2016年01月16日

文豪・芥川龍之介が書いた昔話「桃太郎」のブラックパロディ


(ある意味、最強のパロディである「ふしぎの海のナディア」。NHKでやっていたのがすごい)

文豪・芥川龍之介。
彼が昔話「桃太郎」のブラックパロディを書いているのはご存知でしょうか?


●芥川龍之介 桃太郎-青空文庫
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/100_15253.html


【あらすじ】


・平和を愛する鬼たちは、鬼ヶ島で平穏に暮らしている。


・人間のほうが、ひどい存在。鬼は以下のように人間を見ている。


「え、人間というものかい?
人間というものは角の生えない、生白い顔や手足をした、何ともいわれず気味の悪いものだよ。
男でも女でも同じように、うそはいうし、欲は深いし、焼餅は焼くし、うぬぼれは強いし、仲間同志殺し合うし、火はつけるし、泥棒はするし、手のつけようのないケダモノなのだよ……」


・無精の桃太郎。お爺さんやお婆さんは、早く追い出したいと考えている。


・仕事の嫌いな桃太郎は、思いつきで鬼退治へ出かける。


・3匹のお供は、いがみ合いばかりの最悪な関係。しかし皆、鬼を平気で殺す残虐性を持っている。


・桃太郎たちは、あらゆる罪悪を犯し、鬼たちを襲撃。


・宝と、人質の子鬼を連れて凱旋。


・子鬼は逃げ帰り、生き残った鬼たちは爆弾を作り、復讐を企てる・・・。


※※※


【パロディも一つのジャンル】


大正13年6月の作品なのに、なんだか今どきなブラックユーモアを醸し出す作品です。
こういうパロディは、昔からあったのですね。


歴史好きならば、「もし、○○武将が、相手側に寝返っていたら・・・」とか、「if(もしも)」を想像して楽しみます。


パロディも、「if(もしも)」の一つであり、立派なジャンルです。
既に構築された物語を自分なりの解釈で再構築する。
読む側もオリジナルを知っているがゆえに、奇想天外な設定変更にツッコミを入れつつ楽しみます。
作家と読者が、共通した情報を元に楽しみ合う、インターネット時代の双方向性に近いものを持ち合わせています。


現在、創作ストーリーの分野は、あらかたネタを出尽くした感があります。
そうなると、過去の作品のパロディ・オマージュを組み合わせ、そこから新たな作品を生み出します。



【「エヴァンゲリオン」の庵野監督】


「エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督は、その秀逸な映像センスで、過去の有名作品のエッセンスを散りばめて作品を作りだします。
特に「ふしぎの海のナディア」は、その最高峰だと私は思います。


そもそもナディアは、昨晩放送された「天空の城ラピュタ」と根っこは同じです。
宮崎駿監督がNHKのTVシリーズ作品として準備した「海底世界一周」というボツ企画があります。
後に宮崎監督は、スタジオジブリで「ラピュタ」として作品化。
一方、NHKと東宝、ガイナックスによって「ナディア」として作品化。
だから、謎の青い石や超古代文明の設定が、両作品に存在するのです。


庵野秀明監督作品で、視聴者が納得行くようにきっちりと最後まで作りこんだ作品といえば、「ふしぎの海のナディア」、「トップをねらえ!」ではないでしょうか。
(「トップをねらえ!」は、「エースをねらえ!」「トップガン」などのパロディを突っ込みつつ、あの壮大で美しいラストのオチへ向かいます)



(「トップをねらえ!」は、庵野監督の映像センス全開)



【生活の中の「再構築」】


芥川龍之介は、桃太郎を「再構築」しました。
再構築というのは、なにも作家だけのものではありません。


我々の人生だって、再構築できるのです。
行き詰った自分の仕事や人生を打破するには、「再構築」が大切です。


再構築するには、構築する材料を洗い出す必要があります。
それらを紙やPCの画面上に列記してみます。
つまり、「可視化」です。


その上で、それらのエッセンスを紐付けたり、順番を変えたりしてみます。
こうした「再構築」は、これから行う行動をはっきりと明確化するための原動力となります。


「クリエイティブ」という言葉はかっこいいです。
しかし大抵のクリエイティブというのは、悩んで・焦って・行き詰まって、その中から考えだしたものの方が多いのです。
大抵のその泥臭いクリエイティブというのは、「再構築」から生み出されます。


決して、スターバックスコーヒーでマックブックエアーを開いている時には、創造性なんて生まれません。
(昨日、万代シテイのスタバの前を通ったら、未だにいるんだと驚きました)



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●桃太郎の歌
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Posted by kanzaki at 2016年01月16日 22:26