2013年06月14日

チェコ共和国にも河童がいた〜カレル・チャペックの童話集「長い長いお医者さんの話」の一つ「カッパの話」

連日、暑い日が続くので忘れていたのですが、まだ新潟市内は梅雨入りしていません。
こんなに暑いと、人間様も辛いのですが、河童(カッパ)は頭のお皿が乾いて死活問題でしょうね。


新潟市在住の絵本研究会講師・錦恵美子さんが、「チェコのカッパ」というお話をしていました。


日本の妖怪である河童。
実は、中央ヨーロッパのチェコ共和国にも、河童がいたのです。


チェコの作家・カレル・チャペックの童話集「長い長いお医者さんの話」の中の一つ「カッパの話」に河童が出てくるのです。
1931年の作品です。


●Amazon.co.jp: 長い長いお医者さんの話 (岩波少年文庫 (002)): カレル・チャペック, ヨセフ・チャペック, Karel Capek, 中野 好夫: 本
http://amazon.jp/dp/4001140020

nagainagaiisya01.jpg


・文章を担当した弟 カレル・チャペック - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%AC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%9A%E3%83%83%E3%82%AF

・挿絵を担当した兄 ヨゼフ・チャペック - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%82%BC%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%9A%E3%83%83%E3%82%AF


「カッパの話」の冒頭に、こう書かれています。


みなさんは、カッパなんていやしないと思いこんではいけませんよ。
だって、ほんとうにいるんですからね。


河童はチェコ語で「ヴォドニーク」と言います。
劇中に登場する河童は水の中に住んでいます。
水かきがあり、口が大きく耳のあたりまで裂けています。
日本の河童と違い、背中の甲羅と頭の皿はありません。
人間社会に混じって住んでいます。
鉱泉水売リ、水道管敷き、水族館の番人、水泳の選手など金儲けをしています。
河童は世界中にいて、年に1、2度国際会議をします。


kappa05.JPG


これが、挿絵に描かれた河童です。
シュールな画風ですね(汗)
確かに、日本の河童に通ずるところがあります。


この挿絵は、ヨセフ・チャペックが描いています。
この物語を書いたカレル・チャペックのお兄さんです。


絵本研究会講師・錦恵美子さんは、このチャペック兄弟の故郷・チェコの東ボヘミアを訪ねました。


バスは広々とした麦畑を過ぎ、林の中を通りぬけ、緑濃い森の中野小さな村へ辿り着きました。
主な建物は、教会と兄弟の記念館、その裏の小さなレストランしかありません。


教会へ行く脇に、チャペック兄弟のほほえましい銅像が立っているそうです。
兄のヨセフは画板を携え、弟は右手にチューリップの球根を持ち、左手にはジョウロを持って仲良くたたずんでいます。


晩年、兄弟はナチスの脅威を受け、弟は祖国を憂えながら死去、兄もナチスに逮捕され強制収容所で死去しました。


wikiによると、兄弟はアドルフ・ヒトラーとナチズムを痛烈に批判しており、危険視されました。
時代背景もあり、二人は平和と文化を深く考えていたのです。


※※※


実は神ナナにて、カレル・チャペックの作品を紹介したのは2回目です。


●神崎のナナメ読み: R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)〜1920年、世界ではじめて「ロボット」という言葉が使われた作品
http://kanzaki.sub.jp/archives/002559.html


世界ではじめて、「ロボット」という名称が使われた作品「R.U.R.」という戯曲(シナリオ)を書きました。
1920年の作品です。


●R.U.R. - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/R.U.R.


●青空文庫「R.U.R.(Rossum's Universal Robots)-ロッサム世界ロボット製作所)
http://www.aozora.gr.jp/cards/001236/card46345.html
(無料で、翻訳された作品を読むことが出来ます)


「R.U.R」のロボットと人類に対する深い考察。
一転、「長い長いお医者さんの話」では、妖精や魔法使い、想像上の生き物たちを登場させたユニークな話しを展開しています。
カレル・チャペックは、戯曲、評論とあらゆるジャンルで活躍し、後に大統領マサリクを援護し、祖国チェコのために尽くしました。
単なる作家では無いのです。


その博識と多彩な作風は、どことなく手塚治虫先生を彷彿させます。
戦争という大きな背景の中で、平和と文化に貢献した作家。
もっと日本で知られていても良いと思いました。

Posted by kanzaki at 2013年06月14日 22:22