昔と違って、どこの家庭でも、それなりのスペックのパソコンが置いてありますね。
全く今まで触った事の無い人の方が、電気屋の店員と話し合って、値段の高いオールインワンのA4ノートを買っているように見受けられます。
年配の人だと、特にその傾向が顕著ですよ。私の回りでは。
パソコンは家電と呼ぶには複雑な感もあり、そういう方達から、
「神崎さん。ちょっと、インターネットに接続できるようにしてよ」
「神崎さん。ちよっと、年賀状にデジカメで撮影した写真を印刷してよ」
等の依頼を承ることもしばしば。
最初からパソコンに入っているソフトの使い方を教えて欲しいという依頼が殆どなので、それほど面倒なリクエストも無く、教えるほうも楽です。
これが、学生となると、
「神崎さん。ちょっと、winnyに接続できるようにしてよ」
「神崎さん。ちょっと、プレステのエミュレーターが動くようにしてよ」
「神崎さん。ちょっと、マトリックスのDVDをDVD-Rにコピーしてよ」
「神崎さん。ちょっと、フォトショップのシリアルナンバーを教えてよ」
等と、京都府警がぷんすかぷんと怒りそうな事ばかり聞いてきます。
残念ですが、私に云われてもお答えできません。知らんし。
上記の学生さん達の質問は論外として、ふと気になった事がありました。
「この方達(初心者)は、パソコンに入っているソフト以外を使った事があるのだろうか?」
どうも聞いていますと、インターネットエクスプローラー、アウトルックエクスプレス、オフィス、筆ぐるめ等の年賀状作成ソフト・・・・・これぐらいしか質問にのぼってこないんですよ。
いや、これだけでも初めてならば十分にボリュームがあるのですが。
そういうビッグネームなソフトはともかく、それらを支援するソフト・・・・例えば、ファイル圧縮解凍ツールとかは使わないのかなあ。
試しに、その方達のパソコンの中を見ますと、それらしいものは見当たりませんね。
せいぜい、買った後から追加するものと云えば、デジカメからデータを取り込むためのドライバとか、デジカメにオマケで附属していた画像閲覧・編集ソフト、カラープリンタのドライバ程度でしょうか。
世の中には、パソコンに最初から入っていたソフトより便利・高機能なソフトが有償・無償を問わずにたくさん存在します。
ADSLの常時接続が当たり前になってきた時代ですから、じっくりと探し出す事もできます。
いずれ、その方達もそういう事が分かってくるのかもしれませんね。
現在、子供が家庭でパソコンを使う割合は8割にまで行きました。
しかし、パソコン用のソフトを購入したことのある人は、僅か2割だそうです(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会 調べ)。
その親子さんが子供にソフトを買い与えた割合でも4割だそうで、しかもその多くはゲームソフトという結果です。
まあ、子供へのアンケートですから、こういう形になったのも当然かもしれませんね。
けれど、大人でもそういう傾向があるんじゃないでしょうか。
ちなみにあなたは、パソコンのソフトを購入した事がありますか?
そういや自分自身、フリーウェアの良質なものはたくさん使うけれど、わざわざ買ってまでという事はあまりありません。
最近だと、TMPGEnc DVD Authorぐらいです。
あれは良かった。
フリーウェアの方がたくさんの人が利用するので、それを使ってみた感想や不具合等のデータが、たくさん作者へフィードバックされます。
フリーウェアの殆どがネットでの配信なので、不具合への対応版とか新機能追加版とか、次々と新バージョンを公開してくれますよね(ここが、パッケージ版より利点のある箇所)。
そんな事もあり、ますます利用者が増えてきます。
プリインストールもある意味、今回のアンケートに重要な影響を与えていると思います。
最初からたくさんのソフトが、それこそてんこ盛りで詰め込まれています。
お陰でユーザーも、それほど後で、ソフトの追加購入をしなくて済みます。
しかしこれは、ある意味、メーカー側にとっても嬉しいこと。
下手にいろんなソフトをインストールされて不具合が起き、メーカーのサポートセンターに無茶難題な問合せをされるのは困るというモノ。
しかも初心者だと、専門用語が分りませんから、かなり遠まわしな表現方法で質問をしてくるので、何がなんだか分かりません。
その点、プリインストールソフトは違います。
ちゃんと動作確認をとり、実際に作成したソフトメーカーと連携を上手くやっているので、いろんな問合せにも対応できるというものです。
そういうソフトをたくさん入れて、あまり余計なソフトを使わせないのは、メーカー側の意図したことだと思います。
けれどこんな事ばかりやっているから、後からソフトを追加で買う人が減っていき、それはつまり、ソフトウェア業界の衰退へと繋がります。
それが悪循環となり、誰も有償のソフトを買う人がいなくなるかもしれません。
勿論、値段の高いソフトにはそれなりの価値があります。
しかし、その機能の全てを使いこなせる人はそれほどいません。
その便利な機能の一部だけを抜き出し、特化したものが、フリーウェアには多いですよね。
その程度のソフトで十分といえば十分です。普段は。
以前、日本人は、ソフトウェアを動かす器にはお金を掛けるけれど、ソフトウェア、情報等の形の無いものには「対価」を支払いたくないという傾向があると書きました。
この日本人特有の考え故に、ソフトウェア業界の衰退は激しいものがあります。
ソフトウェア業界では、ブリインストールされたソフトが勝ち組みと云えましょう。
また、オンラインでソフトをダウンロードするものより、パッケージ版で販売されているものは、特にヤバイ。
わざわざ電気屋へ行って、あの巨大な箱を買う人ってあまりいないだろうなあ。
なんで、パソコンのソフトって、あんな巨大な紙の箱に入っているんでしょうね。
取扱説明書のページ数が多いのならば、オンラインマニュアルとかにすればいいし、メディアも1,2枚ならば、音楽CDやビデオDVDのようなコンパクトなケースに入れて欲しいです。
パソコンは、何でも出来る便利な箱です。
それは、豊富な便利で価値あるソフトがあるから出来ること。
別に、ソフトウェア会社へお金を貢げと云っている訳じゃありませんよ。
フリーウェアでいいから、いろんなソフトを試して欲しいんです。
「アダム・スミスの見えざる手」というものがあります。
これは、市場原理に任せていれば、自然と適正な状態に落ち着くという法則の事です。
パソコンが高性能化して、インターネットが普及した今、ソフトウェアの立場が陥っているのは、見えざる手によるものなのかもしれません。
商売としてやっているメーカーは衰退しているけれど、個人の作者が発信するソフトは増え続けている訳でして、ホームページと同じで、この分野は「草の根」的なものとして発展していくのかもしれませんね。
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