●『シン・仮面ライダー』公式サイト
https://www.shin-kamen-rider.jp/
・監督:庵野秀明
・原作:石ノ森章太郎
・出演:池松壮亮、浜辺美波、柄本佑、森山未來
『シン・仮面ライダー』は庵野秀明脚本・監督による「仮面ライダーシリーズ」のリブート作品である。
仮面ライダー生誕50周年企画作品のひとつ。
キャッチコピーは「変わるモノ。変わらないモノ。そして、変えたくないモノ。」
現代を舞台に1971年に放送されたテレビシリーズ『仮面ライダー』、石ノ森章太郎の原作漫画『仮面ライダー』を参照しながら描かれる新たな物語となっている。
2023年製作/121分
『シン・仮面ライダー』予告
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【感想】
初週日曜、朝一番の上映にて鑑賞。
客席は9割がた埋まっていました。
昨年、予備知識として、原作の石ノ森章太郎先生が描いた漫画版を読んでおきました。
今回のストーリーは漫画版をベースに、1971年に放送開始した特撮版をブレンド。
そこに現代っぽいSF考証でアレンジしていました(あえて、昭和風味の空想特撮設定を残してあります)。
テレビや映画で活躍している俳優・タレントが、特撮コスプレして戦っている姿は、庵野秀明監督の実写映画「キューティーハニー」を思い出します。
映画館で観ましたが、なんだかんで好きな作品です。
「シン・ウルトラマン」より、こちらに近い感じかな。
本作同様、孤独な人物たちの寄り合いが描かれていますし。
シン・ウルトラマン同様、この1本ですべて完結させています。
テンポが良いので、あっという間に終わりました。
癖が無くて見易いなあと思いましたよ。
出演陣のセリフに抑揚や激高を持たせないことで、映画・ドラマ・アニメのような動画というより、活字的な雰囲気を醸し出しています。
庵野秀明テイストは、映像技術なんだけれど、活字で表現した文学(心の表現)と論文(SF考証)なんだと思う。
そして多分、制作陣は心が優しい人たちなんだと思う。
社会的な立場・振る舞いは別として、心に孤独な部分を抱え、それをどう処理すればいいのか悩みながら表現している感じ。
孤独な部分を抱えた者同士が、どうやって他人と付き合い、接していけばよいのか模索しながら生きている感じ。
WBCを観て世間の人たちのようにはしゃぐことが出来ないけれど、快晴の空の下、ゆっくり身近な場所を歩いて、小さな発見に喜びを見出す感じ。
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特撮ヒーローものって、怪人が暴れる現場にヒーローが駆けつけて戦うパターンが多いものです。
ところが本作は、街中の一般人が悪の組織に苦しめられるシーンがありません。
各怪人が住んでいる場所へ、ヒロインと仮面ライダーが訪ねに行って、少し会話して交渉決裂→戦闘の繰り返しです。
2時間の中で、全98話の初代仮面ライダーを表現するのですから、かなり削っていかないと収まりません。
だから、観ている方は知っているであろう「お約束事」は全部端折って、観せたい部分だけで構成していますね。
それゆえ、主人公が改造人間にされてしまった経緯は、立ち話で済ませてしまっています・・・。
この映画は基本、浜辺美波さん演じる緑川ルリ子が主役。
バディとして、池松壮亮さん演じる本郷猛/仮面ライダーが戦う感じ。
恋愛観抜きの男女バディものとしての良さがありましたよ。
緑川ルリ子は、「継承」という言葉をあらわす重要な人物です。
そして、彼女が2人の仮面ライダーへ、その継承を表すものとして「赤いマフラー」を託します。
緑川ルリ子は劇中、茶色の皮のコートを着ています。
Wikiを見ますと、特注の赤いエナメルのコートを用意してたのですが、クランクイン当日に変更したそうですね(赤いコート版の写真も存在します)。
赤いコートの方が、赤いマフラーを託す意味合い、常に仮面ライダー達が戦う時に身に着けている意味合いが強くなりそうなものですが、分かりやすすぎるのでやめたのかな?
浜辺美波さんが出ている作品をはじめて観たのですが、劇中で一番演技がちゃんとしてしていたというか、しっかりしていたように思います。
監督の観せたい「静のシーン」のほとんどは、彼女が演じている場面のように思います。
顔のアップが多いのですが、あれだけアップで撮られても奇麗に映るのですから、相当奇麗なんでしょうね。
エヴァンゲリオンの綾波レイ的な感じに、家族や友人を想う気持ちを加えたキャラクター設定をうまく演じていて好感を持ちました。
助演女優賞とかとれるんじゃないでしょうか。
緑川ルリ子と、ラスボス・イチローは兄妹。
なんだかんだで妹思いで悪に徹することのできない兄の姿は、庵野秀明監督のアニメ作品「ふしぎの海のナディア」のネオ皇帝を思い出しますね。
玉座に座り、ケーブルっぽいもので繋がっている姿も似ています。
イチローが変身する姿はある意味、仮面ライダーV3的な面もあります。
単なる傍観者である「K(ロボット刑事Kのオマージュ)」をラスボスにして、3人のライダーが共闘する展開の方が燃えたかも。
ラストのバトルは、なんだかレスリングの寝技ばっかりで「?」なところがあり、ライダーっぽくないんですよね。
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主人公はあんまりキャラクター設定がないです。
ちょっと陰キャな感じなだけ。
背負っている人生観も薄い。
警官の父親を事件で殺されたという過去はあるけれど、自分自身の経験上のトラウマとか乗り越えたいものとかは、あんまり感じられません。
だから、目的意識と行動がしっかりしている浜辺美波さん演じる緑川ルリ子の方が主役っぽく感じるのかも。
しかし、抑えた演技はハマっているように思います。
仮面ライダーの弱点は、その優しさという部分を表現できていたので。
昔の仮面ライダーの「孤独」「苦悩」みたいなものは、あんまり感じられないかな。
日本の政府組織(?)が、本郷猛・一文字隼人・緑川ルリ子の行動を支援しているので、孤独感はないかな。
仮面ライダー第2号の一文字隼人の方が、キャラ設定がしっかりしていたように思います。
TV版実写版のキャラ設定はあんまり覚えていないのですが、昨年読んだ漫画版のちょっとチャラいというか、主人公より明るい感じが、本作でうまく表現されていますね。
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興行収入的には、初週で2位という結果。
おそらく、シン・ウルトラマンの40億は難しいかもしれません。
けれど、シンシリーズの中で一番好きです。
等身大で、もっとも人間的だからでしょうね。
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