2013年11月24日

スタジオジブリ作品「かぐや姫の物語(高畑勲監督)」の感想(ネタバレ注意)


●かぐや姫の物語 公式サイト
http://kaguyahime-monogatari.jp/


スタジオジブリ作品「かぐや姫の物語(高畑勲監督)」が公開されました。


最近は仕事で帰宅が遅いため、休日に何もやる気力が起きず、半分うつ状態です。
けれどこの映画はなぜだか観たくなり、公開初日に行ってきました。
夜8時からのレイトショーだったのですが、客席は半分ぐらい埋まっていました。
夜だったので、さすがに子供は少なかったです。


以下、ネタバレもあります。



【原作と同じストーリー】


上映時間が137分と長いので、観終わった時には体が疲れました。
まわりの観客も似たような感じでした。
あの絵柄と主題歌は癒やされる感じなので、作品も90分ぐらいだったら良かったのになあと思いました。


印象は、「まんが日本昔ばなし」のデラックス版でした。
みんなが記憶しているあらすじと同じ。
光り輝く竹(劇中はタケノコ)から生まれて成長し、いろんな男から求婚されるも、最後は月へ帰ります。
ストーリーを改編すること無く、それを2時間以上もかけた長編にするのですから、ある意味凄いです。


映画のキャッチコピーが「姫の犯した罪と罰」なんて書いてあるし、てっきり映画後半は、ストーリーを大幅改変しているのではと期待していました。
この「罪と罰」というのは、地球での生活の中で犯した出来事なのかと考えていました。
それをミステリー仕立てに語っていくものかと。


劇中のかぐや姫は、物凄い身体能力なので、「もののけ姫」みたいに月の民を肉弾戦でやっつけて追い返してしまうのが「罪」なのかなあとも期待していました。


実際の「罪と罰」は、地球に降り立つ前、月で暮らしていた時の話しだったのですね。
けれど劇中、ラスト辺りでさらっと語られただけなので、あまり記憶に残っていません。
物凄く気になり、ネットのネタバレサイトを見ました。


月は、悩みも老いもない無色透明。
地球は、四季色々、喜怒哀楽や死のある汚れた場所。
かぐや姫は地球の話しを知りたく、地球から戻ってきた女性の記憶を呼び起こし、苦しめてしまいました。
これが罪。
その罰として、かぐや姫は地球に送られるのが罰。
けれどお姫様だから、豪勢な着物や金品を仕送りしたりして監視。
さらに、本人が地球が汚れた場所だと認めれば罪は償われ、月へ帰ることになります。
パンフレットに詳しくその辺りが書かれているそうなのですが、正直、本編の最初に語って欲しいと思いました。



【夢オチ】


劇中2回、夢オチがあります。
あれって実は夢ではなく、実際に起こったバッドエンドで、それを月の監視人が歴史修正して、時間を戻したのかな?


1回は予告で使われている全力疾走の部分。
走り続け、最初に生まれ育った場所まで行くけれど、捨丸(かぐや姫の幼馴染)たちはいなくて、雪の上で倒れて死亡(?)するシーン。
「かぐや姫」という名前が決まり、その盛大なお祝いで、酔った男たちがかぐや姫の顔を見たいと言い出し、怒りに任せて全力疾走します。
けれど、全力疾走するほどの理由にはならないと思うのですが・・・。


2回目は、月へ還る少し前、捨丸との再会。
捨丸がかぐや姫と、誰も知らない場所へ逃げようと言い、何故か二人して空を飛びます。
このシーンを観て、「おい、捨丸。お前、奥さんと幼い子供がいるのに不倫かよ!」と、軽く引きました。



【たまに、漫☆画太郎っぽい絵】


この映画の見どころはやはり、水彩画のような丁寧な絵柄が、アニメとして動くところです。
ハリウッドのCGバリバリな絵よりも好きだし、日本人じゃないと出来ないと思いました。
日本が昔から持っている良さ、美しさを引き出していて素晴らしいです。


けれどたまに、「珍遊記」の漫☆画太郎(まん がたろう)先生や、「聖☆おにいさん」の中村光先生の絵柄に見えてしまうことがあります。
特に、お爺さんの表情は、漫☆画太郎先生そのものです。


月の人たちが雲に乗って、大勢でかぐや姫を迎えに来るシーンはインパクトがありました。
悩みも老いもない無色透明な月の住人達をうまく具現化していました。
奏でる音楽も、全く日本風ではありません。
なんというか、中国風ディズニー・エレクトリカルパレードって感じ。
あくまで穏やかなのですが、それ故に不気味というか恐怖を感じました。



【声優陣がいい】


本業の声優を使わず、女優・俳優を使うのは、ジブリでお馴染み。
今回、芸達者な人達ばかりで、セリフ回しにあまり違和感がありませんでした。
きっちりハマっています。
夏に観た「風立ちぬ」よりいい。
しかし芸達者故に、その女優・俳優の顔が、すぐに思い浮かんでしまいますが・・・。


かぐや姫の声を担当した「朝倉あき」さんが特に印象的でした。
決して、イマドキの声優声・演技ではありませんが、喜怒哀楽をきちんと表現していました。
声のイメージとしては、「風の谷のナウシカ」のナウシカを担当した、島本須美さんに似た感じでした。


●東宝芸能 オフィシャルサイト 女性俳優 :: プロフィール :: 朝倉 あき
http://www.toho-ent.co.jp/actress/show_profile.php?id=5288


それと、橋爪 功さん、伊集院光さんは、劇中の顔もそっくりで笑いました。



「竹取物語」は日本最古の物語だそうです。
けれど、普遍的なあらすじですよね。
しかも、月と地球の間の物語ですから、ある意味、SF小説でもあります。
私は、月と地球の話しというと、「∀ガンダム」を思い浮かべますが(ある意味、これも竹取物語)。


都会に憧れた女の子が上京し、現実の生活の中で、夢とのギャップに疲弊し、やがて故郷に帰る。
現実でもよくある事ですが、それを大昔の人が書いたなんて凄いですよね。


かぐや姫自身はハイスペックだし、置かれた環境だって最高なのに、幸せではありませんでした。
上京してからは、殆んど笑顔がありませんものね。
後悔とか悲しみばかり。
ストーリーを改変して、地球での生活が幸せそのもので描かれても良かったのではとも思いました。

Posted by kanzaki at 2013年11月24日 19:12