2011年10月24日

低温社会〜「高齢者のゲームセンターブーム」と「日本のソーシャルメディアの特徴」

yukimatsuri01.JPG
iPhone4で撮影。
先日、新潟市中央区のデッキィ401にて「第60回 新潟県模型展」が開催されました。

上記はその展示作品「十日町雪まつり」。
小学校4年生の男の子の作品です。

夏に涼しい気分になれるように「雪まつり」を作品にしたそうです。
人を一人ずつ違ったポーズにしています。
「作品を見るときは、作品の人の高さに目線を合わせて見てください」という事だったので、上記のように撮影しました。
まるで自分も、雪祭りの会場にいるかのような気持ちになれますね。

ちなみに下記が、本物の十日町雪まつりです。

●十日町雪まつり 公式ホームページ
http://snowfes.jp/

【高齢者のゲームセンターブーム】

地元の新聞に、写真家・荒木経惟さんの連載が掲載されています。

●47NEWS:アラーキーの幸福写真
http://www.47news.jp/araki/

最新号(上記サイトには、未だ掲載されていません)は、ゲームセンターへ通う高齢者たちへの取材と撮影でした。

最近、ゲームセンターが、高齢者の集う場所として再注目されています。
各新聞でも、それについて取り上げています。

●asahi.com(朝日新聞社):「ゲーセン」いまや常連はお年寄り シニアサービス充実 - 社会
http://www.asahi.com/national/update/0903/TKY201109030128.html

傾向としては、長時間滞在します。
ゲームの合間に持参した弁当を食べたり、お茶を飲んで仲間たちと雑談をして過ごします。
いわば高齢者の社交の場なのです。

無縁社会といわれて久しい昨今。
私が知らない場所で、こうして人と人が繋がりを求めて集まってきているのです。

特に人気なのは、メダルの山を崩して落とすゲームだそうです。
うまく落とせば、手元のメダルが増えていきます。

平日の昼間は、若い人たちは学校や仕事です。
その時間に高齢者たちが遊び、他の時間は若い人たちに入れ替わる。
ゲームセンターが、時間帯によって利用者(世代)がガラリと変わるのが興味深いです。

※※※

【日本のソーシャルメディアの特徴】

人との繋がりを求めてゲームセンターへ通う人がいるのを驚く人もいるでしょう。
けれど、インターネット上のサービス「ツイッター」「ミクシィ」「フェイスブック」などを通じ、コミュニケーションをとっているのだって、昔の人が知ったら驚くことでしょうね。

こういった、人と人が交流するインターネット上の場所をSNS(ソーシャル・メディア・ネットワーキング・サービス)と言います。

本日の日本経済新聞では、「低温社会」と題して、コミュニケーションの異変について書かれていました。
ここでいう「低温社会」とは、ネット上のコミュニケーションに依存していく中で、人間関係の温度が下がりつつある社会という意味です。

気軽にコミュニケーションがとれるインターネットの世界。
しかし、ネット上では「友達」の顔色をうかがいながら過ごし、職場では人間関係が希薄になり、孤独を感じる社員が増えてきているそうです。

関西学院大学の准教授が、日本のソーシャルメディアについて、こう語っています。

・日本のソーシャルメディアの利用者は、仲間内だけで繋がろうという人が多い。だから『みんな仲良く』という意識が強い。

・ソーシャルメディアに書き込む理由は、誰かから返事が欲しいから。ただし、その返事は共感や称賛が前提。

・ちょっとした意見を書いただけでも、「批判」にすり替わって受け取られることが多い。

電通がこんな調査を行いました。

「ネット上でよくすることは何ですか?」

1位・なるべく空気を読む

2位・なるべく相手と合わせる

関西学院大学の准教授の意見と合致していると思います。

慶応大学の教授は、そんなネット上のつきあいについて、こう語っています。

・仲間内で共感したり褒めあったりするだけのネット上の付き合いがリアルより心地よくなると、外の世界に目が行かず、意識がさらに内向きになるのではないか。

・気の合う人とだけ固まっていたいという考えは、人との摩擦を避ける傾向を強める。熱い人は敬遠されがち。

※※※

日経の記事は、インターネット上のコミュニケーションによって、人間関係が希薄になっていると訴えています。

私はそういう似たような記事を読むたびに疑問に思うのです。
インターネットと関係なしに、人間関係は希薄になっているからです。

NHKでは何度も、「無縁社会」と題して特集を組んでいます。

*NHKスペシャル無縁社会(全6回)

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【1・行旅死亡人(こうりょしぼうにん)とは】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002015.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【2・身元不明の死】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002016.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【3・薄れる家族とのつながり】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002017.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【4・会社とのつながりを失った人々】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002018.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【5・"生涯未婚"の急増】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002019.html

●神崎のナナメ読み: NHKスペシャル無縁社会〜“無縁死(むえんし)”3万2千人の衝撃〜【6・希望の光】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002020.html


インターネットを利用していなくても、社会との関係が薄らぎ、やがて孤独な中で死亡している人が多いのです。
冒頭で、ゲームセンターに集う高齢者というのは、かろうじて「孤独」から回避できる場所を見つけた人たちだと思うのです。

もし、インターネットが諸悪の根源ならば、それらを利用していない多くの高齢者は、幸せな生活を送っているはずですよね。
でも、そんな生活をしている人は、実際には多くありません。

なんでもかんでも、「インターネット=人間関係の希薄さ」に繋げるのは安易ではないかと思っています。
とはいえ、「ソーシャルメディアが日本を良い方向へ変える」とも思えません。
便利ではあっても、正解ではない。
手段であって、目的ではない。

ゲームセンターもソーシャルメディアも、笑顔と笑いがあれば、それは素敵な空間だと思います。
今後も大切に続けて欲しいです。

それとは別に、ゲームセンターより広く、ソーシャルメディアより深い関係が誕生して欲しいものです。
多分それは、「商店街」「下町(したまち)」という単位の広さと深さが、ちょうど良いような気がします。
だから別に、新しいものを作るのではなくて、「再発見」なんですけれどね。

高齢者の方たちでさえ、いろんな事情で忘れてしまった「商店街」「下町(したまち)」の良さを新しい世代の人たちの手で模索してもらいたいなあと思います。

Posted by kanzaki at 2011年10月24日 22:18