2013年11月20日

徒然草〜吉田兼好は暇だから書いたのではなく、書く事が好きで好きでたまらないから書いたのです

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この前、徒然草について書きました。


●「徒然草」は、人生の不完全燃焼を戒めるエッセイ集
http://kanzaki.sub.jp/archives/003010.html


現在、BSにて「ちりとてちん」の再放送がオンエアされています。


●連続テレビ小説「ちりとてちん」(BSプレミアム 月曜〜土曜 7:15〜7:30)
http://www.nhk.or.jp/drama/chiritotechin/


上方落語を舞台にした朝ドラです。
2007年の作品ですが、いまだに私のようなファンがたくさんいる作品です。
過去の作品なのに公式サイトが残っており、今回の再放送にあわせて更新されています。
しかも、スマホ画面対応にまでなっていました。
先週・今週のお話しは、散り散りになっていた落語家・徒然亭一門が再集結する話しでして、非常に盛り上がっています。



徒然亭一門から離れていた一番弟子である草原(そうげん)。
この草原という男は、高校を出てから18年間も落語をやってきて、落語に対する知識や思いは人一倍です。
けれど、上がり症で肝心なところで噛んでしまうため、全く客の笑いが取れませんでした。
とある事件をきっかけに、落語の世界から足を洗い、妻と息子のためにディスカウントショップで働いていました。
しかし、仕事はうまくいっておらず、笑顔が無い日々です。


草原の家へ、主人公・和田喜代美が訪ねます。
前回、二番弟子・草々と共にやってきて、徒然亭に戻ってきてくださいと頼んだのですが、断られています。
理由は、18年間もやって芽が出ず、自分は落語家に向いていないと考えていたからです。
(でも本当は、今でも落語に対して熱いものを隠し持っています)


草原
「どないしたんですか?」

喜代美
「あの私、どうしても気になって」

草原
「何がですか?」

喜代美
「向いていたいう事やないでしょうか」

草原
「えっ?」

喜代美
「18年、続けなったんですよね。落語」

草原
「ええ」

喜代美
「古典の時間に『徒然草』て習いませんでしたか?」

草原
「吉田兼好(けんこう)のですか?」

喜代美
「そう それです!

つれづれなるままに ひぐらし 硯(すずり)に向かひて 心に うつりゆく よしなしごとを そこはかとなく 書きつくれば あやしうこそ ものぐるほしけれ

不思議やなあ 思とったんです。
する事がなくて退屈なのに任せて一日中、机に向かっていたらって・・・。
退屈やからて一日中、机に向かえますか? 普通」


草原、首を横に振る。


喜代美
「そうでしょう!?
それはもう好きやいうことなんです。
吉田兼好は暇やから書いたんやなくて、書く事が好きで好きでたまらんから書いたんです。
草原さんかて、そうでしょう?」


草原、無言で喜代美を見ている。


喜代美
「羨ましいです。
高校生で『これや!』いうもん見つけられたやなんて・・・。
それに引き換え、私は・・・私は・・・(泣きそうになる)」


草原の奥さんがやってきて、「大丈夫?」と聞く。


喜代美
「すいません」

草原
「俺は・・・選んだんや。
3年前のあの時、お客より嫁はんと子供の笑う顔を・・・」

草原の妻
「けど、私と楓汰(息子)はこの3年、マー君(本名・まさお)の疲れた顔しか見てないよ。
毎月、きっちりお給料もろてきてくれて助かってる。
けど・・・やっぱり私・・・マー君の笑う顔見て暮らしたい。
助けてあげ。
草々君(二番弟子)の事・・・。
それが一番、マー君に向いている。
マー君らしい生き方や思うんよ」

草原
「緑・・・」


※※※


徒然草は、名人の心得を扱ったくだりが多いエッセイ集です。


どう生きたところで人の一生は短い。
ひとつのことで頭角を現そうと思うなら、それ以外のことをすべて打ち捨てて取り組まなければならないと説いています。


やり遂げるためには、集中力が必要です。
けれど、好きでもないものを長いことなんて出来ません。
不平を言いつつも、なんだかんだやり続けているのは、どこかでやはり好きな部分があるからだと思います。


「人間諦めが肝心」と言いますが、大抵は長く続けていたほうが満足度は高いと思っています。
過去を思い出してみてください。
長くやった事の方が、思い出す出来事も多いですし、自信を持って言える事も多いと思います。


短い人生です。
長くやれることなんて、数少ないです。


ずっと続けていた事をある日を境にやめてしまった事があると思います。
もし今、その続けていた事よりも長く続けているものが無かったら、もう一度やってみませんか?
自分が逢いたかった自分に再会できると思います。


激しく水しぶきのあがる川の急流。
それが、岩にバーンとぶち上がって割れ砕ける。
けれど、分かれた水が下流で合体する。


そんな自然の情景のように、本意でないお別れをするけれど、いずれ必ず逢いたい。
それは、恋話しだけではなく、人の夢も同じではないでしょうかね。

Posted by kanzaki at 2013年11月20日 23:12