●『バカの壁(新潮新書)』(養老孟司 著)より)
題名の「バカの壁」は、私が最初に書いた本である『形を読む』(培風館)からとったものです。
二十年も前に書いた本ですから、そのときはずいぶん極端な表現だと思われたようです。
結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない。
つまり学問が最終的に突き当たる壁は、自分の脳だ。そういうつもりで述べたことです。
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今の若い人を見ていて、つくづく可哀想だなと思うのは、がんじがらめの「共通了解」を求められつつも、意味不明の「個性」を求められるという矛盾した境遇にあるところです。
会社でもどこでも組織に入れば徹底的に「共通了解」を求められるにもかかわらず、口では「個性を発揮しろ」と言われる。
どうすりゃいいんだ、と思うのも無理の無い話。
要するに「求められる個性」を発揮しろという矛盾した要求が出されているのです。
組織が期待するパターンの「個性」しか必要無いというのは随分おかしな話です。
皮肉なことに、この矛盾した要求の結果として派生してきたのが、「マニュアル人間」の類です。
要は、「私は、個性なんかを主張するつもりはございませんが、マニュアルさえいただければ、それに応じて何でもやって見せます」という人種。
これは一見、謙虚に見えて、実は随分傲岸不遜な態度なのです。
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【コメント】
今の大学生は、就職活動が大変だなあと思います。
就職氷河期世代の私の頃とは、また違った面倒さがあります。
まさに上記の引用内容がそれです。
結局、会社は「会社から言われた無茶な内容を確実に遂行しろ・反抗するな」という命令に従える人を求めている。
けれど、世間体を考えて、「個性」という曖昧な表現でお茶を濁しています。
会社の無茶な要求に、安い給料で対応できる能力を「個性」と言い換えている。
それを企業側も学生側も分かっているから、表面をつくろった、もやもやしたお見合い状態になっています。
それじゃあ、入社したってすぐに辞めてしまうのも無理はありません。
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