2011年11月03日

「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【2】

前回の続きです。

●前回の記事: 「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002486.html

●Amazon.co.jp: はじめて講師を頼まれたら読む本: 大谷 由里子: 本
http://amazon.jp/dp/4806134635/

・大谷由里子 公式サイト | ケセラセラ
http://www.yuriko-otani.com/

【(2)実践編〜講師になったら知っておきたいスキル・テクニック】

本書の核となる部分です。
ここは全部で7つに分けて書かれています。

・準備
(1)台本を作る
(2)メリハリをつける
(3)ブラッシュアップする
(4)前日までの準備

・本番
(5)当日、本番前にすること
(6)本番中のテクニック
(7)アクシデントに対処する


今回は、(1)(2)についてまとめたいと思います。

【(1)台本を作る】

●5分ネタをたくさん作る

人の集中力は長く持ちません。
一つの話しを5分単位でまとめて、場面をまめに展開するのがコツです。

5分の話しをたくさん作っておくと、時間の調整も容易に出来ます。
通常、講演は90分単位で依頼されます。
しかし、80分とか60分とかで頼まれた場合でも、5分の話しを組み合わせすれば調整が出来ます。

5分の話しというのは、その日のお客さんの状況や年齢層によって、話しをアドリブで組み替えも可能です。
テーマに沿って話しを考えてきたのに、実際に来てみたら、来場している客層が全く違っていたなんてこともあります。
そんな時でも、5分の話しをたくさん用意しておくと、想定外の事態が起きても慌てず、自分のペースで話せます。

内容のチェックも短くて済みますし、是非、5分という単位で考えてみてください。

●メッセージを明確にする

不幸すぎる個人的経験もネタになります。
経験したことでないと話せないこともありますし、説得力があります。
聞き手も聞きやすいし、納得してもらいやすくなります。
忘れてはならないのは、「この出来事を通して、自分は何をメッセージしたいのか」です。

●ネタ帳を作る

人の記憶はあいまいなので、講演に使えると思っていても、すぐに忘れてしまいます。
ネタ帳を作り、良い言葉、使える情報をメモしましょう。
特に「データ」のメモは大切。
数字はなかなか覚えられません。
数字は説得力がありますし、端的に情報を伝える力があります。

●「たとえ話」は聞き手が身を乗り出す

興味深くて面白い話しを持っていると、「たとえ話」が作りやすくなります。
たとえ話は、聞き手が身近に感じてもらえる内容にすると、メッセージが伝わりやすくなります。

●人の心は「挑戦」と「共感」で動く

自己紹介において、
「こいつ、何者や?」と思わせるのは「挑戦」ですし、
「この人、わたしと一緒!」と感じてもらえるのは「共感」の一つです。

●失敗談は「共感」をえやすい

「こんな知識がなくて、こんな失敗をしたからこそ、みんなにそうならないよう、このスキルを持っていって欲しい」
そう話すと、聞く気になってもらえる確率を上げられます。

単にメッセージ(テーマ)だけを伝えても、「ふ〜ん」で終わってしまいます。
特別に「引っかかるもの」がないからです。
そんな時、失敗談が効果的です。
自分の経験した失敗談が入り、「そして、どう思ったか」とつなげると、納得してもらいやすいです。

●成功体験は「スキル」に落とし込め

勿論、成功談も説得力があります。
講師のプロフィールに成功体験を載せているのであれば、その成功体験について触れることで、お客さんへのサービスになります。

「成功体験は自慢に思われる」と言う人がいます。
違います。
自慢しているように聞こえないよう、成功体験を「誰でもできるスキル」に落として込んで話せばよいのです。

(例)
若くして起業し、たくさんの顧客を抱えている人の場合。
講演依頼主から、「人脈の作り方を話して欲しい」と頼まれました。
普通ならば、「お客さんを大事にしたから、お客さんが増えたんです」と言って終わってしまいます。
そこに具体的で誰でもスキルを加えます。
「こんな人と会いたい」という人がいたら、自分の知り合いでそれにふさわしい人と間を取り持ってあげる。
「この人には、絶対この情報をあげたほうがいい」と思ったら、新聞や雑誌をコピーして持って行く。
そういう心遣いをしていくうちに、お客さんがお客さんを紹介してくれて、人脈の好循環が始まりました。

こういった、具体的で「誰でも出来るスキル」を加えると、単なる自慢話しにはならないのです。

●人は「離陸の瞬間」に興味をもつ

「こんなことをしたらこうなった」
「○○したら、△△に気付いた」

「離陸の瞬間」とは、「成功するきっかけ」という意味です。

人は講師の話しの中でも、「離陸の瞬間」に興味を持ちます。
成功のヒントを得られると、聞く姿勢が前向きになります。

「気付いた瞬間」「すぐに出来そうなこと」をたくさん盛り込む講師は、人気があります。
たくさん盛り込むとリアルになって、聞いているほうもハッとさせられます。

●事実を飛躍させ、誇張して話す

嘘を言うわけではありません。
話しを聞いてもらうには、メリハリが必要だという事です。
事実をちょっと大げさに話して飛躍させましょう。

(例)
恋愛で悩んでいる友人の話し。
恋人と別れることになったのですが、悲しくて相手を殺したい・死にたいと思ったほど。
傷心旅行で海外へ行ったら、旅先で素敵な男性と出会い、恋に落ちて立ち直りました。
悶々としてもはじまりません。
そんな時こそ、新しい行動が大切なんだと思いました。

この話しのメッセージ(テーマ)は、「感情は変えられないけれど、行動は変えられる」。
彼女が悲しかった事は事実ですが、殺したいと思ったのは誇張。
誇張して大げさな方が、面白くなります(個人名は控える配慮は必要)。
海外へ行ったという事実と結果を「行動することが大切」に結びつけるのは、かなり飛躍していますが、ストーリーにするとメッセージがより伝わりやすくなります。

事実を誇張し、飛躍させると、聞くほうの心が感じて動くから腑に落ちるのです。

※※※

【(2)メリハリをつける】

●最初の3分、「ツカミ」で勝負!

最初の3分で、「おっ、今日の講師はいつもと違う」と思わせるのが重要です。
最初に聞き手の気持ちを引きつけることが出来ると、最後まで熱心に聞いてくれる確率は高まります。

「ツカミ」のネタは、必ず台本を書きましょう。
文字にして、推敲してください。
アドリブに任せるのは、あまりにも危険です。
出来上がったネタをビデオで撮影して、客観的にその3分で心が奪われるかをチェックしてください。

「ツカミ」の台本は、切り口を変えた何パターンか用意しておくと安心です。
さすが、元・吉本興業の敏腕マネージャーらしいアドバイスです。

●聞き手を安心させるため「まず結論から」

話しがあちこちに飛んでしまわないように、まず結論から話しをして、それから理由などを語るとブレなくなります。
松葉の話しに関しても、まず結論から。

先に結論を言っておくと、お客さんは安心して聞く姿勢を作ることが出来ます。
話す側も、結論を先に言っておくと、話しが飛んでも元の位置に帰ってくることが出来ます。

この法則は、池上彰さんと共通していますね。

・分かりやすい説明をするための構成方法【1】〜池上彰さん著書「わかりやすく<伝える>技術
http://kanzaki.sub.jp/archives/002354.html

・分かりやすい説明をするための構成方法【2】〜池上彰さん著書「わかりやすく<伝える>技術
http://kanzaki.sub.jp/archives/002355.html

●「思い」と「スキル」はワンセット

自分の思いを伝えるには、話しに何らかのスキル(実践方法・テクニック)を盛り込むと、聞き手は具体的なノウハウを持ち帰ることになります。

「思い」だけでは精神論になってしまいます。
講演する以上は、参加者に「行動」してもらいたいものです。

●「へ〜」「ほ〜」と夢中にさせるコツ

「この人、凄い!」「こんなことが世の中で起こっていたんだ」と聞き手を驚かせるのも必要です。

「へ〜」と思わせるには、数字が効果的です。
比較しやすいですし、端的に理解しやすいです。

話しに数字として裏付けすることで結論へ持ち込むと、「へ〜」となるのです。
数字を出すと、忘れないようにメモを取る人も出てきます。

●「5分のネタ」の中に起承転結を

5分間のネタの中に、それぞれ「起承転結」を盛り込みましょう。
そういったネタをたくさん持っていると、どんな場面でも対応した話しが出来ます。

聞き手や場面にあわせて、ネタを差し替えたり、持ち時間・残りの時間によってどのネタを使うかを決められます。

起承転結を軸に、「気付いた瞬間」「学んだ瞬間」などの体験談を入れたり、テクニックやスキルを入れます。
すると、起承転結のある5分の話しにボリュームが膨れ上がります。

●「クイズタイム」と「語呂合わせ」

クイズ形式で問いかけて聞き手を引き込む手があります。
クイズで問い合わせて、答えあわせをしながら、話したいことを伝えるのです。
あくまでも、参加者に楽しんでもらう息抜きであることを忘れてはいけません。
(ちなみに新潟県民はおとなしい性格なので、講師から質問されることを嫌がる節があります)

講演の参加者は、その場では納得して理解しても、すぐに内容を忘れてしまうものです。
イザという時に思い出せて、すぐに使える「語呂合わせ」を用意しておくと、お土産に持って帰りやすく、喜んでもらえます。

(例)
「今日はみなさん、『ABC』を持って帰ってください。
『当たり前のことを・バカにしないで・ちゃんとする』ということの、それぞれの頭文字ですが、覚えやすいですよね」

「クレームの基本を『社長、限界でしょう』という語呂合わせで覚えましょう。
クレームが起きた時には、
『謝罪・調査・原因追及・改善・処遇』
の順でお客さんに対応する事が大切です」

●説得力が欠けるときは、「人の言葉を借りる」

自分の言葉だけでは限界を感じたり、説得力が欠けることもあります。
そんな時は、人の言葉を借りて伝える方法があります。

有名な人、旬な人、過去の偉人の言葉を借りると、バリエーションが広がります。
新聞のデータやコラムも使えます。
特に、しっかりした数字に裏付けられていたり、権威のある人の書いた記事だと、説得力が出てきます。

あくまでも、自分が伝えたい事を伝えるためのバリエーションの一つにしてください。

●講演の余韻はシメしだい

どんなにそれまでの話しが良くても、いつ終わったのか分からない尻切れトンボの講演になってしまっては、とても勿体無いです。
最後のシメの話しがあると、余韻が残るものです。

1分から3分くらいで構いませんが、5分あればなお安心。
そろそろ終わりだと思ったら持ってくればいいので、時間調整もうまくいきます。

シメの話しには、自分が一番伝えたい事をもう一度入れましょう。
メッセージが明確になり、話しがブレず、参加者の満足を得やすいものです。

【続く】

●次回の記事: 「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002488.html


※※※

●連載記事(合計4回)

・「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002486.html

・「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002487.html

・「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002488.html

・「はじめて講師を頼まれたら読む本(大谷由里子さん)」の感想・まとめ・レビュー【4】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002489.html

Posted by kanzaki at 2011年11月03日 20:50