2009年12月25日

外山滋比古さんの「思考の整理学」〜東大・京大で一番読まれた本【1・つんどく法】

世の中は不況と言えども、さすがに今週は忙しかったですよ。
理由は、仕事の依頼量が増えたからというよりも、人員削減によって一人ひとりの労働負担が増えたからだと思います。

しかし仕事に埋没して本を読まないような生活だけはしたくありません。
この前、外山 滋比古(とやま しげひこ)さんが書かれた「思考の整理学(筑摩書房)」を読みましたので、ご紹介いたします。

この本が出版されたのは1986年という、非常に大昔。
しかし21世紀の今、再びブレイクしています。


●外山滋比古さんの「思考の整理学」、100万部突破 - BIGLOBEニュース
http://news.biglobe.ne.jp/entertainment/308/jc_090903_3085073023.html

お茶の水女子大学名誉教授の外山滋比古さんが書いた学術エッセイ「思考の整理学」(筑摩書房)が、2009年9月3日までに、累計発行部数100万部を突破したことがわかった。同書が発売されたのは1986年だが、2007年には盛岡市の書店員が書いた推薦文がきっかけで、再ブレイク。09年からは書籍の帯に、「東大・京大で一番読まれた本」というキャッチコピーを入れて話題となっていた。同書はタイトル通り、ものごとを考え、整理することのエッセンスを指南する内容となっている。


●外山滋比古 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E5%B1%B1%E6%BB%8B%E6%AF%94%E5%8F%A4

外山 滋比古(とやま しげひこ、1923年 - )は、日本の英文学者、言語学者、評論家、エッセイスト。文学博士。全日本家庭教育研究会元総裁。専門の英文学をはじめ、言語学、修辞学、教育論、意味論、ジャーナリズム論など広範な分野を研究し多数の評論を発表した。長年、幼児・子供に対する“ことば”による情操教育・知育の重要性を提唱してきた。


「東大・京大で一番読まれた本」なんて書かれれば、とても気になりますよね。
例のごとく、図書館で借りて読んでみました。

最初の方で、「一日三食は駄目だ。二食にしなさい」みたいな事が書かれておリ、「私にはちょっとこういう考えの人の本は駄目かも・・・」と思ったのですが、文章自体が平易でテンポが良いので、なんだかんだで読み切りました。

この本に書かれている幾つかの事柄を掻い摘んでご紹介いたします。


●「つんどく法」

つんどく法とは、集中読書、集中記憶によって、短期間、ある問題に関して博覧強記(はくらんきょうき・広く書物を読み、それらを非常によく記憶していること。知識が豊富なこと)の人間になる方法です。

なにか調べようと思ったら、とりあえず参考になるものを片っ端から集めましょう。
テーマに関連のある参考文献を集められるだけ集め、「これだけしかない」というところまで資料が集まったら、これを机の脇に積み上げます。

そして、そんなに一字一句丁寧に読んだり、メモをしたりなんか余りせず、とにかく片っぱしから読んでいきましょう。
このサイトのタイトルでもある「ナナメ読み」ですね。

ノートに書いていたりすると、それに気をとられ、内容の理解がお留守になりやすい。
どうせ読み返す事なんて殆ど無いのだから、書くことで話の流れを見失わないようにしましょう。
興味のある部分は、メモやノートをとらなくても、不思議と記憶しているものです。
自分の頭を少しは信用しましょう。

もし、自分の頭を信用できないのならば、私はデジカメの使用をお勧めします。
気になるページを読んだら、とりあえずデジカメのマクロ機能で撮影してしまう(画像のクオリティは1Mで十分)。
ノートやメモをとるのと違い、本人が記憶していようがしていまいが、とりあえずそのページを一瞬にして丸ごとコピーしてしまいますから、読んでいくテンポをあまり崩さずにすみます。
今回のこの記事も、本は既に図書館へ返却したので、細部についてはデジカメで撮影したものを参照しています。

集中して読んだり記憶したら、さっさと論文や原稿を書き上げてしまい、安心して忘れてしまいましょう。
いつまでも拘っていては、次のつんどく勉強の邪魔になるからです。

それに、忘れようと思っても、幾つかは記憶に残り続けるものです。
忘れてもよいのに忘れなかった知識の積み重ねが、一人ひとりの知的個性として形成されるのです。

関連文献をまとめて一気に読むメリットは、「互いに重複しているところが見つかる」事です。
10冊ぐらいの関連文献を一冊一冊読んでいくと、三冊目ぐらいから、前に読んだ本と重複する内容が出てくることに気づきます。
そうすると、これが常識化した事柄、あるいは定説となっているらしい事に気づきます。
前に読んだ本と逆の考えや知識があらわれたら、その部分は諸説が分かれているのだと気づきます。

同じ記事に関して、複数の新聞で読み比べるのに似た感覚ですね。
同じ事柄でも新聞社が違えば、それぞれ解釈が違うものです。

つんどく法は、はじめの一冊が最も時間を食います。
だから、まず標準的なものから読むようにするといい。
同じ問題についての本を沢山読めば、後になるほど、読まなくても分かる部分が多くなります。
最初の一冊に三日を費やしたとしても、十日で三十日という計算にはならないのです。
関連書物を一気に読み上げるのは、このように非常に効率が良いのです。

そういや私自身、図書館では主にビジネス書を読んでおり、もう何十冊にもなるのですが、以前に比べて一冊あたりの読書に費やす時間は確かに短くなっていますね。
この「思考の整理学」は200ページ程度ですから、30分程度で読めました。
似たような事柄を以前にも別の書物で読んでいたからだと思います。

読み終えたら、さっさとまとめの文章を書かなくてはいけません。
時間が経つにつれ、読んだ内容をどんどん忘れてしまうからです。
本当に大切な部分は忘れませんが、細部となると時間とともに忘れてしまいますしね。

頭の中で渦を巻いている知識や事実をまとめるのは大変です。
しかし、忘れてしまいますから、さっさとやってしまう。
分からなくなったら、書籍の該当する部分を再び開けばいい。
一度読んでいるから、なんとなくどこに書いてあったかを検討をつけやすいので、すぐに見つかりますし。

あまりメモやノートをとらないで読み、それをまとめる事の繰り返しが、人の記憶力や学習能力を高めるのかもしれません。
筆者は、「つんどく法」はなまけもののように見えるが、これは古典的であると同時に、現代的でもあると語っています。
そして、我々が特に意識しないで勉強しているのは、このつんどく法の変形によることが多いとの事。

そういや私がこうして自分のサイトに、この本の気になった部分をまとめているのは、ある意味、勉強・学習になっているように思います。
読んで、自分なりに噛み砕いて考え、そして書いているのですから、これは勉強そのものですよね。


次回へ続きます。


●外山滋比古さんの「思考の整理学」〜東大・京大で一番読まれた本【1・つんどく法】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001986.html

●外山滋比古さんの「思考の整理学」〜東大・京大で一番読まれた本【2・すてる】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001987.html

●外山滋比古さんの「思考の整理学」〜東大・京大で一番読まれた本【3・とにかく書いてみる】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001989.html

●外山滋比古さんの「思考の整理学」〜東大・京大で一番読まれた本【4・コンピューター】
http://kanzaki.sub.jp/archives/001991.html

Posted by kanzaki at 2009年12月25日 20:01