2023年07月17日

映画『君たちはどう生きるか(ジブリ作品)』の感想〜死の世界から描いた死生観

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「君たちはどう生きるか」
監督・脚本・原作:宮駿
出演者:山時聡真、菅田将暉、柴咲コウ


【衝撃】『君たちはどう生きるか』 の賛否が別れる理由(※ネタバレ無し感想)


※※※


【感想】

最初は『風立ちぬ』のような戦時中の様子を少年の目から見たお話しかと思いました。
ところが話しが進むにつれ、スタジオジブリらしいファンタジーな世界が展開されます。
少年が不思議な世界を旅するのです。


「少年版・千と千尋の神隠し」もしくは「少年版・不思議の国のアリス」という感じ。


戦時中の日本らしい景色は最初の方だけで、すぐに「ハウルの動く城」みたいなファンタジーな世界観・不思議なモンスターだらけな画面になります。
和風なファンタジーではなく、あくまで洋風。


宮崎駿監督の描くファンタジーって、昔の西洋で語られた世界観なのが良いですね。
決して綺麗なだけではなく、妙なウエット感・生活感がある。
現在の日本人が描くファンタジーは、ドラクエやファイナルファンタジーのドライな世界観の拝借ですからね。


今までのジブリ作品は「現生から描いた死生観」という感じで、本作は「死の世界から描いた死生観」という感じかな?


いろんな「死の世界(もしかしたら、生命誕生の場所)」を主人公が旅します。
「千と千尋の神隠し」あたりからそうなのですが、お話し全体の台本を書ききってから制作するのではない。
明確なラストは考えず、絵コンテを書きながら先の話しを作っていくという感じ。


本作の主人公は様々な場所を旅しますが、それぞれの場所ごとに「アドリブ芝居」をしている感じ。
それぞれの場所ごとに話しが独立していて、あまりそれぞれに関連性が無い。
また、主人公や登場人物たちも、そこまで性格がキャラ立ちしているわけじゃなく、ごく普通の人間の考え。
特徴はありません。
なんていうか、俳優を現場に来させて、妙に変わったセットを背景にアドリブ任せの芝居を録画している感じ。


それぞれの場所での「アドリブ芝居」にて、宮崎駿監督が考える「死生観」を描いているような雰囲気でした。
エッセイなのかもしれない。
だから、ストーリー的な面白さ・積み重ねは低いです。
「あそこの場面が伏線だったのか!」みたいな感じはありません。


旅をすると言っても、ラピュタみたいなワクワク冒険活劇ではありません。
それこそ、「不思議の国のアリス」みたいな感じですね。
普通の人間が、不思議な世界を体験する。


思っていた以上に、登場人物同志に感情的な交流がありません。
その辺も、昔の西洋のファンタジー小説みたいに感じます。
「あれっ? この2人、そんなに仲良かったっけ?」という場面が多い。
物凄く上辺だけ・社交的な会話に感じられ、互いの心にまで通じてない台詞が多いんですよね。
「魔女の宅急便」の時みたいな繊細な台詞はありません。
英語の会話をAIで日本語に自動翻訳したみたいな台詞なんです。
だから、「名台詞」も無いですね。


映画を観ているというより、「古くて難しい英文だけれど、とても綺麗な絵が描かれている洋書」を眺めている感じです。


宮崎駿監督が考える「死生観」を描いていると書きましたが、決して「遺言」じゃないです。
むしろ監督は、「俺のマネなんかすんな。俺の世界観は俺だけのものだ。お前らクリエイターを名乗る若造なんかには引き継がさせねえ」という感じでした。
結構、カロリーは高め。


これだけ不思議な世界観を今なお描ける想像力は大したものです。
絶対に次回作を考えていますよ。


昨日、客席の埋まり具合を見る限り、早く一般大衆に宣伝活動しないと赤字だと思いますよ。
子供が全然いない。

Posted by kanzaki at 2023年07月17日 07:05