2015年02月16日

スポーツ科学ジャーナリスト デイヴィッド・エプスタイン(david epstein)-スポーツの世界の勝者は、遺伝で決まるのか? それとも育て方で決まるのか?〜1つのことを1万時間練習するより、12歳まで多くの体験を

davidepstein.JPG

スポーツ科学ジャーナリスト デイヴィッド・エプスタイン(david epstein)さん。
彼が書いた著書「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか」は、あのオバマ大統領も購入したそうです。


●Amazon.co.jp: スポーツ遺伝子は勝者を決めるか アスリートの科学 デイヴィッド エプスタイン, 福 典之, 川又 政治 本
http://www.amazon.co.jp/dp/415209477X



(デイヴィッド・エプスタイン アスリート達は本当により速く、強くなっているのだろうか? Talk Video TED.com)


アメリカでは、一般の人が遺伝子検査をするのがブームです。
日本でも、子育て雑誌などで、手軽な遺伝子検査が紹介されるようになりました。
遺伝子検査をすることで、子供が何に優れているかを早期に発見し、そこに特化して訓練すれば、将来は保障されていると思っているのでしょうか?


スポーツの世界でも、「生まれか育て方か?」という論争は昔からあります。
この事について、デイヴィッド・エプスタインさんは、解説しています。


結論は、1つのことを1万時間練習するより、12歳まで多くの体験をと語っていますよ。

(雑誌PRESIDENTより)



・現在、ブームになっている遺伝子検査は、万能ではありません。
国の代表レベルのアスリートが、トレーニングの成果に影響する遺伝子を持っているかを検査するのは重要です。
同じ訓練をしても、伸びる人と、現状維持の人がいるからです。
個人の持っているポテンシャルを最大限に生かす事が出来ます。


・しかし、一般人向けの遺伝子検査はまだ未完成。
その殆どが、企業の情報収集か金儲けを目的にしています。


・あなたの子供に、特定の能力に秀でている遺伝子が見つかったとしましょう。
それは、能力を形成する遺伝子のほんの一部が見つかったにすぎないのです。


・日本では、子供が幼いうちに遺伝子検査を受けさせて、短距離に向いている遺伝子が見つかれば、それに特化して訓練させるのがベストだという間違った考えを持つ親がいます。


・現在活躍している一流選手でも、12歳くらいまでは様々なことを試していました。
例えば、プロテニス選手のロジャー・フェデラーの親は、彼が小さいころにバドミントン、バスケットボール、サッカーなどいろいろなスポーツを体験させ、テニスに絞ったのはずっと後でした。
NBAバスケットボール選手のスティーブ・ナッシュも、13歳までバスケットボールを触ったことはなく、12歳までそれ以外の様々なスポーツを楽しみました。
身長は高くありませんが、MVPを2回獲得した優秀な選手です。


・10歳の一流選手をつくる必要はないのです。
20歳で成功すればよいのです。
早期に子供の専門を絞りすぎて、才能を伸ばせず失敗した例が、アメリカで多く報告されています。


・子供の遺伝子が短距離に向いているからといって、短距離に特化する訓練はやめましょう。
スポーツだけではなく、音楽にもあてはまります。
いろいろな楽器をやることで、最終的に自分に合った楽器が見つかり、幼いころから練習していた人を軽く凌駕することは、よくあることです。


・子供の才能をつぶさない重要な点は、時間さえかければ一流になれるわけでもないという事です。
どの分野でも、1万時間訓練すればプロになれるという「1万時間神話」が、スポーツ世界にはあります。


・この1万時間という数字は、実は30人程度の音楽アカデミーのバイオリニストへの調査から導きだされたものだったのです。
しかも、調査対象は、既にトップレベルの人達です。
現実には個人差があります。
平均的な数字で誤った方向へ、親が子供を導くのは危険です。


・子供の成長は、長期的な視点で見なければなりません。
早期に訓練を受けた子供、特に女の子は、殆どが16歳になるまでにその分野から離れてしまっているというデータがあります。
一流は、早いうちから芽が出ると思ってはいけません。
これから広がる可能性のある道を親が狭めてはいけません。


・「暗黙的学習」というものがあります。
言語を学ぶ際、文法などの説明を受けて学んでいく「明示的学習」に対して、周囲の人が話す言葉などをシャワーのように浴びる中で習得する方法です。
周囲の人の言葉を聞いて育ち、習得して話しはじめます。
文法などの修正は、話せるようになったずっと後で構いません。


・「暗黙的学習」をスポーツに適用すると、子供に対して最初から絞ったことを教えるよりも、多様なスポーツに挑戦させ、専門的で技術的なことをあとから教えるのです。
先に技術を教えてしまうと、子供のポテンシャルを破壊しかねないのです。


・将来の一流を育てるには、幼い時の広い選択肢が必要なのです。
これまで信じてこられた天才の育て方とは反対なのです。


※※※


親が誤った方法で、子供の才能をつぶさない事は重要ですよね。
つい親が、自分のわがままを押し付けがちですから。


家族に限らず、会社の組織における人材育成にも、あてはまるように思います。

Posted by kanzaki at 2015年02月16日 21:11