2012年03月30日

マラソンシューズ職人・三村仁司(みむらひとし)さん〜五輪マラソンのもう一つの戦い

【"マラソンシューズ職人"という匠】

日経に、マラソンシューズ職人・三村仁司(みむらひとし)さん(63歳)のインタビューが掲載されていました。

●三村仁司 OFFICIAL WEB SITE
http://mimurahitoshi.jp/

●adizero TAKUMI 現代の名工 三村仁司
http://adidas.jp/running/takumi/

・三村仁司 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9D%91%E4%BB%81%E5%8F%B8


今回、オリンピック選考会にて、木崎良子さん(ダイハツ)が代表の座を獲得しました。
木崎さんのシューズを作っているのが、三村さんです。

過去、高橋尚子さん、野口みずきさんらの金メダル獲得をアシストしてきた名工・三村さん。
今年のオリンピックは、三村さんが携わって9度目になります。
しかも、新天地からの挑戦です。

2009年(北京オリンピックの翌年)、三村さんは42年間勤めたアシックスを退職しました。
その後、地元兵庫で工房「M.Lab(ミムラボ)」を立ち上げました。

【匠が産み出した新兵器】

2年前からアディダスと契約を結び、今年1月、オリンピック向けの新シューズ「adizero TAKUMI」の「sen」「ren」を発表しました。

●adizero Takumi Sen【尾崎好美選手・木崎良子選手着用カラー】15,750円
http://shop.adidas.jp/pc/item/detail.cgi?brand_code=110&itemCd=110_V21037&itemGrcd=110_TD872&itemDir1=12SS
adidastakumisen01.jpg
「戦(セン)」
戦いに打ち勝つための足元、気持ちを支えるレーシングシューズ。
記録更新を狙うランナーのためにつくられたadizero TAKUMIは、名工、三村仁司氏と共同開発した究極のレーシングシューズ。
新開発Mim-Lightメッシュを採用した軽量170g。


●adizero Takumi Ren ワイド幅モデル 13,650円
http://shop.adidas.jp/pc/item/detail.cgi?brand_code=110&itemCd=110_V20213
adidastakumiren02.jpg
「練(レン)」
戦いに打ち勝つための自分自身の鍛練のためのシューズ。
次世代アディゼロの登場。シューズの匠、三村仁氏との共同開発による、アディゼロの最高傑作、軽量トレーニングモデル。
アディゼロで定評の踵の安定、ホールド性をさらに高めつつ、前足部への重心移動をより素早く、且つDSP+コンチネンタルラバーで力強い蹴りだしを可能にした。
知識と技を結集したエリートランナー向けadizeroトレーニングモデル。

靴作りに携わって40年以上の三村さん。
他社製品は見たことが無いそうです。

「他を見ると似たものになる。斬新なものを作るには、ゼロから始めないと」

今回のシューズ制作では、足の甲を覆う部分のメッシュ素材を15回も替えています。
耐久性と通気性、軽さという反比例する要素をギリギリまで突き詰めた為です。

「自分が作ったシューズだからと選手が信じて履いてくれる以上、一番いいものを作らないといけない」

【大会直前までフルサポート】

バルセロナオリンピックの時、有森裕子さんから足の痛みを打ち明けられました。
レース4日前の事です。
突貫工事で靴底や中敷きの素材・厚みを変更しました。
結果、銀メダルを獲得出来ました。

三村さんが足を見れば、欠点や故障の理由がすぐ分かるそうです。
今回、代表に選ばれた木崎さんも、全幅の信頼を寄せています。

三村さんの作った「最終兵器」が選手の元へ届くのは本番一週間前です。
その時の調子、路面状態、気象条件も加味して3〜4足用意されます。
選考会を含めると、一人の選手に10足以上を提供します。
そして、有森さんの時のように、本番直前のアクシデントにも備えます。

「精神的に100%落ち着いた状態で走りだして欲しい。その為にやれることは何でもする」

オリンピックは実際に走る選手だけではなく、シューズ職人たち技術者にとっても晴れの舞台なのです。

※※※

どこの世界にも名職人はいるものですが、シューズの世界にも有名な方がいるのですね。
手のひらに乗るシューズの中には、大きな宇宙が存在しており、三村さんはその創造主なのです。
40年以上、一つの事にとことん拘る姿勢が素敵ですよね。

けれど、三村さんのような生き方を知り、自分との生き方の差に落ち込む必要はないんですからね。

三村さんは、他の製品と自分の生み出したものを比べることなんてしていません。
ゼロからスタートし、ひたすら考えぬいた結果、素晴らしいものが出来上がったのです。

だれが言ったかわかりませんが、
「自分と他人を比べるな。昨日の自分と比べろ」
という言葉を思い出しました。

そして、三村さんの生き方から学べる事は、こんな事だと思います。

「一生懸命だと知恵が出る。中途半端だと愚痴が出る。いい加減だと言い訳が出る」

Posted by kanzaki at 2012年03月30日 23:34