2011年07月15日

福島県南相馬市にて「ペットを飼うことが出来る大規模な仮設住宅」が完成しました〜建設を働きかけたのは、新潟県のボランティア団体「新潟動物ネットワーク(NDN)」です

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NHK新潟放送局にて夕方、地元のニュース番組「新潟ニュース610」があります。
「ペットとの絆をささえたい」というタイトルで、東日本大震災関連の取材をオンエアしていました。
震災や原発事故の影響下、被災者と避難してきたペットとの絆を支えてきた活動を紹介しています。

【避難生活でペットと暮らせない】

避難所を出た後に入る仮設住宅などの避難先。
実は現在、ペットを飼うことが出来ないところが殆どです。

こうした中、福島県南相馬市では、全国でも珍しい「ペットを飼うことが出来る大規模な仮設住宅」が完成しました。
「ペットとの絆を支えたい」と自治体に建設を働きかけたのは、新潟県のボランティア団体「新潟動物ネットワーク(NDN)」でした。

●新潟動物ネットワーク(NDN)
http://ndn2001.com/

ペットは、避難者の大きな心の支えとなっています。
しかし避難生活が長引く中、避難者とペットとの暮らしに新たな問題が起きています。

新潟県や福島県にある避難所の多くは、ペット用のスペースが設けられています。
しかし、避難所を出た先である仮設住宅などは、ペットの飼育が認められていないところが殆どです。
理由は、ペットたちの鳴き声や臭いが、他の避難者に迷惑がかかるからです。

「ペットと離れて暮らしたくない」
そういった理由で、避難所にて暮らし続ける人も少なくはありません。

番組取材班は、避難者へ話しを聞いてみました。
話してくれたのは年配の女性。ペットは成犬です。

「もう常に一緒にいたので、やっぱり離れちゃうと、あとが寂しくなるのかなあって。
できればペットと(同居が)可能なところで、うちの中で自由に遊ばせられる、そういうところに引っ越したいなと思っています」

【新潟県中越地震の教訓】

そんなペットとの絆を支えたいと立ち上がったのが、動物愛護のボランティア団体「新潟動物ネットワーク(NDN)」です。
代表は岡田朋子(おかだともこ)さんです。

活動のきっかけは、7年前の新潟県中越地震(平成16年)の時の経験でした。
避難所の多くでは、ペットと暮らすことが出来ませんでした。
その為、クルマで避難生活を送る人が相次ぎ、中にはエコノミークラス症候群で亡くなる人もいました。

このような理由から、新潟県は全ての仮設住宅でペットを飼う事が出来るようにしたのです。
その当時の経験を役立ててもらいたい・・・。
NDN代表の岡田さんは、新潟県内への避難者が多い福島県の自治体に対し、ペットと暮らせる仮設住宅の建設を要請しました。

先月下旬、福島県南相馬市に、要請通りの仮設住宅が完成しました。
ここには、ペットを飼っている人だけが入居できます。

岡田さんも、完成したその仮設住宅を訪問しました。
仮設住宅の入居者に話しを聞いてみました。
話しをしてくれた入居者は年配の女性。ペットは犬です。

岡田さん
「(ペットの犬は)今まで、どこかに預けて?」

入居者
「ううん。ずっと連れて歩いたの」

岡田さん
「お母さん、偉い〜(握手交わす)」

入居者
「今回で(引越しは)七回目です(笑)」

岡田さん
「頑張りましたねえ」

入居者
「(ペットが)本当に可愛くて離せなかったです」

岡田さん
「良かった、良かったわ。本当に」

しかし、まだこのような仮設住宅の数は少ないです。
応募があったおよそ200世帯のうち、実際に入居出来たのは80世帯あまりだけでした。

岡田さんが、番組取材班のインタビューに答えます。

岡田さん
「飼い主さんにとって、ペットと一緒に暮らすことのほうが癒しになります。
(だから)これは何がなんでも、"仮設住宅にペットと一緒に"という風な流れを作らないと駄目だなと思いました」

【ペットと一緒に再出発】

ペットを飼うことが出来る仮設住宅を待ち望んでいた家族が、新潟県小千谷市にいます。
福島県南相馬市から避難してきた渋佐光照さん家族です(夫、妻、娘の三人)。

小千谷市から提供された会社の社員寮で避難生活を送っています。
長年、ペットと暮らしてきた渋佐さん。
今回の震災による津波で、飼っていた二匹の犬を失いました。
唯一助かった猫の「太郎」と避難してきましたが、今の避難先はペットを飼えないため、近くの施設に預けています。

渋佐光照さんへのインタビュー(方言が強いので、標準語訳)
「毎日、頭から(ペットの太郎の事が)離せなかった。
余計な心配はするなと(妻は)言うけれど駄目。
寝ていると、どうしているのかなあって」

渋佐さんは、いつ太郎と再び一緒に暮らせるのか、不安を抱いていました。
ついに今回、念願だったペットと暮らせる仮設住宅へ、入居出来ることが決まりました。

渋佐光照さん
「いやあ、待ち遠しいね。私の宝みたいなものですよ」

そういって渋佐さんは、携帯電話の待ち受け画面にしている太郎の写真を見つめます。

福島県の仮設住宅へ引越しの日の朝。
渋佐さんは、預けていた太郎に会いに行きました。
ペットの入居には検査を受けないといけない為、太郎を残して一足早く、福島へ帰宅することになったのです。

籠の中の太郎に「また会えるからね」と言います。
しばしの別れにも悲しさがこみもあげ、娘さんは泣いています。

福島県南相馬市。
入居から10日が経ったこの日。
待ちに待った、太郎との再会が近づいて来ました。
渋佐光照さんは、そわそわと腕時計を何度も見たり、日差しの強い外へ出て、まだやって来ないのかと周囲を見渡します。

太郎を連れてワンボックス車がやって来ました。
車内には、太郎たちペットの入った籠があります。

その籠の入り口をスタッフが開けました。
すると渋佐光照さんは直ぐ様、さっと手を太郎にのばし、「元気だったか?」と何度も撫でます。
その後、奥さんも感無量の中、太郎をその胸に抱きます。

奥さん
「今日から一緒に寝れるよ太郎。なっ?」

震災から4ヶ月。
家族が再び一つになりました。

渋佐光照さん
「一緒に住めると思うと気が楽ですよ。
本当にいつも気にかけていたし、太郎の事。
だから、新潟のボランティアのサポートしてくれた人達に本当に感謝しています」

震災の経験がつないだ家族の絆。

奥さん
「毎日一緒だから。癒しですよ、癒し(笑)」

ようやく迎えられた家族全員の故郷での再出発です。

【最後に】

ペットは家族同然なので、被災者の皆さんは「どうして逆に、一緒に仮設住宅に入れないのか?」という声もありました。
家族にとってペットは、とても大切な支えの一つなのです。

福島県南相馬市によりますと、「ペットと共にどうやったら暮らせるのか」等のペットに関する問い合わせが、多いときで一日50件あまりも被災者から寄せられています。

福島県南相馬市は、今後もペットと暮らせる仮設住宅を増やしていきたいとしています。
ただ、その一方で、こういった仮設住宅に反対している自治体、住民の皆さんもいます。

新潟のボランティア団体「新潟動物ネットワーク(NDN)」の皆さんは、今後も理解を得ながら協力を呼びかけていきたいと話していました。

大きな問題に対処するには、たくさんの課題があります。
それに対処するには、多くの人の「目」と「口」が必要です。

様々な立場・観点から見つめる「目」により、見逃されがちだけれど重要な課題を発見。
そして「口」を使い、実行可能な人達へ訴える。口は「熱意」と言い換えても良い。

NDNさんの行動は、まさにそれにあたります。
その行動力が、被災者のみなさんを救っているのです。

今後も活躍を期待しています。
(私も何か役に立てれば良いのですが・・・)

【関連記事】

●「新潟動物ネットワーク(NDN)」の代表・岡田朋子さん〜10年間の動物愛護ボランティア活動を続けてきた岡田さんを支えたものとは?-BSN水曜見ナイト「伊勢みずほの夢と逢いましょう」より
http://kanzaki.sub.jp/archives/002397.html

●東日本大震災にて新潟はペット支援に大活躍しました
〜「新潟動物ネットワークNDNフェスティバル2011トークセッション」フリーアナウンサー伊勢みずほさん・大杉りささん、新潟動物ネットワーク代表 岡田朋子さん
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●新潟県は動物達の殺処分ゼロを目指しています
〜「新潟動物ネットワークNDNフェスティバル2011トークセッション」フリーアナウンサー伊勢みずほさん・大杉りささん、新潟動物ネットワーク代表 岡田朋子さん、ALIVE代表 野上ふさ子さん
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●映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002181.html

●映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002182.html

●映画「犬と猫と人間と」を通して「動物愛護」について考えてみる【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002183.html

Posted by kanzaki at 2011年07月15日 00:01