2017年03月26日

「ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜」の感想〜せっかく理系の話しで作り込める内容だったのに、なぜか文系の作風にしてしまって残念でした

●映画「ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜」オフィシャルサイト 神山健治監督初の劇場オリジナルアニメーション!
http://wwws.warnerbros.co.jp/hirunehime/



『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治監督作品なので、期待して観に行きました。
攻殻機動隊は、押井監督版より、神山監督のシリーズの方が大好きです。
私が行った映画館では、狭いスクリーンではあるものの、ほぼ満員でした。


以下、ネタバレを含みます。


・客層的には、深夜アニメを観ない感じの人ばかりでした。
予告が、「君の名は。」のような雰囲気だったので、そういう作風を期待していたのではないでしょうか?
残念がらこの映画は、まったく作風が違います。
東京オリンピックの年を舞台にした、自動車の自動運転の開発ストーリーが主軸です。
そこに家族の話しを織り交ぜたもの。
だから、ほとんどの人が、がっかりしたのではないでしょうか。
上映後、帰るお客は無言というか、疲れただけという空気でした。
日テレが携わったアニメ映画なので、1年後に「金曜ロードShow!」で放送されるのを1回観ればよいかな。


・主人公が眠ると、SFとファンタジーが入り混じったスチームパンク的な夢の世界へ突入します。
けれど、外国のスチームパンクというより、ドラえもんの映画版あたりで出てきそうな雰囲気の柔らかい感じ。
エヴァンゲリオンに出てきそうな使徒と、映画「パシフィック・リム」に出てきそうな巨大ロボットが戦います。
このロボットの戦闘シーンにものすごく時間を割いています。
予算もスタッフも総動員していそうな気合っぷり。
しかしこのロボット戦は、あまり意味がないというか、かえってこの作品の根幹部分を薄れさせてしまっているように思います。
ロボットに翼が生えて宇宙へ行ってしまった時には、ぽか〜んとしてしまいました。
それに、なんの意味があるのだろうかと。
ロボットアニメが好きな私でもそうなのですから、館内にいたお客は、もっと混乱していたでしょう。


・眠ったときの世界と、現実の世界が交互に展開します。
しかし、眠ったときの世界は、映像的には凄いとは思いますが、ほとんど意味がありません。
最後あたりになると、現実と眠ったあとの世界がごちゃまぜになり、観ている方は理解しずらいです。
そのくせ、意味不明なままで説明されずに終わってしまうから、よけいに????となります。
例えば、主人公の母親の死因や、なぜ主人公が現実の世界で、建物の高い場所から落下しそうになったのか等。
そもそも、なんで眠ると、こんな世界の夢を普通の女の子が観るのか?
タイトルにまでなっているのだから、ストーリーにちゃんと絡ませてほしかったです。


・眠ったあとの世界なんてやらずに、現実世界の話しだけで展開した方が良かったのではないでしょうか?
夢の世界観の表現に時間を割きすぎて、肝心な登場人物たちの考えがものすごく薄っぺらになっていました。
薄っぺらなだけではなく、技術者がたくさん出てくるのに、考えが基本的にアホなせいでイライラします。
ストーリーに関係のない巨大ロボット戦は不要。
せいぜい、ロボットに変形するサイドカーだけで十分だったように思います。
そのサイドカーも変形なんてせず、べたかもしれませんが、母親の思考とか記憶を内蔵させて、主人公たちの困難を助ける方が良かったです。
自動運転の技術とAIは、関連性も多いですしね。


・主人公の旅に同行する幼馴染の男の子は、たくさん劇中で行動しているのに、印象にまったく残らないモブキャラ。
主人公も含めて、どのキャラも薄い。
全員がモブキャラかも。
考えて、努力してピンチを乗り越えるという意志がまったく感じられません。


・最後、主人公が高いところから落下するのをみんなで助け、成功して拍手喝采のシーンは、どことなく「魔女の宅急便」のラストみたい。
この映画、いろんな作品の美味しい部分を高画質で組み合わせているのに、どうにも薄味なのが惜しい。
最後らへんになると、サイドカーが自分の意志で大活躍するのは、なんにも伏線ないですよね?
あれなら、主人公の母親の思考を組み込んだベタな設定のほうがすんなりいきます。


・車両のハードウエアの修理が得意な父親、AIに関連するプログラムなどソフトウエアの開発が得意な主人公へ設定変更。
二人の前に現れた意志を持ったサイドカーで旅をするベタな話しのほうが、ベタな展開かもしれないけれど、キャラがイキイキしたように思います。


・エンディング曲「デイ・ドリーム・ビリーバー」がとても良い雰囲気。
主人公の父親と母親が、自動車の自動運転開発を通じて、親しい仲になる映像はとても良かったです。
主人公の父親と母親を中心にした話しでも面白かったかも。
まだこの二人は劇中で、自分の考えがありましたから。


せっかく、理系な雰囲気で展開できる作品だったのに、なぜか文系な作風にしてしまったのが残念です。



映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』主題歌予告(デイ・ドリーム・ビリーバー)【HD】2017年3月18日公開

Posted by kanzaki at 2017年03月26日 20:04