2008年03月03日

挫折を挫折で終わらせなかった人〜ジャズシンガー綾戸智恵さん

ここ最近、殆どテレビを見なくなっていますが、そんな中でも好きな番組があります。
NHKで放送している「鶴瓶の家族に乾杯」です。
好きな理由は、一期一会というものの大切さを感じさせる番組だからです。

●NHK総合テレビ「鶴瓶の家族に乾杯」
http://www.nhk.or.jp/kanpai/

先週と今週のゲストは、ジャズシンガーの綾戸智恵さんでした。
鶴瓶さんと二人、神奈川県茅ヶ崎市にて、多くの人との出会いを経験されていました。

●綾戸智恵 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%BE%E6%88%B8%E6%99%BA%E6%81%B5

2007年9月10日から、芸名を「綾戸智絵」から本名の「綾戸智恵」に変えていたんですね。
脳の疾患で倒れたお母さんの介護を機会に、芸能活動を休止するなんて噂もありましたが、下記のサイトのとおり、今年も精力的に活動をしております。

●綾戸智恵デビュー10周年記念ツアー
http://www.ayado10.jp/

私も昔、綾戸さんのコンサートへ行ったことがあります。
紅白歌合戦に初出演した年のことでした。
コンサート当日はちょうど、紅白初出演を公表できた日でした。

●神崎のナナメ読み: 綾戸智絵さんのコンサート
http://kanzaki.sub.jp/archives/000018.html

話しを「鶴瓶の家族に乾杯」に戻しましょう。
綾戸さんは最後、地元の中学校の体育館でミニコンサートを開きました。
ジャージ姿の生徒達や、今回の旅で出会えた人達が駆けつけました。

拍手の中、体育館のステージに立つ綾戸さん。

綾戸
「みなさん、私がご紹介にあずかりました上戸 彩です」

観客は爆笑。掴みはO.K!
そこから歌とピアノ、そしてトークが繰り広げられました。
その時の綾戸さんのトークをご紹介いたします。

綾戸
「私はこんな小さい手なんで、実はピアノを断念せねばならない時がありました。
それが中学校・・・皆さんと同じ時です。中学一年生。
トルコ行進曲という曲を知っている人はいる?(何人か手をあげる)
ちょっと弾いてみます」

ピアノを弾き始めます。
でも、素人の私が見ても、どうもぎこちない弾き方です。

綾戸
「弾けないんです、実は。
(手が小さいから)一オクターブが届かないんですね。
それで先生に言われました。

"やめなさい。クラシックは無理だから"

音楽は大好きだけど、やめなしゃあないと思ったとき、近所の一番のおばちゃんが・・・

"え? でも智恵ちゃんはピアノが好きなんやろ?"

"けれどおばちゃん、ドからドまで届かないんや。このちっちゃい手だから、やめろと言われた・・・でも好きやねん"

"・・・ドからドやろ?"

"うん"

"・・・弾かんかったらええねん。ドからドじゃなく、ドだけ弾けばええねん(会場爆笑)"

"や、でも・・・ちゃんとベートーベンとかモーツアルトとか言う偉いおっちゃんが、その譜面を書きはってん。その通りにやらにゃあかんねん"

"(おばちゃんはニヤリと)そのベートーベンとかいうおっちゃんは、まだ生きてんのか?"

"もう死んでる・・・"

"死んでたらわからへんねん(会場爆笑)"

で、アドリブという方に、自分なりに変えて演奏しました。
でも、クラシックという畑では、やっぱりルールとしては違反するんですね。
でも、探せばあるもんです。
ジャズというジャンルにぶち当たりました。
ここは、譜面どおりに弾いたらあかんのです(会場笑い)。
自分なりにアレンジしてやらなああかんのです。
これやったら、まかしときんかいと、ドからソに変えたんです」

自分流にアレンジしたトルコ行進曲を弾きます。
さっきと違ってリズミカルに演奏します。
会場は拍手に包まれます。

綾戸
「おかげでこのジャズというものにめぐり会い、私は(笑)・・・そう皆さんに会えることが出来ました。
良かった、音楽を続けられて。
皆さんも大好きなことを曲げんでもいいよ。
大好きなことをやり続けてください。
でも、あまりかたくなに考えると、ここしかあかんとなって、生きるのが狭い人になってしまうといけないんで、リラックスして。
私はクラシックじゃなくジャズだったんだと言うことに気つき、音楽を続け50年・・・生きてこられて良かったと思えるんです」

大きな拍手が沸き起こりました。
生徒から、綾戸さんに質問がありました。

生徒
「ピアノをやってて、途中でやめたくなったこととかないですか?」

綾戸
「いい質問ですねえ。
子供のころにありました。
やめたいと母に言いました。

"お母ちゃん、壁(問題)が来た。難しい壁が来た。もうあかんわ。ピアノ弾かれへんわ。やめる!"

と言いました。
試験も忙しかったしね。
そしたら母の言葉。

"そうか。やめて良かった〜と思えるぐらいやったんやなあ"(会場から笑い)

やめて良かったと思える自信が無かった。
もうちょっと、やりたかった。
それ言われた時は、やめて良かったと言える自信は無かった。
で、もう一日やろうと思って、お稽古に行きました(笑顔)」

以上が、皆さんに話されていた事の一部始終です。

思春期の挫折。
まだ大人じゃありませんから、視野も狭いですし、手持ちの選択枠も少ない。
当然、落ち込んで自分を追い詰めることが多々あります。
綾戸さんはそんな時、大人達の助言で乗り越えました。

大人の広い視野から見た人生観。
これは、大人にならなければ出来ない事です。
これを大人同士で共感しあうのはたやすい事です。

しかし、これを子供達に教えるのは難しい。
子供達の耳にすんなりと入り、そしてその言葉を自分なりに考えさせる事が大事。
自分で考えるという事は、何かしら自分で解決方法を模索し、到達感があるからです。
当然、自分で考えて結論を出したことだから、素直に前へ進めるし、記憶にしっかりと刻まれるのです。

「自分らしい生き方」というのは、そうやって色んな材料を元に、自分の考えをつむぎ出した人だけが使える言葉だと思います。
そういう人達の笑顔は素晴らしいですよね。
お仕着せの人生じゃないからです。

挫折を挫折で終わらせずに生きるヒントが、今回の番組にはあったように思えます。


今月3月21日(金)・22(土)は、新潟市にある「りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館」にて、綾戸さんのコンサートがあるんですよねえ。
見たいけれど、もうチケットは手に入らないだろうなあ・・・。

ps.
今日、会社に工事業者が来たので、名刺交換をしました。
名刺を見ましたところ、私と同じ名前でした。
お互いそれに気づき、ちょっと照れてしまいました。
自然と笑顔が作れたせいか意思疎通が出来て、工事も無事に完了しました。

Posted by kanzaki at 2008年03月03日 22:41