2010年09月13日

新潟の地で「自殺予防」について考える【2】〜働き盛りの男性の自殺要因「多重債務」を解決する方法

前回の続きです。

●神崎のナナメ読み: 新潟の地で「自殺予防」について考える【1】〜社会全体のセーフティネット構築
http://kanzaki.sub.jp/archives/002160.html

神ナナが、悩みを持つ誰かの為に、少しでも役に立てればと思います。
ネットの世界なんて希薄なものですが、その向こう側で心配をしている人間がいることをちょっこし思っていただければと。

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※「1:1=Sisters」 photo by kanzaki

※※※


たった一人のあなた。
たった一つの命。
自殺を防ぐために私達ができることは、家族や友達、同僚など周りの人達に関心を持ち、寄り添うことから始まります。

あらゆる悩みの声が寄せられる「新潟いのちの電話」。
24時間、電話が鳴り響きます。


●新潟県:新潟いのちの電話
http://www.pref.niigata.lg.jp/fukushihoken/1225742483644.html

いのちの電話とは、不安や孤独に悩んでいる人々と、電話を通じて心を通わせ、相談相手として励まし合おうというボランティア運動です。
社会福祉法人新潟いのちの電話では、ボランティアの相談員が年中無休で、 24時間の電話相談に応じています。

※いのちの電話の特色
・24時間いつでもかけられます。
・名前を言う必要はありません。
・秘密は守ります。
・宗教や思想の自由を尊重します。
・相談員は所定の研修を修了した人たちです。

※お問い合せ先
新 潟 025(288)4343
長 岡 0258(39)4343
上 越 025(522)4343
村 上 0254(53)4343
新発田 0254(20)4343 (H20.10.30から利用開始)
自殺予防いのちの電話フリーダイヤル
毎月10日(午前8:00〜翌朝8:00)24時間無料でご利用できます。
フリーダイヤル 0120(738)556

●日本いのちの電話連盟
http://www.find-j.jp/index.html

※全国いのちの電話一覧
http://www.find-j.jp/zenkoku.html#


「新潟いのちの電話」に寄せられる相談は一日60件。
そのうち1割が自殺の相談です。
どんな相談でも、まず相手の苦しみを聞いてあげるのが大切だと理事長の眞壁伍郎さんは言います。


●眞壁さんのコメント:
一つの思いに囚われると、そのことが四六時中 頭の中にあります。
その思いを誰かに話して「ああそうだよね」と言われた時に、自分にとりついたものから、ちょっと距離が置ける。
こういう風に理解してくれる人がいるのかと、それは大変救いになると思う。

「いのちの電話」の会報誌「聴く」。
30代の男性から掛かってきた電話の様子が紹介されています。

●30代男性の相談電話:
2、3ヶ月前からどうも身体に力が入らず、何をする気力も無くなった。
夜も眠れず食欲もない。
仕事の能力はガタ落ち。
子供と遊ぼうと思っても笑顔が出ない。
かえって苦痛だ。
どうしてだろう。
自分の頑張りが足りないのだろうか。
妻は「私だって働いている。疲れても子育てと家事を頑張っている。あなたは気合いが足りないのよ。そんな話しは聞きたくない」と言って理解してくれない。
自分はダメ人間だ。
生きている価値が無いのではないか。
先月、遺書まで書いたが、どうにか思いとどまった。
この辛い思いを誰かに聞いてもらいたかった。


●眞壁さんのコメント:
よく、思い悩んでいる人に私達が言うのは「元気を出せ」という言葉です。
「元気を出せ」というのは本人にとってキツイのです。
自分自身に朝から晩まで「元気を出せ」と言い続けている訳だから。
良寛(江戸時代後期の曹洞宗の僧侶。現在の新潟県三島郡出雲崎町出身)という人は、自分の父親と弟を自殺で亡くしています。
その良寛が、何を自分の生涯のモットーにしたかと言いますと、「愛語(あいご)」です。
愛語・・・愛の言葉。
私達は愛のある言葉をお互い掛けあおうと良寛は言っています。
「お元気ですか?」とか「色々あるけれど、一緒に生きていきましょうよ」と声を掛け合うというのは、私が今、一番大事にしている事です。


「元気をだせ」ではなく、相手がどんな思いでいるのか。
まずは寄り添い、話しを聞くことが、自殺予防の一歩となるのです。

近年、特に問題視されているのは、「働き盛りの男性の自殺」です。


●自殺問題に取り組んでいる新潟大学医学部の後藤雅博教授のコメント:
失業率と自殺率というのは平行していると、以前から言われています。
仕事を失ったことを家族に内緒にしているとか、生真面目な責任感が強いという方に自殺の危険性が強くなってしまう。


下記は、40代から50代の男性の年齢別死因順位です(H21年の調べ)。

40〜44歳:1位 自殺(1807人)、2位 悪性新生物(癌など)、3位 心疾患
45〜49歳:1位 悪性新生物、2位 自殺(1948人)、3位 心疾患
50〜54歳:1位 悪性新生物、2位 心疾患、3位 自殺(2179人)
55〜59歳:1位 悪性新生物、2位 心疾患、3位 自殺(2646人)

40代前半の死因は、一位が自殺。
それ以降、年齢が上がるにつれて順位は下がっていますが、自殺者数は逆に増えています。

働き盛りの男性の自殺要因で多いのは、経済的問題です。
中でも、「多重債務」に苦しんでいるという人が多いと言われています。
実は専門家に言わせれば、その多重債務こそ、必ず解決できる問題なのです。

新潟市に事務所をかまえる弁護士の平 哲也さん。
これまで、多重債務で悩む数多くの人を法の下で救ってきました。
番組スタッフは、多重債務の解決方法について聞きました。


●平弁護士のコメント:
自己破産という手続きと、個人再生あるいは任意整理があります。
自己破産は一度、自分の債権債務をリセットする制度(借金を一度、無しにする制度)。
個人再生や任意整理は、無理のない範囲で借金を返していってもらい解決する制度(全部ではないけれど、可能な範囲で払ってもらい解決する制度。


平弁護士のもとには、多重債務で悩む人達が連日、相談に来ています。
中には大晦日、ストーブに使う灯油を買うお金が無く、生きるか死ぬかまで追い詰められた人もいました。
その人は、最後の頼みと思い、市役所の生活保護課から教えられた法テラス新潟に相談しました。
法テラスで平弁護士を紹介してもらい、現在は就職活動と共に任意整理の仕方を協議中です。

法テラスとは、様々な法律トラブルについて法制度の紹介や弁護士会・司法書士会など適切な機関を案内してくれる場所です。
神ナナでも以前、取り上げたことがあります。


●神崎のナナメ読み: 法テラス(日本司法支援センター)とは? 〜業務開始から1年経過(2007年10月03日の記事)
http://kanzaki.sub.jp/archives/001543.html

●法テラス(日本司法支援センター)公式サイト
http://www.houterasu.or.jp/index.html


お金が無いという状態な訳ですから、そこでまた弁護士の先生へ相談するとお金がかかるんじゃないかと思う人もいるかもしれません。
しかし、新潟県弁護士会では、多重債務の相談は、初回を無料でやっています(他県もそうなんじゃないでしょうかね)。
また、各弁護士事務所でも、最初の相談は無料という所が多いとのこと。
その後、実際に依頼する場合も、収入などの一定の要件を満たせば、法テラスで弁護士費用を立て替えてもらえる制度もあります。
だから、一度にまとまったお金が用意できなくても大丈夫なのです。
多重債務で悩んでいる人は、こういった機関に相談する方法があります。


●平弁護士のコメント:
必ず解決できますから。
多重債務で思いつめすぎて、自殺とかそういうケースもありますが、そうなる前にまずは相談して欲しいと思います。
必ず解決できますから。


今日はここまで。

多重債務者を救ってくれる弁護士の先生たち。
けれど中には、債務整理や払いすぎた利息を取り戻す「過払い金返還請求」を巡り、弁護士らから高額な手数料を請求される「二次被害」も起きています。
多重債務の過払い金返還や債務減額で、なんと年間1兆円を超すお金が動いているのです。
これはある意味、大きなマーケットになっているのです。
苦しんでいる人達を食い物にしている人も現実にいるのです。
ですから、県の弁護士会や法テラスを通じて、あなたの人生を必ず救ってくれる先生を紹介してもらった方が良いと思います。


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●新潟の地で「自殺予防」について考える【1】〜社会全体のセーフティネット構築
http://kanzaki.sub.jp/archives/002160.html

● 新潟の地で「自殺予防」について考える【2】〜働き盛りの男性の自殺要因「多重債務」を解決する方法
http://kanzaki.sub.jp/archives/002161.html

●新潟の地で「自殺予防」について考える【3】〜「愛」の反対は「無関心」
http://kanzaki.sub.jp/archives/002162.html

●新潟の地で「自殺予防」について考える【4】〜「名ばかり管理職」の待遇改善
http://kanzaki.sub.jp/archives/002163.html

Posted by kanzaki at 2010年09月13日 22:05