2013年12月23日

「山鬼文庫(さんきぶんこ)」〜金沢市にて、築100年の町家を改造した私設図書館がオープン

図書館はなにも、公共のものだけではありません。
個人が運営する「私設図書館」というものがあります。


2013年10月5日、金沢市に「山鬼文庫(さんきぶんこ)」という私設図書館がオープンしました。
(地元夕刊紙より)


●公式サイト「山鬼文庫」
http://www.sankibunko.com/

住所:〒920-0923 金沢市桜町5-27
電話:076-254-6596
図書閲覧:1回500円、年会費 3,000円(何回でも)、フリードリンク
開館期間:基本 4月最初の週末ー11月最後の週末
※2013年12月3日(火)から2014年3月まで冬休み。会員は予約にて、本の閲覧可能。

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(館長・金沢美術工芸大学の森仁史教授)


築100年近くの町家を改造し、私設図書館を作りました。
2万冊を超える専門書・雑誌が薄明かりに照らされ、流れるジャズがゆったりした時間を演出します。


館長は、金沢美術工芸大学の森仁史教授(64歳)です。
「タブレット端末で本を読める時代だからこそ、日本の伝統的空間の中の本の質感やにおい、手触りを感じて欲しい」と語っています。


場所は、日本三名園の一つ「兼六園」から東に約1.2キロ。
浅野川に面したところに、その町家はあります。
1919年に建てられた木造2階建て。
一部が吹き抜け構造になっています。


施設図書館の名前は、館長・森さんの名字が、「木」が3つで構成されているから「山鬼文庫(さんきぶんこ)」と命名されたのです。


森さんは大学院修了後、千葉県松戸市の学芸員になりました。
デザイナーや写真家を養成した東京高等工芸学校(現・千葉大工学部)の展覧会に携わったのを機に、美術の専門書などを買いあさるようになりました。


2009年、大学の教授就任に伴い金沢市へ来ました。
来年3月の退職を控え、「集めた書物を公開しようか」と春頃から物件探しを始めました。
奥様がこの町家を見つけ、購入となりました。
「贅沢なところがなく、よくある造り。平凡だからこそ和風の建物の良さがあるのです」


この町家は、2000年から約10年間、料亭やカフェとして使われていました。
カウンターや調理場を取り外したスペースに書棚を配置しました。
また、写真集や雑誌など、ビジュアルが豊富なものは玄関近くに配置したります。


1階の座敷部分はそのまま残し、本を読みながらコーヒーを飲むことも出来ます。
2階にはソファや子供向けの絵本などが用意されており、アートギャラリーとしても活用を計画中です。


蔵書の中には、戦前の貴重な雑誌も多いです。
写真家・名取洋之助が旧日本軍の出資で発行したプロパガンダ雑誌や、名取主宰のグラフ誌「NIPPON」など、日本の近代デザイン史に欠かせない資料もあります。


※※※


私設図書館の蔵書は、館長のキャラクターが色濃く反映されるので、とても興味深いと思いました。
ある意味、館長の頭と心の中を体験出来るスペースとも言えます。


また、山鬼文庫は、古い建物を使用したところもいいですね。
その佇まいそのものが、その町の歴史を物語っているとも言えます。


私設図書館は地域のコミュニティーとしての役割があります。
個人負担で開設している場合が多く、長期に渡る運営が難しいそうです。
そんな中でも下記のように、全国にはさまざまな私設図書館がありますよ。


●地下の古本コーナーで懐中電灯を持って本を発掘するという、本との出会いを演出している新潟市の「ジブン発掘本屋 ツルハシブックス」
http://tsuruhashi.skr.jp/


●銀行やカフェ、菓子店など町の各所に小さな図書館がある長野県小布施町の「おぶせまちじゅう図書館」
http://machitoshoterrasow.com/pg675.html


●全国の少女漫画ファンが寄贈した5万冊を開放している東京都あきる野市の「少女まんが館」
http://www.nerimadors.or.jp/~jomakan/


●岩手県大槌町で被災した子供たちに個人宅を開放している「森の図書館」
http://tohoku.itot.jp/otsuchi/21


※※※


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Posted by kanzaki at 2013年12月23日 12:41