2012年03月09日

北九州市「到津の森公園(いとうづのもりこうえん)」は、動物園関係者が旭山動物園と同じぐらい敬意を表す動物園

日経ビジネスにて、福岡県北九州市にある「到津の森公園(いとうづのもりこうえん)」の事が書かれていました。

●到津の森公園
http://www.kpfmmf.jp/zoo/

・到津の森公園 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%88%B0%E6%B4%A5%E3%81%AE%E6%A3%AE%E5%85%AC%E5%9C%92

動物園といいますと、「旭山動物園」が有名です。
年間入園者数は300万人を超え、海外から訪れる方も多い。

一方、到津の森公園は、年間入園者数は40万人弱。
しかし動物園関係者が、旭山動物園と同じぐらい敬意を表す動物園なのです。

【一度、閉園にまで追い込まれた動物園】

かつて「到津遊園」という名称時代がありました。
西日本鉄道が運営していたのですが、1998年、赤字により閉園しました。

しかし、北九州市民の4分の1にあたる26万人の署名により、北九州市が引き取る形で存続することになりました。
それが、現在の「到津の森公園」です。

この動物園の園長は、岩野俊郎さん(63歳)。
到津遊園の最後の園長であり、現在の到津の森公園の園長でもあります。

岩野さんは獣医になるべく日本獣医畜産大学に入学。
卒業後は、実家に近かった到津遊園で飼育の手伝いを始め、そのまま就職しました。

岩野さんは、動物園の仕事が終わると、開業獣医のところで勉強したり、九州歯科大学で人の臨床の手伝いをすることで、獣医としての腕を磨きました。

到津はレッターパンダなど、日本で始めて繁殖に成功した動物が複数あります。
そして、岩野さんが「一番面白い動物」というゾウを初めてミルクで飼育したのも到津でした。

しかし、時代と共に入園者数が減っていき、2000年5月31日、閉園となりました。
その後、存続運動が巻き起こり、市が引き取ることになりました。

時代的に箱物(動物園)を市が引き取るのは難しい時代。
当時の市長・末吉興一さんは奇策を打ち立てました。
動物園を公園の一部にすることにしたのです。
到津遊園の周辺が、県営公園だという事に気づきました。
動物園に国の支援はありませんが、公園ならば公園整備の名目で半額の補助が受けられるのです。

更に運営コストを安くするため、展示する動物は、飼育費用の高いものを中心に半分に減らしました。
また、入園料の収入だけでは足りないので、「動物サポーター」として、エサ代や公園管理費の寄付を募る制度を設けました。

【日本一美しい動物園を目指して】

2002年4月13日に再出発。
初年度は黒字になりました。

これを維持する為、岩野さんは、到津の森公園を単なる「動物の展示場」ではなく、「何度も来たくなる動物園」・「大人も子どもも楽しめる、動物が見られる市民の憩いの場」として再生を考えました。

それを実現するため、子供たちが小動物と触れ合える「ふれあい動物園」、園内でビールも飲める「夜の動物園」などを実施しました。

そして、その考えの先にたどり着いたのが「日本一美しい動物園」です。
周囲の森林だけではなく、園内にも四季折々の植物を植樹しました。
3月は黄色いミモザ、4月はサクラ等が見られます。

熱帯の動物の周囲には、熱帯らしい湿度を感じさせる植物を植えました。
獣舎の底にはコンクリートではなく、土や落ち葉を敷き詰めました。

動物園で飼育しているのではなく、自然の中に動物がいると錯覚するように作り込んでいったのです。

岩野さんは閉園前、動物園というものはこういうものと、自分で線引きをしていたと振り返ります。
しかし、動物園に求められる役割は、時代とともに変化していると気づくことが出来たのです。

今年4月でリニューアル10周年。
岩野さんには「国立動物園構想」があります。
親友・旭山動物園の小菅園長と練り上げたものです。
その目的の一つは、「種の保存」です。
海外には、殆どのところで国立動物園があります。
しかし日本にはありません。
野生動物の種の保存には国際協力が必要。
その窓口となる動物園を作り、野生動物の生態調査のプロである研究者と、飼育のプロである動物園がタッグを組む。
動物園を地球の未来を考える究極の教育観点にするための最終型なのです。

※※※

一度は閉園に追い込まれた動物園が復活を遂げられたのは、地元の人達の署名活動でした。
たった2か月で16万9000人、5か月後には北九州市民の4分の1である26万3957名の署名が集まりました。

これだけの署名が集められたのは、この動物園が各市民にとって思い出の場所だからです。

ここは日本初の自然教室「林間学園」が行われています。
夏休みの5日間、子供たちは森の中の動物園に通い、動物について学び、動物の絵を描き歌う。
今年の夏で、73回目だそうです。
参加者は累計7万人以上。
この動物園が歴史と文化を持った動物園と言われる理由です。

幼い頃の思い出が、署名という形で具現化したのですね。
人の心に刻まれたものは、大きな力を持つんだなあ。

Posted by kanzaki at 2012年03月09日 23:39