2023年07月23日

映画『アイスクリームフィーバー』の感想〜女性の化粧の匂いを感じさせるお洒落な女性雑誌的映画

icecreamfever.jpg

●映画『アイスクリームフィーバー』
https://icecreamfever-movie.com/

監督:千原徹也
原案:川上未映子
脚本:清水匡
出演:吉岡里帆、モトーラ世理奈、松本まりか、南琴奈


【あらすじ】
芥川賞作家・川上未映子の短編小説「アイスクリーム熱」を原案に、世代の異なる4人の女性の思いが交錯する姿をつづったラブストーリー。

常田菜摘は美大卒業後にデザイン会社に就職するもうまくいかず、現在はアイスクリーム店でアルバイトをしている。
今後の身の振り方について思い悩む彼女は、常連客の作家・橋本佐保に運命的なものを感じ、彼女の存在が頭から離れなくなる。
菜摘のバイト仲間で後輩の桑島貴子は、そんな菜摘を複雑な思いで見つめていた。

一方、アイスクリーム店の近所に暮らす高嶋優の家に、疎遠になっていた姉の娘・美和が急に訪ねてくる。
数年前に出て行った父を探しに来たという美和との突然の共同生活に戸惑う優だったが……。

2023年製作/103分/G/日本


7/14(金)公開『アイスクリームフィーバー』<第2弾予告編>

※※※

【感想】

2つのお話しが交互に展開されていきます。
吉岡里帆さんが主人公のお話しと、松本まりかさんが主人公のお話し。


この2つのお話し、全く関連性が無く展開していくのですが、これが最後には時間差を使った映像トリックだったことが分かり感心しました。


ラスト30分ぐらいになると、どちらの話しのパートも笑顔になって前へ進んでいくので、観た後の気持ちは良かったです。
なんか雰囲気でごまかされている感じもあるけれど、やはり綺麗な女性たちが笑顔でいるのは良いものですよ。


吉岡里帆さん、モトーラ世理奈さんのお話しは、アイスクリーム屋で働く女性と小説家のジェンダーレスな恋愛。


松本まりかさん、南琴奈さんのお話しは、自分の姉の娘と一緒に、その娘の消えた父親を捜すお話し。


どちらも一応、単独でお話しが成立するので、片方だけをもっと深く描いても良いのではと思いました。
吉岡里帆さんが主人公なのに、松本まりかさんの方が行動的・感情的な芝居なので、そちらに観客の視線と感情が動いてしまいますもの。


監督の映像の雰囲気的には、吉岡里帆さんのパートの方が合っていると思います。
女性同士の恋愛は今ドキな題材だし。
音楽ユニット「水曜日のカンパネラ」の詩羽さんの存在も良いアクセントになっています。


いろんな種類のアイスクリームの色柄や、アイスクリームの制作過程も、どことなくアートな感じ。
本当、この映画は制作陣・出演陣から「男性の匂い」が感じられません。


実は「女性の血の匂い」も感じられなく、男性が間違ってデパートの「女性化粧品売り場」に紛れ込んでしまった際、鼻に入ってくる「化粧の匂い」が強いです。


もう、女性雑誌のお洒落な世界観そのものです。
こういう雰囲気を大勢の人間で制作する映画で出せるのは才能ですね。
普通の映画畑の人間には、なかなかこういうのは出来ませんから。


私が観た上映回は、20代の女性・・・それこそ劇中に登場するような人たちが多かったです。
そういう人たちはやはり、自分と同じような匂いを追い求めるのかな?

ーーーーーーーーーー

画面が昔のテレビのように4:3。
左右が短いので、なんとなく人と人との距離が短く感じます。

お洒落な女性雑誌の広告のような雰囲気です。
映像のばらまき、音楽の出し方など、90年代風な感じが出ています。


昔の最先端(まだ世の中に諦めが蔓延する直前)が、令和の世界でむしろ洒落ています。
なんていうか、スタバじゃなくて、昭和から営業が続いている地元の喫茶店の雰囲気。


こういう雰囲気の作品、出演されている人たちは気分がいいでしょう。
そう思わせるぐらい、演者の醸し出す空気が、物凄く良いものに感じました。
殆ど女性しか出ていないのですが、それがかえっていい。


内容自体、そんな派手でもなければ、緩急ついた展開でもない。
もしかしたら、あなたが入店した喫茶店の後ろの席に座っている人たちのお話しかもしれない。
けれど、なにか気になる存在。


次回作が楽しみな監督ですよ。

Posted by kanzaki at 2023年07月23日 08:46