2022年01月01日

映画『私はいったい、何と闘っているのか』の感想〜とにかく「最高の家族」でした

watanani02.jpg

●映画『私はいったい、何と闘っているのか』
https://nanitata-movie.jp/

映画『私はいったい、何と闘っているのか』予告編


本作は、私が去年最後に観た映画です。
12月25日(土)朝9時の上映回を観ました。
お客様は15名ぐらい。
朝8時台、映画館へ入ったのですが、「劇場版・呪術廻戦」上映最初の週末のせいか、はたまた冬休み効果のせいか、ものすごく混んでいました。
新潟は雪のせいもあり、この日以降、気軽に映画を観に行ける日がありません。


※※※


【最高の"家族"の映画】


今回の映画、とにかく「最高の家族」でした。


去年・・・否、ここ数年観た作品の中で、一番羨ましくなるぐらい素敵な家族を描いていましたよ。


父親と娘には血の繋がりが無いという、実は結構重いはずの境遇なのに、みんな笑顔。
小池栄子さんが演じた奥さんをはじめ、3人の子どもたちが明るくて、父親を家族のリーダーとして中心に考えています。


リーダーですが、決して「頂点に君臨する恐怖の対象」ではなく、「笑顔の中心」です。
家族みんなも、完璧な父親像を求めているわけじゃなく、時には情けない部分も含めて、一緒にいたいと思うリーダーなのです。
心底愛されていて、羨ましいなあ。


仕事面では空回りすることが多く、なかなか店長になれずに悩む主人公。
けれど、店長になる・ならないなんて、もうどうでもいいんじゃないだろうか。
年収が1千万円ある人より、こんなに素敵な家族がいる主人公の方が羨ましいですよ。


予告編で共感度をアピールしていますが、むしろ羨ましい度の方が高いです。


※※※


【それだけ食えれば大丈夫だ】


予告編で共感度をアピールしているのは、家族の方では無く、主に仕事面のようですね。


主人公は、頑張って仕事をこなすし、従業員のみんなを大切にしています。
けれど頑張ってはいても、そこまで報われてはいない感じです。
出世もなかなかできません。
店長になれるかもと脳内で盛り上がって、結局は残念→いつもの日常へ。
そういうのって、誰にでもあることです。


主人公は優しいが故に、辛いこと・嫌なことを表にはなかなか出せません。
自分の頭の中で、延々と独り言をいうことで紛らわせています。


脳内会議というのでしょうか。
独り言を延々とつぶやきます。


そういう面は、のん(能年玲奈さん)主演映画『私をくいとめて』を思い出しますね。


●映画『私をくいとめて』を観た感想〜のん(能年玲奈さん)以外で、「怒」の感情で評価される若手女優さんを私は知りません。共感できる「怒」の演技に注目してください
http://kanzaki.sub.jp/archives/004752.html


映画『私をくいとめて』本予告


自分の頭の中の独り言って"私小説"みたいなもので、自分の感情をそのまま伝えることができます。
「孤独のグルメ」みたいに良い方向に使えば味になります。


今回の映画は、主人公を安田顕さん(onちゃんの中の人)が演じています。
さすが、こういうコメディなタッチはお得意なので、流暢に脳内会議の台詞をしゃべります。


主人公は一般社会人・スーパーの副店長としての立場のある人ですので、「社会一般常識内」での荒波を語ります。
特殊な環境ではなく、ごく普通の人の脳内会議だからいいのですよね。
いろんな事の板挟みの中で感じることって、確かに共感できますよ。


他人のグチは、聞いている方が辛くなるもの。
けれどこの映画は基本、コメディなので全く問題ありません。
むしろ、「私の事を映画化したのか?」と思えてしまう。


そんな主人公が唯一、脳内ではなく、本音(グチ)を言える場所が古い食堂です。
いつもお客は主人公ひとり。
カツカレーを食べながら、不愛想で殆ど喋らないおばちゃん相手に語ります。


居酒屋でお酒を飲んでグチを言うのではなく、食堂でカツカレーっていうのがいいですねえ。
このおばちゃん、そのグチに対して何か助言するでもない。
ただ聞くだけ。
元気がなくても、しっかりカツカレーを食べている姿を見て、
「それだけ食えれば大丈夫だ」
と言ってくれます。
なんか、どんな助言よりもありがたいですねえ。


この主人公、おばちゃんの云う通り、案外タフです。
本人は、何も出来ないと思っているけれど、この人を味方につけておけば間違いないと感じさせます。
逃げないんですよね。
辛い状況に置かれても、相手を最優先で考え、その中でどう自分が立ち振る舞えばいいかを悩みながらも行動します。
本当に器が大きいですよ。
こういう人を尊敬します。


※※※


【3人の女優が素晴らしい】


後半、沖縄にて、娘2人とタクシーに乗ったシーンが印象的でした。
実は運転手は、娘2人の実の父親。
主人公も、運転手も、娘も、誰一人ストレートに物事を言わない。
その中で、主人公が「お前の娘はこんなに大きくなったんだぞ」と遠回しに伝えてあげる優しさ。
普通なら、ぶん殴ってもいいぐらいなのに器が大きいです。


そして、長女役の岡田結実さんの、実の父親に気づいた時の表情や、タクシーを降りてから振り返る表情が良かったのですよ。
育ての父親の良い部分を引き継いで育ったんだろうなあと、このシーンだけで理解できる素晴らしいものでした。
岡田結実さんは、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』での演技も良かったです。
バラエティーより女優業の方が合っていると思いました。

-----

小池栄子さんは、本当に安定していますね。
バラエティー番組だと、「小池栄子にふれば、なんとかしてくれる」的なところがあります。
それぐらい、誰もが認める機転の利く人ですよね。
昨日の紅白歌合戦でも、大泉洋さんとのやりとりとか、求められているモノをちゃんと出せるのが凄いです。
そういう良さをこの映画の中で、奥さんという形で存分に出していました。
自分がリーダーになっても良いところ、旦那をたてて、家族をうまく回転させられる良い奥さんです。
小池栄子さんだと、その役柄に説得力がありますね。

-----

ファーストサマーウイカさん(31歳)は、劇中だと20代前半かと思うようなルックスで驚きました。
普段のバラエティーで登場する姿とまったく違います。
ウイカさんと言われても別人に見えます。
てっきり、新人俳優さんかと思いました。
この方は、ものすごく俳優という仕事に向いていると思いました。
きっと、濱田マリさんみたいに、いろんな作品に起用されるんじゃないかなあ。
実際、若い頃は関西の劇団で活動していたそうなんですね。
そりゃあ、うまいはずです。


このお三方、バラエティーでも活躍しているのが共通していますね。
しかも、機転が利く方々。
今年も活躍が楽しみですね。

Posted by kanzaki at 2022年01月01日 21:14