2012年03月15日

1秒の重みが変わっている

ichibyou01.JPG

NIKKEIプラス1にて、「1秒の重みが変わっている」事が解説されていました。

「閏秒(うるうびょう)」をご存知ですか?
「原子時(TAI)」と、地球の自転に基づく時刻系「世界時(UT1)」の誤差を調整するために、追加や削除される1秒のことです。

いつ、その1秒を入れるか規則性が無いので、コンピュータなどは手作業で修正しなければなりません。
当然、コストもかかりますし、トラブルの原因にもなります。
昨年の国際会議でも廃止が議論されましたが、先送りとなりました。

現在、東京証券取引所の取引システムは、1秒よりも短い時間で取り引きが出来るようになりました。
コンピュータを使って高速自動売買をする海外機関投資家のニーズに対応した為です。

昔の個人投資家は、証券会社に電話して注文するのが当たり前でした。
現在では、海外機関投資家ほどではないものの、やはり売買の際には1秒の違いは大きいそうです。

大学の就職活動では、会社説明会の申込みをネットで受け付ける企業が増えました。
人気のある会社ですと、受け付け開始ちょうどにアクセスしても、1秒遅れで繋がらないこともあります。
先着順の場合、これもまた本人にとって命取りとなります。

マラソン・ジョギングブームの昨今。
市民マラソン大会を申し込むのにも、やはりネットでする場合が多いです。
有名な大会ですと、一気にアクセスされ、申し込むのも大変です。

正確な時刻を一番身近で感じるのが「電波時計」です。
国産時計の販売の8割は、既に電波時計だそうです。

パソコンやデジタル家電も、時刻を正確に合わせる仕組みを導入しています。
原子時計内蔵の全地球測位システム(GPS)衛星から受信した電波や、原子時計から直接送られる情報を基に、時刻情報サーバーの時刻を正確に合わせます。
それをネットなどを通じて末端ユーザーのパソコンや家電の時刻を調整します。

この「正確な時刻」を証明するビジネスもあります!

有名なのは、タイムレコーダーや駐車場管理システムなどを手がけるアマノ。

●アマノ株式会社|公式ホームページ
http://www.amano.co.jp/

そして、セイコープレシジョンなどが手供する「時刻認証サービス」。

●SEIKO Cyber Time 時刻認証サービス|サイバータイムソリューション|【セイコープレシジョン】
http://www.seiko-p.co.jp/systems/solution/cyber_time/time_regi.html

「時刻認証サービス」とは、その電子書類がいつ作成されたものなのかを証明する為、郵便局の消印のような日付入りの電子スタンプを押印するサービスです。
これにより、改ざん等を防ぎます。

・【解説】時刻認証サービス - 製品&サービス・レビュー<SIサービス>:ITpro Active
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/REVIEW/20070918/282266/

電子入札、ネットを使った証券取引などが普及しています。
法的な紛争に備え、取引履歴、電子文書の作成時刻を秒単位で正確に証明するシーンが増えてきているそうです。

このように、1秒が以前よりも貴重になっており、時刻自体も正確さをより求められています。

※※※

コンピュータが仕事に取り入れられるようになり、情報の早さ、正確さが向上したのは間違いありません。
しかし、決して楽チンにはなっていません。
むしろ、情報の精度を高めるため、コンピュータを操作する我々人間自身も、機械のような早さ、正確さを求められるようになりました。
操作する人間は、ストレスがたまる一方です。

1秒の重みを変えた原因は、間違いなくコンピュータとインターネットです。
良い面がたくさんある反面、「なんでこんなにクオリティを追い求めなければいけないの?」と疑問を感じます。

スポーツの世界を見渡してみると、一般人から見れば、どの選手も凄いレベルです。
そんな凄い選手同士が争い、1秒差の記録・・・それどころか、コンマ何秒の世界で勝敗が決まってしまうこともあります。
まばたきを一回する程度の時間で、世界へ羽ばたくか、地面にひれ伏し泣き崩れるかが決まる。
観ている我々は感動を覚える反面、「なんでこんなにクオリティを追い求めなければいけないの?」と疑問を感じることもあります。

そもそも人間って、1秒単位まで考えなくては、本当に生きていけないものなのでしょうかね。
昔は、太陽の上り降りで、大雑把な「時間らしきもの」を認識していたはず。

仕事やお金儲け、スポーツの世界は秒単位にまで侵食しているけれど、「寿命」は今でも年単位ですよね。
生きた時間を秒単位まで把握している人はいません。

年々伸びている平均寿命。
もし、この世から「癌」が無くなると、平均寿命は2年延びるそうです。
もし、この世から「心臓病」が無くなると、平均寿命は3〜4年延びるそうです。
つまり、この2つの難病を解決しても、僅か6年しか寿命が延びません。
医療技術が進歩しても、我々が生きている間に使える時間は、そんなに変わりません。

いくら最新テクノロジーを大量導入したところで、ほんの少しだけ時間を延ばすのが限界。
多くの分野で、既に限界が見えてきているのではないでしょうか。

自分たちが使える時間をほんの少し広げる事に努力するよりも、与えられた限りある時間をどのように使うかに注目する方が有意義だと思います。

なんだかもう、変なこだわり等、いろんな物を手放していく時代なのかもしれません。
その代わり、人と人との繋がりを再認識する時代。
1秒の重みより、1人の心の重みを重要視していくべきではないのかなあ。
抽象的な事を言っているように思うでしょうが、「抽象的」という不正確さこそが大切なのではないでしょうかね。

Posted by kanzaki at 2012年03月15日 21:45