2010年09月16日

新潟の地で「自殺予防」について考える【4】〜「名ばかり管理職」の待遇改善

前回まで、自殺をとりまく社会環境について書きました。


●前回の記事: 新潟の地で「自殺予防」について考える【3】〜「愛」の反対は「無関心」
http://kanzaki.sub.jp/archives/002162.html


今回は私なりの考えを長々と書きます。
掲示板やSNSのようなものですと、長文は嫌われるものです(そもそも文字制限をオーバーしてしまう)。
しかし、このサイトは自分でサーバーを借りて、そこにプログラムを改造したブログツールをアップして運営しております。
こういう運営の仕方ですと、自分の家や庭みたいなものですから、延々と文章がかけるのがメリットです。

私の考えの結論を最初に書いておきます。


●企業内に多く見受けられる「名ばかり管理職」の待遇改善。それが働き盛りの男性社員の自殺者数を減らす解決道である。

※※※※


今回の自殺予防の番組を見て、「無縁社会」というキーワードを思い起こしました。

*NHKスペシャル無縁社会(全6回)

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【1・行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002015.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【2・身元不明の死】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002016.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【3・薄れる家族とのつながり】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002017.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【4・会社とのつながりを失った人々】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002018.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【5・"生涯未婚"の急増】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002019.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【6・希望の光】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002020.html

(放送内容)
自殺率が先進国の中でワースト2位の日本。
NHKが全国の自治体に調査したところ、ここ数年「身元不明の自殺と見られる死者」や「行き倒れ死」など国の統計上ではカテゴライズされない「新たな死」が急増していることがわかってきた。
なぜ誰にも知られず、引き取り手もないまま亡くなっていく人が増えているのか。
「新たな死」の軌跡を丹念にたどっていくと、日本が急速に「無縁社会」ともいえる絆を失ってしまった社会に変わっている実態が浮き彫りになってきた。
「無縁社会」はかつて日本社会を紡いできた「地縁」「血縁」といった地域や家族・親類との絆を失っていったのに加え、終身雇用が壊れ、会社との絆であった「社縁」までが失われたことによって生み出されていた。
また、取材を進めるうちに社会との接点をなくした人々向けに、死後の身辺整理や埋葬などを専門に請け負う「特殊清掃業」やNPO法人がここ2〜3年で急増。
無縁死に対して今や自治体が対応することも難しい中、自治体の依頼や将来の無縁死を恐れる多くの人からの生前予約などで需要が高まっていることもわかって来た。
日本人がある意味選択し、そして構造改革の結果生み出されてしまった「無縁社会」。
番組では「新たな死」が増えている事態を直視し、何よりも大切な「いのち」が軽んじられている私たちの国、そして社会のあり方を問い直す。

NHKでは「無縁社会」を定期的に特番やニュース等で伝えています。
私が見た範囲内ですが、我々にこういった現実を脳裏へ強烈に植えつけてはいるものの、「じゃあ、それに対して具体的にどう対処すればいいのか」というものは見えてきませんでした。
それは仕方が無いのかもしれません。
「麻薬をやめましょう」とか「交通違反をやめましょう」というようなものでしたら、それに違反すると犯罪という形で処罰されます。
しかし、「隣近所の人達と仲良くしましょう」とか、「いろんな人達と交流をして、豊かな人間関係を築きましょう」というものは、それが出来ないからと言って処罰されるわけではありませんものね。
その人を取り巻く様々な事情で、対人関係のあり方も変わってきますし。

「働き盛りの男性の自殺」が目立つようになった昨今、これは何も、その人個人だけの理由ではないと考えます。
現在、企業の労務体制や賃金体系が、とてもじゃないですが豊かな生活を行うための制度ではありません。
例えば、成果報酬型の賃金体系。
各従業員の仕事に対する成果にあわせて賃金が変化する制度です。
これは、社員のヤル気を促すために多くの企業で採用されたのではなく、そういった新たな制度を作ることで、全体の人件費を下げる為です。
欧米で採用された制度を都合の良いように解釈し、改悪して取り入れる。
派遣社員に対する制度も、企業側の都合の良いように改悪されている為、契約が切れた派遣社員が路頭に迷う事も少なくありません。
こういった事ばかりが横行されていれば、そりゃあ従業員達の士気があがる訳がありません。

会社の収入が少なければ、支出を抑えるしか無い。
支出で一番の負担は人件費。
そこで、リストラが実施されます。
会社はそれによって救われるかもしれませんが、リストラされた人には救済措置はありません。
失業したらハローワークにて申請すれば、一時的なお金は手に入るものの、長い将来の人生生計までをフォローはしてくれません。
私の周りでは、失業してから求職活動によって再就職できるのに、一年以上かかっている人はザラです。
それだって、満足のいく結果で職についたわけではありません。

転職は、現在働いている会社に在籍している間に転職活動をするのがセオリー。
しかし会社側の都合によって、いきなり放り捨てられるように首を切られた人には、そんな悠長な時間はありません。
特に住み込みで働いていた人達は、新しい仕事が見つからないという事は即、生死に関わることです。

最近、気のせいでしょうか。
上記のような、リストラや派遣問題のような弱い立場の人について、メディアの報じ方が少なくなっているように思います。
今は為替と政治のニュースばかりですよね。

そして、選挙の投票率が高かったり、モノの購買率が高いからでしょうか、年配の人を批判するような話題がありません。
むしろ、弱者的な扱いです。
その反面、「若者の◯◯離れ」という言葉を使い、世の中が停滞しているのは若者のせいだという感じに扱われているように思うのです。
これからの日本を背負う人達を仮想の敵として取り扱っているように感じるのは、私だけの勝手な見解でしょうか?
「いやいや。私はちゃんと若者を応援する記事を書いているよ」と言われる方がいるならば、素直に謝ります。
今後も、若い人達を応援してあげてください。
世の中、大きな声を出さないと、流れはなかなか変わりにくいものですから(皮肉ではなく本音)。

人間関係と賃金の少なさ。
社会人になると、この二点で人生にダメージを受ける人はとても多いです。
会社を辞める大きな要因でもありますよね。
勿論、病気等の理由により弱い立場になる人もいますが、まだ病気に関しては色々な保証・保険がある分だけ救いはあります。
けれど、人間関係が希薄だからといって保険が降りるわけでもありませんし、賃金が少ないからと他の人に頼ろうとしても、頼られる側も厳しい生活をしているから、なかなか金銭的なフォローができる訳でもありません。

割と普通に生活しているような人達でも、生活に必要なお金に関して、毎月赤字の家庭はザラにあります。
育児をしながらの共働きはとても大変ですし、大学卒業までにお金も沢山必要です。
しかも、せっかく子供が卒業しても、必ずしも安泰な会社へ入社できるとも限りません。

首都圏に住む方達にも、中には生活が大変と言う人もいるでしょうが、地方は更に大変です。
まず、賃金が圧倒的に少ないですから。
もしこれから、地方で就職する事を考えられている若い方がいましたら、首都圏に本社がある会社の支店で働くことをお勧めします。
本社が地方にある会社と、本社が首都圏にある会社では、賃金体系のベースが全く違います。
圧倒的に首都圏に本社がある会社の方が高いです。
その会社の地方にある支店で働くと、ベースが首都圏の賃金体系な上、更に地方手当も用意されます。
社宅等の福利厚生も充実。
地元で就職するならば、地元に本社がある大きな会社に入りたいと思うかもしれませんが、それはよく注意した方がいいです。
企業名(ブランド)だけで選択してはいけません。
それは、私が一番痛感しております・・・。

会社の人事担当から学生たちへ知らされる情報なんて、ほんの僅かです。
もし、入社したいと思っている企業が上場企業、もしくは大会社に分類される資本金が5億円超(若しくは負債が200億円超)の企業でしたら、EDINETで有価証券報告書、株主総会招集通知、決議通知書を閲覧してみましょう。

●EDINET(誰でも閲覧可能。ユーザー登録もありませんし、無料です)
http://info.edinet-fsa.go.jp/

会社があまり表に出したくない数字も、決まりですから書かなければいけません。
虚偽の数字は罰せられます。
数字だけではなく、文章としてもその会社の現状や今後の方向性が書かれていますから、貴重な参考資料になりますよ。
作成している私が言うのですから、間違いありません。
この日本という場所は、最初に入った会社で成功しないと、よほどスペックの高い人でもない限り、セカンドチャンスが難しいのです。
だから新卒での会社選定は慎重に。

今回のテーマが「自殺の予防」なのに、なんでビジネス関係の話しばかりしているかと言いますと、既に自殺は、個人レベルの問題ではないからです。
今回ご紹介しました自殺予防の番組でも言われている通り、社会のセーフティネットの充実が必要です。
けれど、これは例えれば「病気を治療する病院」のようなものです。
あくまでも最悪な事態に陥った場合の救済措置です。

健康的な肉体、豊かな心を持つことが、病気や怪我の予防になるのはご理解いただけると思います。
これを自殺予防に当てはめると、「自殺を促さないような企業の取り組み」が重要だと思います。
「社会」と言いますと大きすぎて抽象的になる。
具体性を求めるため、「企業」「会社」という単位での取り組みを求めます。
そして、それを強制させるため、法律の制度、厳しい罰則を用意するのです。
会社側の人間からしたら、「従業員の為にそんな事をしたら、会社そのものが無くなってしまうぞ」と言うかもしれませんが、それは詭弁です。
できないような役員こそ不要です。

多くの人が会社勤めであり、そこから賃金をもらって生計をたてています。
また、一日の多くをその会社で過ごすわけですから、人間関係の問題もそこで生まれやすい。

会社は役所ではありませんから、社内規程を一定の基準で満たせば、後は会社のオーナー、役員の裁量でいくらでも改変が可能です。
特に、景気が悪化しているので、各従業員の心にまで対処がしにくい現状です。
メンタルヘルスの相談者等を設置する企業は増えたものの、対応する人の殆どが任命されただけの一般従業員ですから、体裁だけになっているところばかりです。
会社に対するペナルティ・法規制をもうけないと、特に中小・零細企業の従業員の心の問題は解決しないと思います。

それと、もっとも解決してほしいと思っているのは、「名ばかり管理職」の問題です。
多くの企業が、残業時間が長い一般従業員を管理職に昇進させ、僅かばかりの役職代を払う代わりに、残業代を支払っていません。
長時間労働をする人は、それだけ業務に熱心にやっている人ですから、その真面目さ故に、無理してでも長時間労働をこなそうとしています。
それだけ頑張っても売上に反映しなかったりすると、「自分の努力が足りないからだ」と自分を追い詰めます。

残業手当の割増賃金が開始されましたが、管理職には殆ど関係ありません。
一般従業員が長時間労働をして、「労災」と認定されるボーダーラインである60時間を超えないよう、各企業も取り組んではいます。
どうして一生懸命取り組んでいるかというと、残業代として多くのお金を今まで以上に支払わないといけないからであり、万一、従業員が死に至った場合に、企業に様々なペナルティが発生するからです。
やはり、そういった厳しい法規制が無いと、なかなか企業は動かないものです。

しかし、それらはあくまでも一般従業員が対象。
管理職は対象外と気軽に考えている企業が殆どです。
法規制上、確かにその通りなので、会社も管理職の事は二の次になっているのです。
若い管理職もいるでしょうが、多くは30代後半以上の人達。
当然、若い時に管理職になった人でも、いずれは歳をとります。
40歳も過ぎれば、それでなくても肉体的に衰えていきます。
結婚をして子供がいて、マイホームのローンも支払う。
会社の中でも重要な事を任されているし部下もいる。
もう自分ひとりだけの体じゃない。
自分の問題は自分の中で解決しようとする。
しかし、会社も社会も、自己解決できるような環境じゃない。
延々と頭の中で悩みだけが無限ループをする。
そして最後に、最悪の行為に至るのです。

こういう考えになりがちなのが「名ばかり管理職」の人達です。
彼らは管理職とは言っても、「部下を管理する人」ではなく、「仕事を管理する人(担当業務の専門家)」と捉えられているのです。
だから、上や外部からの無茶な要求にも答えないといけないし、基本的に仕事は自分一人で行って、自分で解決しなければならないのです。
昔だったら部下へ任せる仕事も、リストラ等で人も少ないし、厳しい労働条件のせいで若い人が長続きしないので、自分でやらないといけないのです。

悲しいですよね。
真面目にやった人が報われない世の中はおかしすぎます。
一般従業員だけではなく、働き盛りの男性社員に多く見受けられる「名ばかり管理職」の待遇改善を行って欲しいものです。
企業にそれをやらせるには、政治と法律、罰則が必要。
それらを改善できる度胸のある政治家は果たして出現するのでしょうかね。
でも早くしないと、自殺者の数は一向に減らないどころか増えていくことになります。

私の頭の中にある、色々な思いを綴ってみました。
整理しないで書いていますので、どこまで皆さんへ届いているのか分かりませんが、とにかく書かさせていただきました。

私はフリーのカメラマンでもありますが、企業の管理職でもあります。
対極にある二つの事を同時並行して生きている私だからこそ、これらのような思いを書かなければならないと思いました。


※※※


●新潟の地で「自殺予防」について考える【1】〜社会全体のセーフティネット構築
http://kanzaki.sub.jp/archives/002160.html

● 新潟の地で「自殺予防」について考える【2】〜働き盛りの男性の自殺要因「多重債務」を解決する方法
http://kanzaki.sub.jp/archives/002161.html

●新潟の地で「自殺予防」について考える【3】〜「愛」の反対は「無関心」
http://kanzaki.sub.jp/archives/002162.html

●新潟の地で「自殺予防」について考える【4】〜「名ばかり管理職」の待遇改善
http://kanzaki.sub.jp/archives/002163.html

Posted by kanzaki at 2010年09月16日 21:45