2021年08月08日

映画『犬部!』の感想〜タイトルと違いシリアスで、ペット飼育について考えさせられる内容です

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先週、林遣都さん・中川大志さんが主演する映画「犬部!」を観ました。


●映画『犬部!』公式サイト
https://inubu-movie.jp/



(林 遣都×中川大志主演!映画『犬部!』予告篇)



(中川大志、共演のワンちゃんとジャンプ披露! 映画『犬部!』舞台挨拶)


・タイトルだけ見ますと「けいおん!」「ゆるキャン△」みたいなものを想像してしまいます。
ゆるい、ペット飼育の部活コメディとか。


・ところが本作品は、犬の殺処分・動物の難病・多頭飼育崩壊など、かなり重めのテーマを取り扱っています。
私は正直、いくつかの場面で目をそむけました。
客席には小学生の女の子もいたのですが、果たして大丈夫だったのかなあ。

とても大切なテーマを扱っており、ペットを飼う際には確かに必要な情報です。
けれどそれについては、まずは大人が知ればよいこと。
子供には、かみ砕いてゆっくり説明していけば良いのかなあと思います。

「犬部」という名前も実話だから、嘘偽りはありません。
けれど、観客の期待したものと内容にギャップがあったように感じます。


・学生時代の「犬部」のエピソードは、そこまで多く描いてはいません。
主軸となるのは、大学を卒業し、獣医になってからのお話しです。
ペットショップの多頭飼育崩壊を主人公たちが救い、譲渡会を行うお話しがメインです。
折々に、学生時代のエピソードを盛り込んでいます。

ここら辺も、「犬部」というタイトルなのに、その活動の後日談がメインというのも、観客の多くは混乱したかも。


・タイトルと内容にギャップがあることを事前に知っていれば、この映画は大変すばらしいですよ。

伝えたいシリアスな部分を脚本上の矛盾もなく伝え、小気味良く展開しています。
最近は、作品内の各エピソードの時間配分がおかしい映画が多かったです。
(意味のないところに延々と時間を費やす割に、肝心な部分が短かったり)

この映画は、ペース配分がとても良かったです。
だれることはありません。


・主人公たちの見た目が変わらないせいで、学生時代と現代で巻き起こるエピソードが、ごっちゃになっている印象はありました。

また、現代パートだけ見ても、今現在巻き起こっているエピソードは、舞台が東京なのか青森なのか分かりにくい感じはしました。
脚本のせいというより、編集とか、似たような風景のせいかもしれません。


・登場人物はそれなりに多いのですが、それぞれの人物に過去のバックグラウンドがあり、それが劇中の行動にきちんとつながっている印象がありました。

各人それぞれ、そんなに過去の話しに時間を割いているわけじゃないのですが、そう感じさせる脚本は大したものです。
実話が元の映画だというのもありますが、うまく盛り込めていると思いました。


・かえって、林遣都さん演じる主人公が一番、その行動原理が分からないかも。
ものすごく熱血で、生きている動物を無理やり殺生することに抵抗します。

熱意はわかるのですが、途中までは常にイライラして汚い言葉を吐いていたので、どうにも共感しにくかったです。
後半は、中川大志さん演じるもう一人の主人公の再登場もあり、性格が中和されて、だいぶ良い感じになりました。

殺処分をはじめ、ペットに関する諸問題をこの今の日本で取り組むには、これぐらい熱意がないといけないのかもしれません。
言葉の粗さは、そういう日本の現状へのいら立ちと、打破するための気合いなのかも。
そういう「何かを変えよう」というパワーを感じられるのは、遣都さんの演技力のおかげだと思います。


・中川大志さん演じるもう一人の主人公の方が、感情移入できるように思います。
大学卒業後、愛護センターで働く心優しい青年。
動物愛護センターという、飼い主が手放した犬等を殺処分する場所は、動物が好きな人には辛い場所です。

だからこそ、内部から改革していこうと高い志を持っています。
しかし、日々の生命を奪われる場面を目の当たりにして、精神が病んでしまい退職します。
それからしばらくし、犬部のメンバーとの再会を機に、復職します。

むしろ、この動物愛護センターのパートの方を中心に観てみたかった気がします。
一般人には、あまり見ることのできない施設ですから。
中川さんと、愛護センター職員である田中麗奈さんの共演は、観ていても華がありますね。

中川さんが改革していった内容や、復職する迄の心の揺れ動きとか、時間をもっと割けばさらに深く表現できたように思います。
きっと、相当なボリュームになるので、別作品で観てみたいですよ。


・結構、シリアスでハードな作品。
決してゆるい内容ではありませんが、現在の日本のもう一つの側面を描き出す貴重な作品だと思います。


●林遣都さん出演映画の感想:

映画『私をくいとめて』を観た感想〜のん(能年玲奈さん)以外で、「怒」の感情で評価される若手女優さんを私は知りません。共感できる「怒」の演技に注目してください
http://kanzaki.sub.jp/archives/004752.html


●中川大志さん出演映画の感想:

【100点満点】映画「坂道のアポロン」を観た感想〜今の時代、観る者の心を傷つけない作品は貴重です。三木孝浩監督は、新しい時代の大林宣彦監督になりえると思う
http://kanzaki.sub.jp/archives/004028.html


【動物愛護に関する別の作品】


●神崎のナナメ読み: 映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002181.html

●神崎のナナメ読み: 映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002182.html

●神崎のナナメ読み: 映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002183.html

Posted by kanzaki at 2021年08月08日 10:27