2013年01月03日

マルクス・アウレリウスの「自省録」〜リーダーに求められるストイックな精神

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(「マルクス・アウレリウスの死」ウージェーヌ・ドラクロワ (1798-1863))


新しい年がはじまりました。
日本は政権が変わり、新しいリーダー(以前のリーダー?)が日本を引っ張っていこうとしています。


政治や経営など、人の上に立つ人には、どんな哲学が必要でしょうか?
その答えとして、本田コンサルタント事務所の本田さんが、「自省録」を解説していました。


「自省録」は、第16代ローマ皇帝マルクス・アウレリウス・アントニヌスが書いたもの。
大勢の人間を率いる者としての「帝王学」を修得するため参考となる最高の哲学書です。


●マルクス・アウレリウス・アントニヌス - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%AC%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%8B%E3%83%8C%E3%82%B9

●自省録 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E7%9C%81%E9%8C%B2

●Amazon.co.jp: 自省録 (岩波文庫): マルクスアウレーリウス, 神谷 美恵子: 本
http://amazon.jp/dp/4003361016/
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【帝王学とは?】


マルクスは紀元前2世紀のローマ皇帝です。
かつてプラトンが理想とした「哲人政治」を体現した史上ただ一人の君主として、多くの史家や思想家から賞賛を受けています。
また、彼は死後も長きに渡って国民の尊敬と崇拝を集めました。


人生の大半を戦地で過ごし、のんびり書斎で思索する時間なんてありません。
「自省録」は、マルクスが戦地にて折々、自分自身に語りかけた備忘録のようなものです。
それにしては不思議と、剣の音も血の匂いも全く感じられない内容です。
そこが、帝王学を学ぶのにオススメする理由でもあります。


「帝王学」とは、帝王たる者に相応しい人徳、識見、行動力を体得すること。
ゆるぎない世界観、人間観、使命感、人間愛、克己心(こっきしん/自分の欲望をおさえる心。自制心)・・・つまり、長くリーダーたる相応しい人間としての総合的な力と言えますね。
マルクスの「自省録」には、これらの条件が全て揃っているのです。


「帝王学」は、単に戦いで勝てば良いという「覇王の学」ではありません。
それだけなら、強大な武力、兵力、資金力があればいい。
覇王の代表選手は、織田信長です。
彼は、夢半ばにして家臣に殺されています。



【マルクスの自省】


マルクスは「自省録」の冒頭で、自分自身の人間形成を直接・間接に促してくれた人々への追憶と感謝から始めています。
みずから自省のためのスローガンです。


「父からは温和であることと、熟慮の末いったん決断したことはゆるぎなく守り通すこと。
母からは神を畏れること、金持ちの暮らしとかけはなれた簡素な生活をすること。
アポロニウスからは独立心をもつことと絶対に僥倖(ぎょうこう/偶然に得る幸運)をたのまぬこと。
プラトン学派のアレクサンドロスからは『私は暇がない』ということをしげしげと、必要もないのに人に言ったり手紙に書いたりせぬこと。」


こうした試みは、自分の精神ルーツを知るうえでとても有益です。
経営の勉強会などで、一番参考になった箇所だと多くの方が言っています。



【自省録からの引用】


「自省録」の他の部分も引用してみましょう。
文中、「君」という言葉が出てきますが、すべてマルクス自身を指しているそうです。
青年のきまじめさと克己を求める心、他者への寛容な精神が感じ取れます。


「いったい何に対して君は不満を抱いているのか。
人間の悪に対してか。
次の結論を思いめぐらすがよい。
理性的動物は相互のために生まれたこと、互いに忍耐し合うのは正義の一部であること、人は心ならずも罪を犯してしまうことを」


「すべて起こってくることは、そもそもの初めから『全体』の中で君に定められ君の運命の中に織り込まれたことなのだ。
要するに人生は短い。
正しい条理と正義をもって現在を利用しなくてはならない。
くつろぎの時にまじめであれ」


「明けがたに起きにくいときは、次の思いを念頭に用意しておくがよい。
『人間のつとめを果たすために私は起きるのだ』。
自分がそのために生まれ、そのためにこの世にきた役目をしに行くのを、まだぶつぶついっているのか」


「君が自分の義務を果たすにあたって、寒かろうと暑かろうと意に介すな。
また眠かろうと眠りが足りていようと、人から悪くいわれようと賞められようと、まさに死に瀕していようとほかのことをしていようと、かまうな。
『現在やっていることをよくやること』で足りるのである」


「ただ次の一事に楽しみと安らぎとを見出だせ。
それは常に神を思いつつ公益的な行為から公益的な行為へと移り行くこと」


「最もよい復讐の方法は、自分まで相手と同じ行為をしないことだ」



【帝王学を体現した生き方】


マルクスはローマ皇帝でありながら質実簡素な生活を送りました。
それは幼少期の教育と、哲学に対する傾倒からです。


彼が学んだのは、古代ギリシャのストア哲学です。
その中でも彼は特に、倫理学に興味を示しました。
つまり、人間がいかに生きるべきかの追求です。
ストア哲学的という意味で「ストイック」という言葉が今なお生き続けるほど、それは自分に厳しい教えです。


マルクスは平和愛好家でもありました。
戦争は人間の不名誉であると考えていました。
国を守るべく戦地へ赴くときも、国庫が乏しければ自分の財産を競売にかけ戦費を調達しました。


また、アテナイへ出かけた時は、当地の学校に哲学講座への奨学金を出したり、女子教育のための施設を作りました。


富は社会へ還元し、自らは質素な生活を心がけ、哲学の徒として自己探求を深めました。
帝王学とは、まさにこういうこと。
学者の机上の空論とは違うのです。


※※※


現実に、こういう人がいたのです。
驚きと感動を覚えます。
似たような人物といえば、映画「レ・ミゼラブル」の主人公ジャン・バルジャン、そして彼の生き方に影響を与えた司教を思い浮かべます。


●映画「レ・ミゼラブル」の感想(ネタバレあり)〜民衆の力というものを映像化した傑作
http://kanzaki.sub.jp/archives/002805.html


(Les Misérables - Clip: "Who Am I" - YouTube)


マルクスは我々に、「この世にきた役目を果たしたまえ」と語りかけてくれます。
私はここ数年、霧の中をただ黙々と歩いていたような気持ちでした。
ようやく、はっと我に返りましたよ。
人生も折り返し地点の私。
この世にきた役目に着目し、進みたいと思います。


三が日もおしまい。
いよいよ明日から仕事始めですね。
共に、人の役に立てるような生き方をして行きましょう。



●関連記事: 「自省録」〜君の仕事は「善き人間であること」。もっともよい復讐の方法は、自分まで同じような行為をしないことだ
http://kanzaki.sub.jp/archives/002663.html

Posted by kanzaki at 2013年01月03日 20:44