2023年09月03日

映画『こんにちは、母さん』の感想〜笑顔で劇場を去ることができる「喜劇」は良いですよね

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●映画『こんにちは、母さん』公式サイト
https://movies.shochiku.co.jp/konnichiha-kasan/

監督:山田洋次
原作:永井愛
出演:吉永小百合、大泉洋、永野芽郁、寺尾聰


【あらすじ】

大会社の人事部長である神崎昭夫は、職場では常に神経をすり減らし、家では妻との離婚問題や大学生の娘との関係に頭を抱える日々を送っていた。


そんなある日、母・福江が暮らす下町の実家を久々に訪れた彼は、母の様子が変化していることに気づく。
いつも割烹着を着ていた母は艶やかなファッションに身を包み、恋愛までしている様子。


実家にも自分の居場所がなく戸惑う昭夫だったが、下町の住民たちの温かさや今までとは違う母との出会いを通し、自分が見失っていたものに気づいていく。

2023年製作/110分

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【感想】

母が吉永小百合さんのファンなので、連れて観に行ってきました。
やはり、60代・70代の観客が多かったです。


いや〜、良かった。
今年観た邦画で一番好きですよ。
母も喜んでいました。


やはりね、観終わった後、笑顔で劇場を去ることができる「喜劇」は良いですよね。
私は喜劇が好きなんだと再認識しました。


令和の時代だし、スタッフは若い人も多いけれど、懐かしくも温かい映像でした。
舞台となる下町のセットが良い味を出しています。
昭和時代に観た「男はつらいよ」のような雰囲気です。


吉永小百合さん、大泉洋さん、永野芽郁さんが演じた役が、「神崎」という名字なんです!
吉永小百合さん演じるお母さんが商いをする足袋屋の名前も当然、「かんざき」。
絶賛再放送中の「あまちゃん」の脚本家・宮藤官九郎さんが劇中で、「神崎」の名前を言ってくれることがなんだか嬉しいで
す。
大泉洋さん、永野芽郁さんという、私の好きな俳優さんを起用し、こういう素敵な作品を作ってくれて嬉しいですよ。


吉永小百合さん、大泉洋さんの演じる登場人物は結局、端から見たら、よろしく無い状況になってしまいます。
バッドエンド。
そしてラストの2人だけのお芝居に続きます。
そんな2人だけれど、そこは親子。
再出発へと展開していきます。


この2人だけの芝居がいいんですよ。
多分、他の俳優、監督さんでは無理だと思う。
リアルさより温かさを優先した展開は、観ている人の心も温かくしてくれます。


きっと、吉永小百合さん、大泉洋さん、そして永野芽郁さんが演じる3人は、この下町に暮らし、なんだかんだ笑顔で暮らしていくんじゃないのかなあと感じさせるラストでした。
登場人物が映画本編以降も幸せに暮らしていくことを感じさせる作品は良いですよね。


社会的な成功・地位・名誉・財産とかよりも、人生には大切なものがある。
そういう当たり前だけれど忘れがちなことを再認識させてくれるお話しでした。


社会を震撼させるような事件や事故が起きない。
悪人が出てこない。
現実社会に本当にいそうな人物ばかり。
ごく普通の暮らしなんだけれど、その普通の暮らしの中にだって、いろんな事があり、乗り越えていかなければいけない。
観客のいる現実世界と地続きな感じが良いですね。


孤独の美徳というものもありますが、この作品のように、家に鍵もかけず常に誰かがやってくる家というのも良いですね。


脚本は、あえてリアルさよりわかり易さを意識したセリフを使っています。
「喜劇」というのは、リアルさというつまらなさより、観ている人の笑顔を作るため、舞台的な言い回しをすることがあります。
そういうのもアリです。


この映画、大泉洋さん演じる男性が実質の主人公です。
観ているとね、「男はつらいよ」の寅さん・・・渥美清さんを感じるのです。
山田洋次監督と大泉洋さんで、新しい作品を作って欲しいなあと思いました。

Posted by kanzaki at 2023年09月03日 20:11