突然ですが、みなさんは、桃太郎の歌を歌えますか?
「♪桃太郎さん 桃太郎さん♪」ではじまるアレです。
一番は、誰でも歌えますよね?
桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた黍団子
一つわたしに下さいな
それじゃあですね、二番はどうです?
心の中でいいですから、歌ってみてください。
多分、殆どの人が、
「♪あげましょう あげましょう♪」という出だしのフレーズを思い浮かべるはずです。
じゃあ、正解を教えましょう。
やりましょう やりましょう
これから鬼の征伐に
ついて行くならやりましょう
という訳で、「あげましょう」ではなく「やりましょう」が正解なんです。
今まで、間違って覚えていた人が多いのではないでしょうか?
「あげましょう」「あげる」は、目下の者が、目上の者に使う謙譲語です。
桃太郎は、イヌ・サル・キジと云う家来(弱いパーティーだなあ、おい)・目下へ黍団子を渡すのですから、「やる」が正しい使い方ですよね。
似たような例で、「花に水をあげる」ではなく、「花に水をやる」が正解。
でもなんだか、「やる」ってあまり奇麗な言葉には感じませんよね。
現代では、「やる」を上品に、丁寧に云うために「あげる」を使っているのでしょう。
やはり人だもの、言葉は丁寧に使いたい。
不思議なもので、言葉と云うものは、丁寧にしよう、美化しようと、どんどんそれが過剰になってくる傾向があります。
それが故、「やる」が「あげる」に変化していったのでしょう。
ちょっと別の言葉を。
同僚とご飯を食べに行く時、あなたは相手にどんな言葉をかけて誘いますか?
「メシ、食いに行こうぜ!」と云いませんか?
でも、女性の場合、ちょっと抵抗がありますよね?
「食う」というのは。
だから、「ご飯、食べに行きませんか?」と云うと思います。
実はこれも、「食う」が正しいのです。
「食う」が一般の言葉。
「食べる」は謙譲語なのです。
平安時代から「食う」が一般に使われていていたんです。
それが時と共に、言葉が過剰に美化されていき、「食べる」が普通になってしまいました。
「メシ」だって、本来は、これが一般的な言葉だったんです。
決して、汚い言葉ではないんです。
江戸時代から「食事」という言葉を使い始めました。
これも言葉の美化でしょうか。
ただ、「食う」と云う言葉が廃れたかと云うと、そうでもない。
「同じ釜のメシを食う」とか、「道草を食う」と云う言葉は使われています。
今までのお話しは、NHKのAMラジオを聴いていたら解説していた内容です。
解説のアナウンサーは、こういう言葉の変化について、「言葉は時代によって揺れる」と話していました。
ところが、リスナーからのお便りで、常々、アナウンサーが「言葉は時代によって揺れる」と話していたら反論の手紙が来まして、「いやいや、それは違う。”揺れ”ではなく”乱れ”だ」と書かれていたそうです。
勉強なりなんなりで、本来の使い方を知っている方には、言葉の乱れにしか感じないらしい。
アナウンサーは、それも一理あるけれど、例えば「食う」と云う言葉に抵抗を感じてきた人たちが、丁寧な表現として「食べる」が近年、使われるようになったと説明しました。
話す相手と自分との立場の差をこの言葉で表現しているのではなく、あくまで、丁寧な言葉遣いにしたいから使ったのだと。
言葉は変化していくもの。
だいたい現代の日本ですら、方言が存在し、地域によって同じ言葉でも使い方が違っています。
例えば、前回御紹介したことなんか、まさにそうですね。
「あす」、「あさって」の次の日は何?
http://kanzaki.sub.jp/archives/000358.html
仮に相手が使用用途を間違って言葉を使っていたとしても、相手に否定的な感情を持つよりも、その言葉を使っている相手が、どういう感情・意図を持ってその言葉を使用しているのかを汲み取り、円滑なコミュニケーションを取ることが一番大事なのです。
さて話しはここまでなんですが、ちょっと余談。
桃太郎の歌は、6番まで歌詞があるんですよ。
1
桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた黍団子
一つわたしに下さいな
2
やりましょう やりましょう
これから鬼の征伐に
ついて行くならやりましょう
3
行きましょう 行きましょう
あなたについて何処までも
家来になって行きましょう
4
そりゃ進め そりゃ進め
一度に攻めて攻めやぶり
つぶしてしまえ 鬼が島
5
おもしろい おもしろい
のこらず鬼を攻めふせて
分捕物をえんやらや
6
万々歳 万々歳
お伴の犬や さるきじは
勇んで車をえんやらや
・・・・・・桃太郎って、結構、バイオレンスというか、「こいつ、本当に正義の味方なのか?」と思ってしまいました。
4番で、「つぶしてしまえ 鬼が島」なんて過激な発言。
5番で、島での暴力行為に快感を感じてます。しかも、金品強奪を家来へ指示してます。
そう云えば、昔話の桃太郎って、ストーリーの中に、鬼が村の人たちに暴力をしたり、荒らし回っているシーンって無いんですよね。
だから、桃太郎が鬼退治をする理由が明確に表現されていません。
そこに来て、この歌詞。
平和に暮らしている鬼達の島を大悪党・桃太郎が荒らし回って、金品強奪をしているかのように読者が感じても不思議ではありませんね(笑)。
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