2015年05月06日

「生誕100周年 トーベ・ヤンソン展〜ムーミンと生きる〜(新潟県立万代島美術館)」を観てきました。葛飾北斎などの浮世絵を感じさせます

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(ムーミンキャラの衣装を着て、このパネルの前で撮影ができます。奥の女性が、作者トーベ・ヤンソンです)


本日5月6日まで、新潟県立万代島美術館にて、トーベ・ヤンソン展が開催されていました。
代表作は、ご存知「ムーミン」です。


●生誕100周年 トーベ・ヤンソン展〜ムーミンと生きる〜
http://www.asahi.com/event/tove100/

●生誕100周年 トーベ・ヤンソン展 _ 新潟県立万代島美術館
http://banbi.pref.niigata.lg.jp/exhibition/tove/

トーベ・ヤンソン(1914-2001)は、世界中で愛され続ける「ムーミン」シリーズを生んだフィンランドの作家です。

15歳の頃、風刺雑誌の挿絵画家としてデビューしたトーベは、「ムーミン」の作家としてだけでなく、絵画、小説、マンガ、舞台美術など様々な分野で才能を発揮、「Work&Love」を信条に、86歳で没するまで精力的に創作活動を続けました。

本展では、フィンランドの国立アテネウム美術館で開催された回顧展(2014年3月〜9月)の日本巡回展として再構成されたものです。

トーベの代表作である「ムーミン」シリーズの挿絵原画のほか、生涯を通して挑戦し続けた油彩作品や、『不思議の国のアリス』をはじめとする文学作品の挿絵、そして家族や近しい人々が撮りためた写真資料など約400点以上の作品を出品。

また1964年から1991年まで彼女がほぼ毎年夏を過ごしたクルーヴ島の「夏の家」再現モデルを特別展示いたします。

北欧の風土に根差し、ムーミンを生み出しムーミンと共に生きたトーベ・ヤンソン。
その生活と創作の秘密に迫る展覧会です。


1000円と安い金額ながら、展示数がものすごく多いので、お得感が高いと思います。
グッズ販売も大盛況で、この展示会限定品の文庫カバー等もありました。



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(雑誌penより。こういった感じの絵柄です)


・刊行したムーミン関係の挿絵やマンガ等の原画が、多数展示されています。


・ムーミンのモノクロ挿絵の多くは、驚くほど小さかったです(10センチ四方も無い)。
表紙や、背景もある書き込みの多いものは、もう少し大きいです。
珍しいカラー原画もありました(優しい色調が多かったです)。


・よくマンガの原稿は、修正液で直しているものが多いのですが、ムーミンは意外とそういうものが少なく、一発描きが目立ちました。


・新聞に連載されていたものは、実際に掲載された原画と一緒に、現在でいうところの絵コンテも展示していました(新聞紙大ぐらいあった)。


・今ならばスクリーントーンで描くであろう点線が、よく目を凝らしても、ミス一つなく描かれており驚きました。


・ムーミンは、母方の祖父から聞いた、首元に息を吹きかけるムーミントロールというおばけが元。


・ムーミンの立体ものジオラマも展示されていました。
トーベ・ヤンソンの知り合いの医者が趣味で作ったものに影響を受けたとか。


・ムーミンだけではなく、トーベ・ヤンソンが描いた油絵なども多数展示していました。
後年1960年代になると、抽象画に傾倒していました。


・油絵は自画像も目立ちました。
独立心が見えると解説されていました。
最高傑作と呼ばれる自画像(抽象画)が展示後半にありました。
とても大きく・力強かったです。


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(雑誌penより。最高傑作と呼ばれる自画像は右下の絵)


・ムーミン以外に、「ホビットの冒険」「不思議の国のアリス」の挿絵も担当していました。
絵柄が、ファンタジー系と相性が良いのでしょうね。


・展示の中間地点に、撮影可能な場所があります。
「夏の家」と呼ばれるセットです。
1964年、静かな環境を求め、フィンランド湾の孤島クルーヴ島を借り受け、トゥーリッキ(生涯のパートナー)とともに、建築家だったトゥーリッキ弟夫妻が設計した小屋を、知人の力を借りて建てました。
1965年〜1991年まで、ほぼ毎夏をこの島で過ごしました。
各方向に窓が付けられた一部屋だけの質素な建物。
島の天候は時に厳しく、岸に上陸不可な時もありました。
しかし、二人は島での暮らしを愛しました。
現地での測量をもとに再現したものが展示されています。

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下記は、ホンモノの建物と、それが建っている場所。

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・憧れるムーミン作者トーベ・ヤンソンの島暮らし - NAVER まとめ
http://matome.naver.jp/odai/2140359998954344801


※※※


ムーミンの挿絵は、葛飾北斎などの浮世絵から影響を受けていると言われています。
(雑誌penより)


浮世絵は、19世紀、印象派の画家たちに影響を与えました。


葛飾北斎は目に見えないもの、とらえどころのない風や水、波などを描きました。
トーベ・ヤンソンも同じように、風など、人間の目には見えないものを似たような手法で描いています。


タッチそのもは、ヨーロッパの銅版画のエッチングですが、画面の構成などは浮世絵に強く影響を受けています。


特に、葛飾北斎の「読本」の挿絵に影響を受けています。
(読本=「南総里見八犬伝」など江戸後期に流行ったストーリー伝奇小説)


北斎は長編小説の挿絵を1000以上描きました。
それがヨーロッパに渡り、トーベの目に止まったと思われます。


江戸時代、妖怪などは、人間と親和する存在だと考えられていました。
あらゆるものに心が宿っている。
そうした日本人の感覚が、ムーミンとも共通しています。


日本人がムーミンを本国と同じぐらい愛しているのは、日本の自然感を作品の中に感じるからかもしれませんね。


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(たのしいムーミン一家の挿絵、北斎40代の挿絵「賀奈川沖本杢之図」)

Posted by kanzaki at 2015年05月06日 15:52