NPOアフタスクールは、都内や横浜市などの小学校で活動しています。

衣食住を中心に、スポーツや遊び、文化、音楽など、今までに150種類以上の体験プログラムを提供し、2万人以上の子供が参加しました。

体験プログラムの内容は、「本格的な弟子入り」のような感じです。

地域の料理店の主人による和食教室、
漫画家による作画教室、
現役弁護士との模擬裁判など・・・。

他にも、
松屋銀座での「百貨店のお仕事体験」、
TBSとの「子ども記者養成講座」、
JR東日本との「夢の鉄道教室」など、
企業と提携してプログラムを開発することもあります。

その道のプロの技や仕事を間近で見るだけではなく、子供たち自身も実践します。
最後に、子供たちによる発表会の時間も設けており、受け身で終わらないように工夫されています。

公式サイトに記載されているエピソードを一つ紹介します。

「日本地図と少年」
和食プログラムの市民先生である赤坂の名店「魚新」の四分一先生はプログラムの際、必ず日本地図を張り出しました。
料理を作るだけでなくその素材となるものがどこの産地かを伝えるためです。
料理プログラムに毎回来てくれた少年、彼はお世辞にも運動や勉強が得意なタイプではなかったですが、彼が抜群の実力を発揮したのが「素材の産地当てクイズ」でした。
「この魚の産地は?」と先生が問いかけると、正解を連発。
普段いかにもおとなしそうなその少年は周りからも「素材王」と呼ばれ、とてもイキイキと料理プログラムを終えました。
彼は将来きっと「食」にまつわる仕事に就くだろう、と私たちは考えています。
そういう想像をするのがプログラムを開催する私たちの密かな楽しみでもあるのです。

【NPO立ち上げのきっかけ】

平岩さんがNPO法人を立ち上げたきっかけは、長女が誕生したことです。
当時、各地で子供の連れ去り事件が多発したり、子供が加害者になる事件までありました。
このような子供たちを取り巻く環境を改善したいと考えました。

平岩さんは友人から、アメリカの放課後改革の話しを聞きました。
アメリカは、日本より子供が犯罪に巻き込まれやすく、貧富による教育の差が激しい。
放課後は危険な時間という認識があります。
その為、放課後の学校で子供を預かり、体験プログラムを提供する試みが広がっていました。
それを聞いた平岩さんは、「放課後」というキーワードに注目しました。

また、平岩さんは企業の人事部に所属し、年間1000人以上の就活生と面接をしていました。
面接の中で、若者に元気が無いことを感じていました。

大人になりたくない、大人の社会はつまらない・・・。
そんな事を思う若者たちに対し、子供時代に「大人って凄い、あんな大人になりたい」と思える体験が少なかったのではないかと考えました。

【市民先生の起用】

子供たちと関わる大人は、学校の先生と親が中心です。
平岩さんはそこに、地域の大人を巻き込みたいと考えました。
様々な特技や職業を持つ大人を「市民先生」として迎え、放課後の学校で、子供たちに「大人の生き様」を伝えたい・・・。

平岩さんはそう考え、放課後に「市民先生」と「体験プログラム」をコーディネートする活動をはじめました。

前例のない活動ですから、最初はほとんどの学校で断られました。
しかし、地区会館での活動を続けるうち、体験プログラムを体験した子供たちの保護者の後押しで、3年目から学校での活動ができるようになりました。

ちなみにこの体験プログラムは、公立校では基本的に無料で提供しています。
平岩さんは、この活動のコストを調達するため、行政や企業、私立高など事業提携を増やしています。
コストは、社会から回収するという考えです。

平岩さんは、こう語ります。
「得意なことを見つけられて認められ、自分でも成長を確認できるというのは、人生の何よりの楽しみです。
子供たちには、たくさんの選択肢の中から、夢中になれる何かを見つけてほしい。
放課後は本来、遊びの時間。
出来ても出来なくても、失敗してもいい。
むしろ、失敗しちゃうくらい打ち込めるものに出会ってほしいと思っています」

この体験プログラムは子供たちだけではなく、市民先生となった大人たちも元気になる効果がありました。
自分の仕事や技術を伝え、子供たちがそれを喜ぶ姿は、大人を想像以上に元気づけたのです。

【学校・地域・家庭で子どもを見守る】

平岩さん曰く、少子高齢化社会は、伝えるべき知恵や技術など、良質な「大人資源」が豊富だと考えています。

需要(子ども)があり、供給(市民)もある。
そこに放課後NPOがつなぎ役となり、2つをマッチングする。

更に平岩さんが注目するのは、「学校」という場所資源。
広い校庭、理科室、家庭科室。
市民先生と子どもが、のびのびと行える場所として、学校以上に優れた場所はありません。

「市民×学校×NPO」の三者が手を組むことが、安全で豊かな放課後へ繋がります。

学校が、朝8時〜午後3時、勉学を教える。
地域が、午後3時〜午後6時、生き方を教える。
家庭が、午後6時〜朝8時、生活習慣を教える。

放課後NPOの活動により、学校・地域・家庭が一体となって子どもを見守る社会にしたいと考えています。

【真のゴール】

平岩さんは、日本全国に同じような放課後NPOが誕生する事を願っています。
しかし、それは通過点。
社会全体で子どもを見守ろうという機運が高まり、昔みたいに子供たちが自由に外で遊べる様になるのが、真のゴールなのだそうです。

※※※

これからの時代、子どもの成長を育むには、地域全体で育てるという考えが必要なのでしょうね。

けれど、「家と学校・塾以外、子どもに近づく見知らぬ大人は犯罪者」という風潮がありますよね。
これじゃあ、子供たちの視野は広がりません。
この世の中には、家や学校では味わえないワクワクな世界があり、それを生業にしている大人がいるのです。

でも、そんな大人を親御さんは、子供たちから遠ざけます。
「知らない大人=犯罪者」という過激な考えが蔓延しすぎです。
地域の大人たちも、そこに住んでいる子供たちが生き生きと暮らせるのを祈っているものです。

大抵、「子どもの夢=大人になってからの職業」ですよね。
子供たちの選択肢が、学校の先生や自分の親の職業しかないんじゃ、ちょっと悲しい。
選択肢を広げるには、子供たちに、もっとたくさんの職業・仕事を知ってもらいたいものですよね。

放課後コーディネーターが提供する体験プログラムは、実に興味深い。
体験学習の新たなる潮流になるのではないでしょうか。

Posted by kanzaki at 2012年01月31日 23:11