2010年01月09日

勝間和代さん著「断る力」を読んで【3】

前回の続きです。

第三章は、相手への建設的な影響力を発揮することについてです。
自分の軸というのはあくまで、他人との関係の中でその価値が生まれます。
大事なことは、相手を理解し、自分を理解し、相手により高い付加価値をもたらすためにはどういう交渉を行い、提案を行っていくかというクセを身につける事。
クセを身につけるため、先人の知恵を学び、上手に実践している人のやり方を真似てみましょう。

よく「空気が読めない」なんて事を言いますが、この本では「空気を読んだ上で、その空気とは違うことをあえて言い切る勇気を持つ」ことを提案しています。

意図的に「空気が読めない」ふりをして話しを切り換えるのもテクニックのひとつ。
例えば、相手からコメントを求められた際、聞かれたことを実直に答えるだけではなく、

・いかに自分が事前に言いたいことをしっかり準備をしておいて
・その上で、質問された時に自分が言いたいことを言えるチャンスがあったら、果敢に持論を展開するか

が肝要です。
つまり、

・聞かれたことに答えるだけでなく、話しを絡ませて、自分が言いたい方向に持っていく

というテクニックになります。

相手から投げかけられる質問が必ずしも互いのコミニュケーションを行う際にベストな質問とは限りません。
意地悪な質問や、先方が得たい回答に対しての誘導質問の恐れもあります。
そこで取捨選択を行い、こちらが説明したいことをしっかり説明することが、「断る力」を持ったコミニュケーションになります。

相手から投げかけられた質問、世界観という狭いところへとどまらず、コミュニケーションによって双方に建設的な結論が共有できるかが大切です。
相手の解釈や価値観に対して反論する場合は、客観的で定量的なデータで、こういう別の見方もあるということを納得してもらえるだけの材料を提供しましょう。
自分の思っていることをただ言うだけでは水掛け論になってしまいます。
以上のような事をするには、「自分の軸」というものが大切になります。

ここで、相手への影響の仕組みについて考えてみましょう。
これには、「影響の輪」という考えを用います。
「影響の輪」とは、「7つの習慣-成功には原則があった!」という書籍に書かれているもので、自分が関心を示している空間において、どれだけ自分が影響を与えられるのか、あるいは他者にコントロールされてしまうことに関心を持ってしまってストレスをためてしまうのかを比較しているものです。
主体的に生きている人は、自分の関心をなるべく、自分が影響力を及ぼせるところに集中し、反応的な人は自分がコントロールできないこと(他人の欠点や周囲の目、言動)を注視してしまい、その反応が自分の意図にそぐわないということでますますストレスをためてしまうという生き方です。

自分の努力が成果として現れ、周りが感謝し、自分の自尊心も満たされるという好循環を作るには、関心の輪については、自分が影響力を与えやすいところに注力することが必要です。
つまり、「主体性を持つ」「断る力を持つ」ことが大事であり、主体性を持つには、相手のことも、自分のこともしっかり理解しなければなりません。
そして、互いの考えを総合した上で、「それなら、こうしようじゃないか」という創造を提案することで、はじめて主体性が発揮できるのです。
こういった建設的なコミュニケーションは、相手によりけりな所もあります。
建設的なコミュニケーションをしたくても、どうしても肌が合わない人もいますから。
無理して付き合うと、ストレスを溜め込むことになります。
どこまで努力して、どこでその努力を止めるかという見極めも「断る力」の一部です。

「相手へ影響を与える」というのは、相手のいいところ、自分のいいところを融合して、より高度なコミュニケーションを心がけるという意味です。
そのために主体性を持たなければいけなく、それがすなわち「相手と協力関係を築く」ということになるのです。

上司の指示は思いつきだったり、苦し紛れだったりします。

●asahi.com(朝日新聞社):上司は思いつきでものを言う - 勝間和代の人生を変えるコトバ - ビジネス・経済
http://www.asahi.com/business/topics/katsuma/TKY200912130120.html

大事なのは、コミュニケーションをしている自分と相手が「何を目指しているか」という「目標」を明確化してもらう事です。

それを明確にした上で適切な提案(AよりBというやり方の方が目標達成のために良いと提案)も行えるようになります。

適切な提案を行うためには、常に建設的な流れに話しを持っていけるだけの知識と知恵を蓄える必要があります。
しかし全ての分野に対して豊富な知識・知恵を蓄え続けるのは不可能です。
だからこそ、自分の得意分野になるべく多くの時間が使えるように、環境をコントロールしていく必要があります。
自分の得意分野を活かすことで、相手にとってもメリットが高いと即座に納得できる形で示すようになるには、自分を客観的に評価し、得意・不得意を見極める事が必要になるのです。

相手に断る力を発揮するということは、「交渉力」と言い換えることもできます。
交渉力をつけるなんて言いますと大げさなように聞こえますが、せいぜい「思考のクセ(習慣)」位に思ってください。
このクセとは、相手が出してきた要求や条件に対して即座に「ハイ」と返答するのではなく、まずは一旦「よりよい方法はないか」と一歩進んで考えることです。

言われたことにただ従っている環境にいると、思考が停止してしまいます。
終身雇用・年功序列賃金の時代ならば良かったのですが、今は環境変化が日本ペースではなく、世界ペースで起こっているので、それに対応した生き方(断る力・交渉力)を持たなくては、結局は幸せになれません。

交渉力を身につけるために常日頃、出来るところから少しずつ行ってみましょう。
レストランの注文の際、メニューとは違う量や個数が出来るか頼んでみたりです。
しかし無理難題は、単なる自分勝手な振る舞いとなります。
自分の利害だけではなく、相手の利害も考えて、お互いが両得の関係になるように実践してみましょう。
そういう、クセをつけるのが重要です。

「断る」ということは「リスクを取る」ということです。
しかし、ハイリスクな場面から実践(練習)するのは危険です。
ローリスクな場所(身近な友人・家族)からはじめてみましょう。

このように交渉して、「断る」ようなことを日常生活でトレーニングを重ねているうちに「人に嫌われるリスクをとること」をおそれ無くなっている自分に気づきます。
自信の芽生え、自尊心が高まったということです。
不要な嫌われ方は避けるべきですが、自分の軸をしっかり持って断ることを繰り返すと、一定確率でどうしても嫌われる事もあります。
しかしそのリスクを取っても、より大きなリターンが生まれるのも事実です。
断ること、適切な自己主張をすることによる成功体験を積み重ねて、自分も相手も大事にすると言う成長を互いに遂げることになります。


続きます(次回で最後)。


●勝間和代さん著「断る力」を読んで【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001993.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001994.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001996.html

●勝間和代さん著「断る力」を読んで【4】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001997.html

Posted by kanzaki at 2010年01月09日 12:01