インドネシアの子供たちの間で人気の特撮ヒーローがいます。
その名は、「ビマ・サトリア・ガルーダ(Bima Satria Garuda:ガルーダの戦士ビマ)」。
このヒーローは、日本の商社「伊藤忠商事」が、現地テレビ局と手を組んで作った初の海外合作キャラクターなのです。
毎週日曜日・午前8時半から放送しています。
(日本では仮面ライダーが、日曜日・午前8時から放送ですが、やはりこの時間帯と特撮ヒーローは相性が良いのでしょうかね)。
(第2シーズン ビマXのティザー広告)
(日本で放送しても違和感の無い映像ですね)
戦闘シーンのアクションは、日本のアクション監督が演出。
撮影ロケはインドネシアで行い、キャストやスタントマンなどは全て現地俳優です。
エンディングテーマは、日本人アーティストのflumpoolを起用。
ミュージシャンのGACKTさんも特別出演し、その回は第1シーズンの最高視聴率を記録しました。
ちなみにヒロインは、ステラ・コルネリアさん。
AKB48グループであるJKT48のメンバーです。
(DIMEより)
※
【「ビマ」はインドネシアの子供たちの憧れ】
子供向け特撮番組といえば、日本のお家芸。
それを一昨年、伊藤忠商事と現地テレビ局「MNC(メディア・ヌサンタラ。チトラ)」で制作しました。
放送直後から高視聴率。
現在放送中の第2シーズンは、8週連続トップを獲得しています。
今や、インドネシアで「ビマ」を知らない子はいません。
イベントは子供たちで大盛況。
フィギィアやグッズなどの関連商品も人気。
玩具店には、ビマのコーナーが大きな一角を占めています。
ちなみに人気商品は、価格の安いお面だそうです。
インドネシアには、コンテンツビジネスという考えがありませんでした。
伊藤忠商事は社員をMNCへ出向させ、広告収入以外のコンテンツ産業という新しいビジネスモデルを説明し、理解してもらいました。
※
【大ヒットの理由は日本式「夢と正義」】
制作は、伊藤忠商事の関連会社となっている石森プロが、キャラクターのデザインやストーリーを担当しました。
様々な特撮番組で培ったノウハウを現地スタッフに伝授しています。
●石森プロ|Official Website
http://www.ishimoripro.com/
(漫画家・石ノ森章太郎の作品のライセンス管理を業としている。
石ノ森章太郎先生は言わずと知れた、仮面ライダーシリーズを始めとする特撮作品の原作者。
1994年頃、インドネシアにて「仮面ライダーブラック」を放送し、人気だったそうです)
登場人物は、現地の俳優を起用するなど、「現地化」を徹底しています。
日本的なヒーローでありながらインドネシア産なのです。
この企画を立ち上げたのは、伊藤忠商事の荒井裕史さん。
伊藤忠商事住生活・情報カンパニー 情報・保険・物流部門プロジェクトマネージャーです。
荒井裕史
「目指したのは日本的なキャラクターが活躍する番組」
バイク修理工場に勤める主人公が、インドネシアの国章にも使われている神鳥「ガルーダ」をモチーフにしたヒーローに変身して邪悪な組織と戦います。
日本の特撮はストーリーが複雑化していますが、こちらは昔の日本スタイルです。
※
制作のきっかけは、地元のテレビ局「MNC」からの相談でした。
「子供たちに正義や友情を教える良質な番組を作りたい」
現地、伊藤忠商事が請け負いました。
最近のインドネシアのテレビは、大人向けのドラマが大多数で、子供には見せられない過激な内容が多かったのです。
「ビマ」は冒頭に、「勉強しよう」「夢を持って生きよう」と子供たちに語りかけ、言葉遣いにも気を使っています。
伊藤忠商事・荒井裕史
「子供の人気はもちろんですが、親も安心して見せられる内容で、教育的な目線でいいメッセージを発信するドラマという評価をもらっています」
大手商社が自らキャラクターを作り、しかも海外で展開するのは、経験ゼロからの作業でした。
※
【「特撮って何?から始まった番組制作】
日本人のスタッフは、荒巻さん達が、日本でキャリアのある人材を口説き落としました。
スタート時の番組スタッフは150人体制。
日本人は監督、カメラマン、アクション監督の3名(第2シーズンは日本人スタッフ7名に増員)。
製作期間8ヶ月の海外赴任です。
制作面では、言葉だけではなく、文化の違いによるさまざまなトラブルがありました。
特撮番組を見たことがない現地スタッフ。
変身ポーズや敵を倒した時の決めポーズのかっこよさ等が分からないのです。
他にも、日本で当たり前の事を一から教えなくてはいけません。
SNSで自分をアピールするのが好きな国民性。
製作途中の情報も平気で発信してしまうことも。
また、決められた撮影時間を守らないのも当たり前。
毎日、新しい問題が噴出しました。
最初は我慢して、きめ細かく注文し、今はなんとか解消されました。
現地の責任者と日本人スタッフが現場に入って、きめ細かくやることで、うまく回転しました。
この作品を継続して文化として定着させたいのは、日本人スタッフだけではありません。
そのためにも、日本人スタッフだけではなく、現地スタッフの育成も重要でした。
最近は、現地の監督やスタッフも登用し、成果も出てきています。
この成功により、伊藤忠商事は、収益の柱としてライセンシー企業数の拡大や商品の拡充を目指しています。
アパレル、文具、雑貨、食品などで市場規模は50億円が目標です。
昨年、安倍首相がインドネシアを訪問した際、スピーチで「日本のヒーローが登場しました」と「ビマ」に触れました。
クールジャパンの輸出を進める国家の成功事例として紹介されるまでになったのです。
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