2005年01月18日

阪神淡路大震災の教訓を活かした防災への新たな取り組み

昨日は、阪神淡路大震災から10年という事で、各地で慰霊祭が行われましたね。
また、「地震が起きた際、どうしたら良いか?」等の特集をテレビでよく見ました。
ここ最近の大地震等で、この「防災」と云うキーワードがより身近に、より真剣に考えなければいけない内容となってきました。

こうした事を踏まえ、FMステーションJ-WAVE「JAM THE WORLD」と云う番組では、「阪神淡路大震災の教訓を活かした防災への新たな取り組み」と題しまして、お二人からお話しを伺っていました。
今回は、その内容を元に書こうかと思います。

まずは、2002年春に兵庫県舞子高校にできた「環境防災科」という全国で唯一の防災専門学科について、兵庫県立舞子高等学校の諏訪清二先生のお話しを伺いました。

舞子高等学校 公式サイト
http://www.hyogo-c.ed.jp/~maiko-hs/

2002年に舞子高校に環境防災科が出来てから108名の生徒が、災害の対策等について勉強しています。
1995年の地震の後、兵庫県では地震の際の防災教育を始めました。
そういう意識から生まれたのが、この環境防災科です。

生徒達の中には、あの地震で被災した人が多くいます。
生徒によって温度差はあるものの、みんな災害についての意識を持っています。
3年生の中には肉親と死に別れたとか、疎開した経験がある人もいるそうです。

諏訪先生は神戸の西区と云うところにて地震にあいました。
被害は軽かったものの、水不足などに悩まされたとか。
教える側も、それを聞く側も、共に災害を体験した人達。

生徒達の入学する動機を聞いたところ、この環境防災科では、大学の先生の専門講義を聞ける事とか、体験的な学習が出来る事等をあげています。
また、自分自身が被災した体験とか、そういう有事の際に活躍した消防士になりたい等も動機の理由です。

アメリカの9.11多発テロの際は、救助活動で活躍した消防士が子供達の憧れ的存在だったそうです。
自分の将来の夢と憧れの姿が重なる事ってありますよね。

全国で唯一と云う事で、勉強のカリキュラムを作るのは大変だったそうです。
何せ前例がありませんから。
先生達は防災についての本を沢山買っては読み、大学の専門講義を自ら受けたり、色んな学会へ参加したりと、思いついた事は全てやったそうです。

特色の一つである体験学習ですが、具体的にはどんなものがあるか教えてもらいました。
例えば、
震災にあった人達の体験談を聞く
地域の安全マップの作成
国際会議への出席
ネパールとの交流
水害時のボランティア

先日のスマトラ沖の件についてはどう思ったかを聞いたところ、ちょうどその時、学校では、1月14日に行われたメモリアル行事の準備に忙しい時期だったそうですが、生徒達の間では物凄い意識と関心があったそうです。
その関心度の高さは、授業の成果だと思われるとの事。

先生に、大きな地震の時、我々はどうしたらよいのかを聞いたところ、「起きてからでは遅い」との返事がありました。
その前に準備しておくのが大事。
そして、臨機応変に対応できる力が必要だと語りました。

そして、次の二つを知ってもらいたいそうです。
一つは、災害の辛さを知るべき。
神戸の人達は、語り継がねばならないと。

二つ目は、矛盾するようだけれど、防災の楽しさを知って欲しいそうです。
喜び、楽しさが先に見えないと、人は知識として身につきませんからね。

今、世界中で使われている言葉があるそうです。
それは、「減災」
被害を減らすと云う事ですね。
災害を全くゼロにする事は不可能。
自然の巻き起こす力は、とてつもないものだと云う事は、昨年の異常気象等で皆が感じている事です。
けれども被害を減らし、その災害を乗り越える事は可能です。
その為にも、予防と対応力が必要なのです。

今年はじめて、環境防災科から卒業生が出ます。
現時点で推薦入学等により、半分ぐらいの生徒達の進路が決まったそうです。
彼らは、その進路の先に大きな夢を描いています。
例えば、
幼稚園・学校の先生になりたい
勉強した事を途上国で活かしたいけれど、そういう国はその前に食料問題が重要なので、農業について学びたい
弱者を守りたい
・・・など、夢が具体的な行動に結びついている子が多いそうです。
この学校では、災害に関する専門家を作る事だけを目指しているのではありません。
有事の際、地域のリーダーとなって率先した行動の出来る人物になってもらいたいと教育をしているそうです。


次は、大地震が起きた後にどうやって復興するかをテーマに町ぐるみで対策に取り組んでいる足立区の西新井西口地区震災対策を考える会・会長の吉田ただしさんにお話を伺いました。
阪神大震災を教訓に、平成9年から学校を災害時の避難所として定めるようになりました。
避難所としての学校の運営は、その地域の自治会が行います。
具体的には、学校に備蓄品を常に置いたり、避難訓練をしたりします。

また、非難訓練だけでなく、様々な訓練(勉強)も行っています。
例えば、
オリエンテーション
災害時を想定して街を歩き、危険な場所・安全な場所の確認
避難所で一泊し、災害時の対応を体験(避難者名簿の作成、部屋の割り振り等)

吉田さんも、「減災」と云う言葉を使い、日頃から訓練、準備をして「減災の街」を造りたいと語っていました。


以上がお二人のお話しでした。
この原稿を書いている最中、いきなり地震が起きました。
時間は短かったのですが、縦揺れの強烈なものでした。
変な意味で地震に慣れてしまい、「あっ、また地震か」とえらく落ち着いてはいたのですが、「次の行動」と云うものが出来ませんでした。
もし更に地震が続いて被害にあったら助からなかったかも。
日頃から訓練や知識を身に付けていない典型的な人間の行動。
昨年、新潟中越地震の際、被災地へ出かけて応援をしてきたのに、時間が経過したら、意識が薄れています。

参照記事:新潟県中越地震の惨状(October 25, 2004)
http://kanzaki.sub.jp/archives/000427.html

参照記事:再び、長岡市へ行ってきました(November 01, 2004)
http://kanzaki.sub.jp/archives/000435.html

他にも、三条市の洪水の際にも行ったと云うのに・・・。
「地震が起きるのが当たり前」と考えるようにしなければ、意識は維持できません。
その為にも先生が語っていた「防災を楽しむ」と云うような気持ちも必要ですね。

以前から、「シンプルライフ」という言葉を使っているのですが、これと防災とを関連付ければ、防災を楽しめるかもしれません。
自分にとって必要最小限のモノで生活をしてみる。
「ケチな貧乏生活」と云う意味じゃありませんよ。
質を高める為に無駄を省く。
これが震災と云う「サバイバル」な状態の際に活きるのでは。
それと、必要以上に大きな家具を買わないとか。
生活に必要な分だけを所有していれば、大きな収納家具は必要ありません。
そうすれば、地震で家具が倒れた際の被害を最小限に出来るかもしれない。
コンパクトにした分、デザインとか質に拘れば、生活の質も高められる。

人によって関心のある事は様々だから、自分に合ったものと関連付けをしてみれば良いのではないでしょうか。

Posted by kanzaki at 2005年01月18日 23:16 | トラックバック (0)