●『斎藤学言葉集1: 今残しておきたい珠玉の講演集』(斎藤 学 著)より
最後にサバイブとスライブの特徴を言います。
サバイバーというのは、ある記憶のかたまりが自分の現在の生活にいろいろ影響を及ぼしているということを認知した人のことです。
私が今このようであるのは、これこれこういう心的な外傷のためである、ということです。
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アダルト・チルドレンという言葉を使いだしたジャネット・ウォイティッッの本が翻訳で出てます(『アダルト・チルドレン』金剛出版)が、序文で彼女はこう言ってますよ。
「アダルト・チャイルドは五五歳になっても五歳だ」
「五五歳の人生の中で五歳児がどんどん顔を出すという、このことを称して、私はアダルト・チャイルドという言葉を使う」 と。
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たとえば、非現実的な完壁な自分みたいなものを考えちゃう。
これは子どもですよね。
大人はそう考えないわけで、「このくらいだな」なんていうふうにあきらめがつくわけですが、子どもはそうはいかない。
完壁でなくちゃいけない、なんて思う。
あるいは誰かが自分を批判するから一所懸命やって、その人の期待に応えようとかですね。
要するに子どもの心性というのが顔を出してしまう。
それで、そういう自分の一連の生き方というものを宿命、運命と考える。
これもサバイバーの特徴です。
全体にそのような自分は呪われたものだ、あるいは、不運でこれからもこのようなことが続くだろうと。
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それに対して、スライバーの定義は、サバイバーと称していた人が自分に「サバイブしてきたんだ」って言う必要がなくなつちゃった状態ですね。
あるいは忘れちゃった、と。
その必要がないから忘れるわけです。
ひとりでに言わなくなつちゃった状態。
その特徴はといいますと、まず、一人でいられること。
一人でいても、寂しさが出てきても、寂しさと共存できる一耐えられることです。
それから、親のことに気をつかわなくなる。
親のことを「あの人がああだから、私がこうなった」みたいに言わないですね。
そのかわりどう言うかっていうと、「ああ、あの人」「ああ、いました。私の母です、それ」みたいな。
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スライバーは自分に優しい。自分のあるがままでいいやと思うし、自分を受け入れてますから、優しい。いろんな失敗がありましてもね、まあ「次、考えよう」みたいな話ですよ。
いいかげんと言ってもいいですね。
宿命って考えないんですよ。
それから、他人の期待に操られない。
自分に優しい人は、そんなに他人の期待に沿えない。
自分で選んで決定するってのは、これは宿命と思わない。
選択肢が増えれば増えるほど、スライブしてるわけです。
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自分で選択して決定して、決定したことに責任をとれる。
失敗してもその過程を楽しめる。
当然、他人を責めることが少ない。
どうもこの話は私には向いてないなとわかることは、失敗からの大きな学習ですよね。
「これができないから自分はダメだ」 なんて絶望してちゃあ、それはまだサバイバー段階だな。
スライバーになると、あまり悩むことさえしない。
「ただこれは私に向いてないから、違う道をたどろう」 と、こういうふうになる。
全体としてこういう話です。
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【コメント】
運命とか完璧を考えているような人は、見た目は大人だけれど、心は子どものままなんですね。
ひとつの考えに傾倒し、視界が狭まっている人も子ども。
しかし、現役を引退したあと(余命が少なくなった場合)ですが、その時は反対に、子どもの精神でいた方が幸せなんじゃないかと思ったりします。
なにせ選択できるほどの世界が目の前にない。
今あるものの中で、深く静かに生きた方が落ち着くのではないか。
そんなことを上記の講義から感じました。
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