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●Amazon.co.jp: ユートピア (岩波文庫 赤202-1): トマス・モア, 平井正穂: 本
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「ユートピア」とは、「どこにも無い」という意味の造語です。
語源を英語で表すと、「not place」。
どこにもないという場所であり、同時に理想郷を意味します。
著者 トマス・モアが描いた理想国は、自由と規律をかねそなえた共和国です。
国民は、人間の自然な姿を愛し、「戦争で得られた名誉ほど不名誉なものはない」と考えています。
しかし、それを現実世界で行おうとすると、悲惨なことになります・・・。
それは、あるものが無いからです。
答えは後半に。
(本田コンサルタント事務所代表・本田有明さんの解説)
※
【ユートピアとはどんな国か?】
・ユートピアという国は、一つの島。
全部で54の都市から成り立っており、みな同じ形。
・家々もみな同じ形。
ドアに鍵はない。
そもそもこの国に、私有財産はないから、盗みという行為が発生しないのだ。
・各都市のまわりには農村地帯が広がっている。
都市に住む住人は、2年交代で農村に住み、農作業に従事する。
農作業は、ユートピア人の共通の労働。
男女の別なく、みな熟練者。
・国民は農作業の他、義務として、何らかの技術を習得しなければならない。
織物、石工、鍛冶、大工など、生活に密着した技術。
・衣類はすべて、各々の家庭で作る。
仕事着は、7年もつ丈夫な皮革製の服。
外出時は、そこに上着をはおるだけ。
みな同型同色で、ある意味、国民服になっている。
・30世帯に1人、「家族長」が選出される。
職務は、国民の管理監督。
規律正しく、ちゃんと仕事をしているかチェックするのだ。
1日6時間働かせる監視でもあり、それ以上の労働をさせない監視でもある。
・すべての人が毎日、6時間をきちんと働く。
午前3時間、午後3時間。
間に2時間の休息。
6時間の労働は少ないが、国民の必要物資の生産には充分。
ただし、必ず全員6時間労働。
貴族、聖職者、資本家、ニートなんてのもいないので、とにかく全員が働く。
「働いたら負け」ではない。
働くのが当然なのだ。
・食事は、30世帯に1軒の割合で建てられたホールでとる。
市民はここに集まり、ラッパの音の合図で食事開始。
・夕食後に1時間の自由時間がある。
しかし、ここは賭博やゲームの存在しない国。
音楽の練習、高尚な会話をする。
あっ、ゲームはあった。
計算の技術を競う暗算合戦だ。
・家族長の旅行許可証があれば、他の都市へ旅行ができる。
しかし、必ず団体旅行であり、帰りの日時を定めた市長の証明書が必要。
・貨幣が無い国なので、無料で旅行が楽しめる。
その代わり、旅行先でも自分の専門の仕事をしなければいけない。
自分の住んでいる都市の観光さえ、父親の許可と妻の同意が必要で、その際、1日分の仕事を終えてからでないと食事は与えられない。
・ユートピア国は外国との貿易で、莫大な金額を有している。
戦争への備えとして、国外から傭兵を雇うときの資金として蓄えているのだ。
・金銀は卑しむべきものと教えられている。
もっぱら便器の材料として用いられている。
※
【ユートピアには無いもの】
このように、ユートピアは全体主義、共産主義的な国です。
この作品は1516年に書かれました。
この社会システムは、実際の国々で導入されました。
しかし、悲惨な結果を招きました。
具体的な名前は書きませんが、今なお部分的に、この体制を敷いている国がありますよね。
平等、公平、博愛、質素、清潔・・・こういった美しい徳目を実践しようとすると、人がイメージする代表例が、ユートピアなのです。
このユートピアにはないものがあります。
それは、「自由」です。
「自由」は大きな魅力であり、魔力でもある。
人間にとって、もっともやっかいな概念だからです。
※※※
【資本主義も、それはそれで生きづらい】
ユートピアという国は、随分と非人間的な管理社会で、理想郷とは思えないですね。
正直、住みたくないなあ。
その点、資本主義は、自由のカタマリです。
ガンガン働く人もいれば、全く働かない人もいる。
しかし、全く働かなくても、生まれ育った環境のおかげで悠々自適な暮らしの人もいる。
どんな仕事をしてもいい。
ただし、望んだ仕事に就けるかどうかは、個人の能力と運次第。
働く場所や内容、立場などで、金銭的に格差社会になっています。
長時間労働をしたからといって、必ずしも多くの報酬が与えられるわけでもなく、体を壊して仕事を辞める人もいます。
休暇は、どこへだって好きに行けるし、遊びも無限大。
ただし、お金と時間、健康があればの話しですが。
あれっ?
ユートピアも嫌だなあと思いましたが、資本主義な日本も、結構住みにくいです。
自由とは言っていますが、「※ただし、条件があります」と例外もたくさんあります。
そもそも、日々の生活も怪しい。
ご飯を食べるために働いているのか、働くためにご飯を食べているのか?
ほんの僅かな自由の為に、多大な肉体的・精神的なストレスに耐えないといけない。
何のために生きているのか、何のために生まれてきたのかを真剣に考えると、錯乱しそうになります。
※
【R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)】
もし、人間がしなければいけない労働をロボットが全て行ってくれたらどうなるでしょう?
これもある意味、自由への手段です。
第一次世界大戦が終結したばかりの1920年に、「R.U.R.」という作品が生まれました。
世界ではじめて「ロボット」という名称が使われた作品です。
●解説: R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)〜1920年、世界ではじめて「ロボット」という言葉が使われた作品
http://kanzaki.sub.jp/archives/002559.html
ロボットが全て行うので、人間はただ存在するだけ。
一日中、木陰に寝そべっている猫と変わりがありません。
ロボットを作ったRUR社の経営陣は、「自分を完成させること、創造主になること」が、人間の究極的な自由と考えたのですが、現実は大きく違ってしまったのです。
やがてロボットが、人間たちに対して反乱をおこします。
知性、パワーともに人間を上回る彼らは、武器を持って立ち上がり、人間を掃討しました。
たった一人だけ、ロボット達から生きることを許された人物がいます。
RUR社の技師・アルクイストです。
便利になりすぎて何もしなくなった人間の中で唯一、彼だけは手を動かして働いていたからです。
アルクイスト
「かつては、奉仕する事の中に何か良いものがあった。
労働や疲労の中には、徳のようなものがあった」
「ユートピア」と「R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)」から考えさせられるのは、働くことの意味です。
単に6時間を労働するのも、ロボットに全て働かせるのも、「徳」がありません。
「徳」とは、人間の持つ気質や能力に、社会性や道徳性が発揮されたもの。
wikiによると、徳は人間性を構成する多様な精神要素から成り立っており、気品、意志、温情、理性、忠誠、勇気、名誉、誠実、自信、謙虚、健康、楽天主義などが個々の徳目と位置付けることができるそうです。
本来、働くというのは、そういう心情が湧き出るものなんですね。
「ユートピア」と「R.U.R.(ロッサム万能ロボット会社)」の世界には無さそうなものですね。
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