2012年02月18日

日本一無口な路上の絵売り〜河村武明さん

河村武明さんは、自分自身を「日本一無口な路上の絵売り」と呼びます。

●公式サイト〜表現者たけの世界
http://hyougensya-take.com/

●公式ブログ〜ありがとうプロジェクト
http://hyougensya-take.cocolog-nifty.com/blog/

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脳梗塞により、言語障害・聴覚障害・右手麻痺・失語症になりました。
絶望した日々を過ごしていた彼はある日、残った左手で、絵が描けることに気づきました。
それから絵と詩で表現を始めました。

京都の中心街で路上販売を続け、やがて話題になりました。
各メディアの取材が相次ぎました。

現在は、全国で個展を開催したり、"日本一無口な講演会"(パワポや代読を活用)、連載執筆などを行なっています。

(障害者雇用冊子「働くひろば」より)

【発病・後遺症・そして表現者の道へ】

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河村さんは勇気を出して、自作のポストカードを路上にて販売を始めました。

発病してわずか半年後のことです。
まだ、リハビリ病院に入院中でした。

後遺症により話せないし、言葉も分かりません。
しかし、人生を開くチャンスは、路上にあると考えていました。

最初は一日500円以下の売上でした。
電車代とジュース代で赤字です。
そんな時でも「今の自分はこれだけのものなんだ」と思い、とにかく続けました。

路上販売にはコミュニケーションが必要です。
彼は後遺症によって、話せないし、言葉の聞き取りも自由には出来ませんでした。

彼は、自分の方からコミュニケーションをしようと、自己紹介のチラシを作成しました、
チラシの冒頭には、「私はことば(聞く、話す、書く)が不自由です。失礼お許しください」と書きました。
作品を見ていただいている方へ、そのチラシを渡しました。

ありがとうの言葉を言えない事は失礼にあたると思い、せめて感謝の意を込めて、道に正座し、コミュニケーションをとることにしていました。
じょじょに売り上げも増え、応援してくださる方も現れました。

病院を利用して一年、ちょうど路上活動をして半年を過ぎた頃の事。
病院の職員とこれからの進路の相談をしました。

京都にある障害者職業訓練学校へ行くことを勧められたものの、言葉の聞き取りが出来ない人は入学出来ないと分かりました。

もともと彼は、表現者になる事を心に決めました。
この訓練校に断られたことで、かえって「お前は、表現者の道へ行け」と言われているように思ったそうです。

「もう迷いはない。俺にはこの道しかない」と再び決意しました。

※※※

絶望から立ち上がるには、とてつもなく大きな勇気が必要ですよね。

河村さんは、「与えられたことを感謝して受けよ」という言葉通り、無理やりこの障害に「ありがとう」と感謝を続けました。
そうしたら、左手で絵が描けることに気づきました。

私は宇宙学というのは分かりませんが、自分の辛い現状を肯定するというこの手段は、非常に有効だと思います。

●神崎のナナメ読み: 「言葉」が人の性格を変える【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002010.html

●神崎のナナメ読み: 「言葉」が人の性格を変える【2】〜ほめる覆面調査会社「C’s(シーズ)」の社長・西村貴好さん
http://kanzaki.sub.jp/archives/002011.html

上記の記事にて書きましたが、脳は、現実と想像の区別がつきません。
本当はそう思っていなくても、「今日は楽しい」と口にすれば、脳はこの言葉の意味を読み取り、自律神経がそれを具現化しようとします。
想像上のことであっても、身体は現実のことと同じように反応します。
こういった生理的な仕組みを理解し、口ぐせをうまく利用することで、性格を変えることが出来ます。

左手で絵が描けると気づいたのは、自分の現状を肯定していたからだと思います。
左手があり、絵心があっても、自分を肯定しなければ、それを結びつけて路上販売をはじめようとは気づきません。

無理矢理にでも自分を肯定するというのは、物凄く大きな第一歩ですよね。
並の精神力では出来るものではありません。
この部分だけでも、非常に尊敬します。

更に凄いのは、リハビリして僅かしか経っていないのに、決意してすぐに路上販売という行動に出た事です。

しかも、単に飛び出していったのではなく、この路上販売の先に、マスコミの取材や個展の話し、本の出版の話しがあるはずだと、強くイメージしていた事です。
自分をベストな方向へ持っていくため、イメージトレーニングをするスポーツ選手と同じですよね。

病院の職員や仲間の皆さんは、彼の路上販売を心配しました。
「何かがあったどうするの?」

彼は違った。
実際に起きないことを前もって心配するという事は考えないそうです。
やってみなければ分からない。
なんでも、まずやってみる事が大事だという考えなのです。

社会で仕事をしていく中で、一番の敵は自分です。
まだ起きていないその先の事に対する不安が、自分自身をストレスとして脅かします。

河村さんは精神的に自分をマイナスの方向へ持っていくことはしません。
常に、良いイメージを頭の中で作り出し、それを具現化するかのように実際に行動しているのです。

ハンディキャップがあるとか、ないとか関係なく、河村さんを素晴らしい方だと思いましたよ。
機会がありましたら、個展や講演会に行ってみたいものです。

Posted by kanzaki at 2012年02月18日 22:22