2024年12月29日

映画『はたらく細胞』の感想〜イデオン、ダンバインの頃の「皆殺しの富野」を思い出した

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●映画『はたらく細胞』公式サイト


監督:武内英樹
原作:清水茜、原田重光、初嘉屋一生
脚本:徳永友一
出演:永野芽郁、佐藤健、芦田愛菜、阿部サダヲ


【あらすじ】
人間の体内の細胞たちを擬人化した斬新な設定で話題を集め、テレビアニメ化もされた同名漫画を実写映画化。
原作漫画「はたらく細胞」とスピンオフ漫画「はたらく細胞 BLACK」の2作品をもとに、ある人間親子の体内世界ではたらく細胞たちの活躍と、その親子を中心とする人間世界のドラマを並行して描く。


2024年製作/109分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:2024年12月13日



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【感想】


観客がとにかく多かったです。
季節柄、主に家族連れでした。
年末年始、みんなで鑑賞するなら、この作品一択で間違いないでしょう。


既に2週連続で1位ですし、今週も維持できるかなと。
前週で累計成績は動員128万人、興収17億円を突破。


昨年の同時期に公開された「劇場版 Spy x Family Code: White」と同じような客層、混み具合。
スパイファミリーは興行収入が62.6億円なので、同じぐらい行くのではないでしょうか。
60億行くだけでもすごいですが、昨今100億円超えアニメ作品もあるので、印象はなぜか薄い。
理由は、内容的にリピーター率が低いからだと思います。


本作、『はたらく細胞』も、全年齢を対象にしたエンタメ作品。
とても観やすい作品でしたが、リピーター率は低いと感じました。
(何度も繰り返し細かい部分を観たり、考察する系統ではないから)


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親しみやすい、好感度の高い俳優陣で作られた作品。
各登場人物のキャラになりきって演じているというより、コスプレした俳優が俳優自身の性格で動いているという感じ。


永野芽郁さん、芦田愛菜さん、阿部サダヲさん・・・その他のみなさんも、バラエティ番組等で観た時の印象そのまんまでした。
(佐藤健さんだけは、ちょっと違うかな)
ただし、作品が作品ですし、好感度の高い俳優陣なので、それでも全然構わないという観客がほとんどだと思います。
実際、私もそうでした。


エンドロールの序列的には、永野芽郁さん主演ではありますが、そこまで主役主役していません。
いろんなハプニングに巻き込まれるけれど、自分自身で解決していくキャラじゃないから。
主役というよりヒロイン枠。


やはり、佐藤健さんのフォローがあっての立ち位置。
佐藤健さんが、顔面白塗りなのにめちゃくちゃ格好良く、ヒーローそのものでした。
永野芽郁さんを常に助けるポジション。


しかも、力がない(赤血球は酸素を運ぶだけ)と嘆く永野芽郁さんを細胞はそれぞれ役割があり、それをまっとうすれば良いと彼女の働きを肯定する姿勢が良いのですよ。


佐藤健さんのワイヤーアクションも良かったです。
現実世界でのワイヤーアクションだとわざとらしい感じが出ますが、体内というファンタジー世界だからそれでいい。
ナイフ(短剣)での戦いがこれまた、格闘技に近い動きで良いのですよ。


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体内の主人公である永野芽郁さんより、人間側の主人公である芦田愛菜さんの方が目立っていたかも。
白血病で倒れる役ですから。


今年、興行収入50億円を突破した『インサイド・ヘッド2』と割りかし設定構成は似てますよね。
(あちらの作品の人間は、友人関係とか進路に悩む)
あの作品も、大人になると人間側の主人公の方に感情移入してしまいます。


前半は、体内の擬人化を楽しむ構成。
芦田愛菜さんのクリーンな体内と、阿部サダヲさんの不摂生な体内の違いが面白いです。


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後半は、芦田愛菜さんの闘病話しが中心。
白血病により、体内がどんどん荒廃化していきます。
抗がん剤治療等で、更に体内はめちゃくちゃになります。


なんか、オーロラみたいなもの(放射線治療の表現)が現れ、それに触れると、敵味方関係なく、どんどん細胞たちが消滅(死)してしまう。
「新世紀エヴァンゲリオン」の人類補完計画によってL.C.Lと化した人間に近いものがある。


ある意味、話しの展開は、「伝説巨人イデオン」「聖戦士ダンバイン」のクライマックスに近いかも。
あの「皆殺しの富野」と呼ばれていた頃の作品です。
ビターエンド。


細胞って、一定の役割を終えたら死にますものね。
そして、同じ役割を持った新たな細胞がどんどん生まれる。


自然の摂理ですから、体内の細胞も死んで当然。
そういう部分も見せているのが、単なるエンタメで終わらせなかった制作陣の意地なのかもしれません。


それでも、ちゃんと救いがあるし、この映画を観た子どもたちも受け止めてくれると思います。

Posted by kanzaki at 2024年12月29日 11:06