2020年大晦日、映画館で観ました。
30代の独身女性が主人公。
「おひとりさま生活」を満喫しています。
そんな彼女が、年下の男性を好きになってしまうお話し。
のん&林遣都出演!映画『私をくいとめて』WEB映像〈絶賛公開中〉
コミカルだけれど、漫画チックではありません。
「きっと現実にもこういう子いるよね」という自然体な内容でした。
心の叫びはあっても、内容としては重くない。
ストーリーも各エピソードごとに、ゆるく起承転結をつけて観やすいです。
上映時間が長いから、観る前は心配だったけれど、観始めたらあっという間でした。
上映時間133分の殆どをのんさんの独り芝居で描いているという感じです。
なかなか彼女の出演作品を観る機会は少ないです。
その分、この作品でがっつり堪能できます。
※※※
前半は、おひとり様生活を満喫する主人公の日常生活を描いています。
「孤独のグルメ」よろしく一人焼肉など外食をしたり、食品サンプル製作の体験教室へ一人で参加したり。
まるで深夜ドラマの「孤独のグルメ」や「名建築で昼食を」みたいな雰囲気です。
脳内にいる模範解答な話し方をする自分「A(声・中村倫也さん)」との掛け合いが面白いです。
「のん」がレポーター、ナレーションが「A」で、深夜のロケ番組を観ている感じ。
この「A」がいるおかげで、私のような男性でも観やすい仕上がりになっているのかなと。
中村倫也さんの声は、聴いていて落ち着きます。
そんな脳内の声と、ナチュラルに会話する主人公がかわいいです。
がっつりの恋愛要素は、自分が思ったよりは配分が少ないです。
主人公の日常生活に起きた出来事の一部。
彼女の心の起伏を描くのに必要だったという感じです。
彼氏ができたからと言って、大人として一歩前へ進んだかと言えば、そこまでではありません。
成長というより、「ひとつ悩みが増えた・・・けれど、頑張ろう」という感じ。
登場人物は何人も出てきますが、あくまで主人公の感情を描くためのリトマス試験紙です。
彼氏でさえも。
※※※
私の好きな作品の傾向は3つあります。
「悪い人が出てこない」
「凄惨な出来事が起きない」
「観ている自分と地続きな世界観」
これだけで、私は気に入ってしまいます。
この映画は、まさにそれでした。
しかも主人公をはじめ皆、ちゃんと社会人として自立できている人なんですよね。
主人公の会社に、王子様系の濃いキャラの男性社員がいます。
マンガチックなキャラですが、彼ですら社会人として一線を超えない思考をしています。
※※※
のんさん演じる主人公「みつ子」は、30代の独身女性。
そんな主人公の日常が描かれます。
休みの日に一人で出かけたり、一人で外食したり、自宅でのんびり過ごしたり。
会社では、存在感を前面に出す方じゃないのですが、この会社にいるのが当たり前なぐらい馴染んでいる感じ。
ちゃんと社会人としての振るまいや言動の能年さんが、実に新鮮だったりします。
破天荒キャラじゃないのです。
こんな女性がいたら男性社員は、「口説こうとはせず、会社の給湯室にて笑顔で日常会話をしたい」と思わせる、実にリアルな雰囲気だったりします。
過去の作品だと、登場人物の中では一番歳下で、「守られている」という印象(「あまちゃん」とか)。
暴走しても、誰か大人が止めてくれていました。
ところがこの作品では、きちんと自立しているのですよね。
歳下の彼氏にタメ口で話す雰囲気とか、実に30代の女性っぽいのです。
※※※
自立して社会人としてキチンとやっているということは当然、「我慢している」「感情を抑えている」と言う部分がある訳です。
主人公は現実にいそうなキャラですから、喜怒哀楽のすべてを持っています。
意外と邦画で、主人公の喜怒哀楽のすべてを出し切っている作品って少ないかも。
そう思えるぐらい、のんさんが演じる主人公を上映時間すべてを使って描いています。
だから逆に言えば、他の登場人物はそこまで喜怒哀楽は出さず、社会人としての常識的な感情しか出していません。
のんさんは「喜」「怒」「哀」「楽」のうち、「怒」の演技がいいのですよ。
若手女優で演技のうまい人はたくさんいるでしょうが、大抵は「泣きの演技」で評価されます。
のんさん以外で、「怒」の感情で評価される若手女優さんを私は知りません。
普通、「怒」の感情は、観ている人に不快感を与えます。
私のようなおっさんの場合、若い女の子の「怒」は恐怖でしかありません。
ナイフのような鋭さがあり、対峙したらこちらが怪我をしてしまいそうだからです。
ところが、のんさんの「怒」はそうならないのですよ。
不思議と「共感」してしまいます。
きっと、この「怒」の感情は、「悪態」ではなく「助けを求める叫び」のように聞こえるからなのかも。
だからその助けに手を差し伸べたくなるのです。
この映画で、のんさんは「怒」をいくつかの場面で出しています。
そしてその「怒」は、「自分で自分に対する酷評・見下し・悔しさ」もセットになっています。
そういう部分があるから、観ていても「怒」が不愉快にならないんじゃないかと。
単純に、表情や言葉で喜怒哀楽を表現するだけでなく、逆に表情を出せない複雑な感情も描いていました。
結婚して海外へ行ってしまった親友から、遊びに来ないかと誘われたエピソード。
行ってみたら、親友はお腹が大きくなっており妊娠していました。
事前に知らされていなかった事実を前に、会った瞬間に「おめでとう」とか素直に言えない部分が、妙にリアルでした。
※※※
2020年の大晦日、最後に良い映画を観ることができました。
2021年も、こんな素敵な映画を観たいものです。
※
【関連記事】
●映画「この世界の片隅に」を観た感想〜本当はこの世の中、一着の綺麗に仕立てた服より、いろんな柄のツギハギでつながったもののほうが綺麗で大切なんだと感じることができました
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | |||||
3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 |
17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 |
24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
31 |