2013年07月22日

「新型うつ病」が日本全体をおおいつくす

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職場でもよく「新型うつ病」という言葉を耳にするようになりました。


●若手社員の「新型うつ」は単なるうつ病ではない!パニック障害の権威が職場の偏見と治療の誤解に警鐘
http://diamond.jp/articles/-/24459


うつ病は、原因もなくいつ何時でも深い憂鬱感が湧いてきますが、「非定型うつ病」の特徴は、本人にとって都合の悪いことに対面すると気分が沈み込んだ状態が続くものの、よいことや楽しい出来事があると、それまでの不調がウソのようにたちまち元気になるということ。

しかし長続きはせず、またガクンと憂鬱な気分に戻る。
こうした気分の浮き沈みが繰り返されます。

また、以前より食欲があってよく眠れるなど、普通のうつ病と違う症状も出ます。
こうした状況を周囲が見て、「あいつはうつ病みたいだけど、よく見ると元気なときのほうが多いな。本当は仮病じゃないか」といった誤解を招き、患者に対する偏見に結びついていくのでしょう。


日経に、「新型うつ病」に関する書籍の抜粋が掲載されていました。



●「職場結合性うつ病」著・加藤敏

・Amazon.co.jp: 職場結合性うつ病: 加藤 敏: 本
http://amazon.jp/dp/4307150686/

・昨今のうつ病は、仕事の過重による心身の疲労に関連していると考えられる。

・職場では、労働時間の延長、ゆとりが減少している。

・とりわけ重要なのは、相手を無条件に思いやるフィリア(「われわれ」という感情)の喪失である。

・フィリア - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2



●「生活習慣病としてのうつ病」著・井原裕

・Amazon.co.jp: 生活習慣病としてのうつ病: 井原 裕: 本
http://amazon.jp/dp/4335651570/

・冒頭から、過激な薬物治療批判で始まっている。

・抗うつ薬の効果はプラセボ(偽薬)とほとんど変わらない。

・イギリスの報道を例に挙げ、日本の精神医療における「薬物療法依存」を厳しく批判している。

・うつ病の多くが、生活習慣病としての側面を持つことを強調。

・十分な睡眠の確保や断酒、運動の習慣や対人交流といった生活習慣指導を推奨している。

・つまり、「薬に頼らない治療」を積極的に主張している。



●「クレイジー・ライク・アメリカ」著・イーサン・ウォッターズ

・Amazon.co.jp: クレイジー・ライク・アメリカ: 心の病はいかに輸出されたか: イーサン ウォッターズ, Ethan Watters, 阿部 宏美: 本
http://amazon.jp/dp/4314011033/

・アメリカで生み出された精神疾患の概念が、グローバル化の波に乗って全世界に深刻な影響を撒き散らす経緯が描かれている。

・日本のうつ病市場が、どのようにメガマーケット化していったか詳しく検証されている。

・巨大化した歴史的要因は、電通社員の過労自殺裁判、製薬会社が主導した「うつは心の風邪」キャンペーン(データの捏造あり)、阪神大震災と自殺の急増。

・日本人本来の「悲しみ」を肯定的に捉える文化的風土は破壊された。

・憂鬱や無気力は薬によってコントロールが可能という思想がばらまかれた。


※※※


冒頭で紹介した記事によりますと、「新型うつ病」の根底にあるのは「拒絶過敏性」です。
ささいな挫折(or相手からの注意)の経験で拒絶過敏症になり、軽傷のPTSD(外傷後ストレス障害)に似た症状に陥る可能性が高いのです。


最近の若い人の間では、ささいなことで深刻なトラウマを抱える人が増えています。
本人にとってはプライドを傷つけられることが、自分の社会的生命を傷つけられることになるのです。


このような状態になると、前頭葉の機能がどんどん落ちていきます。
記憶力や仕事の能力が落ちていき、悪くすると人格まで変容し、性格が子どもに戻って幼稚化していくことさえあります。



今の時代は、地方の中小企業でさえも仕事をする際、高機能な機械やコンピューターを使うことができます。
それによって、仕事が楽ちんになるかと言えば、そうではない。
むしろ、求められる結果が高度になり、しかもコンプライアンスから、多くのルールの上で業務をこなさなければいけません。


誰しもイメージしやすいのは、コンビニの仕事でしょうか。
昔、私がバイトしていた頃は、陳列されている商品だけを売っていれば良かったです。
せいぜい頭を悩ますのは、たくさんあるタバコの銘柄とパッケージを覚えることぐらいです。


それが今ではどうでしょう。
各種支払、ATM、映画やコンサートのチケット販売、アマゾン等のオンラインショップの支払いと商品受取り、デジタル複合機の操作、多彩なフライヤー商品(からあげクン等)の調理、電子マネー決済・・・最近じゃ、セブン-イレブンのセブンカフェのようなコーヒー販売までやり始めました。
あまりにも多くの業務により、バイトをする側も大変です。


仕事が複雑化する一方ですが、それを対応する人間は機械じゃありません。
最初から完璧にできるものじゃないし、ベテランでも、突然のアクシデントに対応できるわけじゃない。
それなのに、最初に簡単な研修だけやって、すぐに実践です。


素人であろうが、お客はそんなことお構いなし。
多種のサービスを求めてきます。
あっぷあっぷな感じで日々の業務をこなすのは、非常にしんどいです。


「新型うつ病」は、サービス過剰、ルール過剰の社会に原因があるんじゃないかなあ。
自分たちで作ったルールによって、自分たちの首をしめています。
自分のことで手一杯で、後輩や同僚の仕事を手伝う余裕がありません。
そんな感じが、どこの業界、企業でも見られるのです。


誰ひとり、この状態を破壊できず、この国は疲労感、悲壮感で埋め尽くされていくような気がします。

Posted by kanzaki at 2013年07月22日 23:10