2011年01月16日

2010 NIIGATAショップデザイン賞関連企画「魅力ある店づくりから始まるまちづくり」シンポジウム〜新潟のフリーアナウンサー伊勢みずほさんが考える店づくり、街づくり

前回まで、川島蓉子(かわしまようこ)さんによる基調講演の模様をまとめてみました。


●2010 NIIGATAショップデザイン賞関連企画「魅力ある店づくりから始まるまちづくり」シンポジウム〜川島蓉子(かわしまようこ)さんによる基調講演【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002257.html

●2010 NIIGATAショップデザイン賞関連企画「魅力ある店づくりから始まるまちづくり」シンポジウム〜川島蓉子(かわしまようこ)さんによる基調講演【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002258.html

●2010 NIIGATAショップデザイン賞関連企画「魅力ある店づくりから始まるまちづくり」シンポジウム〜川島蓉子(かわしまようこ)さんによる基調講演【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002259.html

ちなみに、基調講演の前に行われた表彰式の模様は以下のとおりです。

「新潟ソーシャルメディアクラブ(NSMC)」の方が撮影・編集・アップしております。

基調講演終了後、休憩を挟み、14時55分よりパネルディスカッションが行われました。

●パネルディスカッション
パネリスト
・川島蓉子さん(伊藤忠ファッション(株)マーケティングマネージャー)
・西村伸也さん(新潟大学副学長/工学部教授)
・伊勢みずほさん(フリーアナウンサー)
・篠田昭さん(新潟市長)

コーディネーター
・鈴木聖二さん(新潟日報社編集委員長)


●パネルディスカッション - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3

パネルディスカッション(panel discussion)とは、討論形式の一つである。掲げられたテーマについて、異なる意見を持った複数(3人以上)の討論者によって、公開で討議を行う。1990年代頃から盛んに行われるようになった。略してパネディスとも。
まず、それぞれの討論者が順番に意見を述べ、その後にお互いに議論を行い、会場からの質問にも応じるといった形式が一般的である。
討論者をパネリスト(または和製英語でパネラー)といい、討論をまとめたり適切に話題提供を行う司会役をコーディネーターという。時間配分上や話をまとめる都合上、パネリストは5人前後が適切と考えられている。パネリストの人選も重要であり、同じ意見の人物を集めてもあまり意味がなく、互いに別の観点から考察できる人物を選ぶ必要がある。


4人のパネラーから店づくり、街づくりについて語ってもらいました。
私はフリーアナウンサー・伊勢みずほさんの意見が一番、心に響きました。
理由は「我々庶民と目線が同じだから」。
以下、伊勢さんが話された内容をまとめてみたいと思います。


※※※


みなさん、こんにちは。伊勢みずほです。
BSN(新潟のTBS系列テレビ局)で9年前からアナウンサーをしていました。
去年の3月にフリーになりまして、その時、仙台に帰ろうか悩んだのですが、やはり新潟の魅力・楽しさの虜になっているので、このまま新潟でお仕事を続けていけたらなと思っています。

5年間、「イブニング王国(新潟で夕方にテレビ放映されていた帯番組)」という番組で、「まちかど行ってみずほ」というコーナーを担当していました。
新潟県の商店街ばかりを訪ね歩くというコーナーでした。
5年間で大体、550店舗以上取材させていただきました。
おそらくその中で500店舗以上が食べ物屋さんだったのではないかと思います。

いろんなお店を県内くまなく回らさせていただき、私が感じたことは、本当に良いお店が沢山あることです。
いっぱい美味しいものもありますし、素敵なお店もあります。
そこでしか食べられない、買えないお店ばかり。
そんな魅力的な新潟の宝をいっぱい持っていながらも、それを活かして、例えばそれを観光地にしてしまおうとか、お金をどっさり儲けようとか、お客さんをどっさり呼び寄せようとか、そういった考えにはなっていません。
もう一歩いけば、もっともっとお客さんが来て、もしかしたらお金持ちになれるかもしれないのにと言うようなことがあるんですね。
でも、そういったところが無く、奥ゆかしさがあるというのが新潟の人の素晴らしさでもあります。

先ほど、川島さんが基調講演で、「企業に元気がない」とおっしゃっていました。
大きな企業でさえ元気が無い中、商店街で家族だけで頑張っていらっしゃるお店も、もしかしたら、もっともっと自信を持ちにくい状態になっているのかなと思います。
でも本当は、東京に負けないぐらい美味しいものを持っていたり、魅力的なものがあるという自信を持っていただきたいです。

元気な街づくりというのは、人が元気でないといけないと思いますので、私達放送局としては、ずっと発信していかなければいけないなと改めて感じさせられました。



私は個人的には、お客さんが来ないよりは、お客さんがたくさん来たほうが良いと思います。
県内の商店街を取材していて、「もう、みずほちゃん、何とかしてよ! 来年、ここがあるか分からないのよ」と言うような声をたくさん聞いています。
お店にお客さんがたくさん来てもらえるようにするには、よく周知するのが一番早いのかなと思います。

「まちかど行ってみずほ」の放送後に視聴者の方から頻繁に言われたことは、
「昔からあの店の前は、しょっちゅう通っているから、あるという事は知っていたんだけれど、お店の中がどうなっているのか、何を売っているのか、どれぐらいの値段なのか、どんな人がやっているのかが分からないから入れなかったのよ」
という声をよく聞いていたんですね。

それが、テレビやラジオ等で紹介することによって、「あっ、これならば私も行ってみたいわ」と思ってくださる人が沢山いらっしゃるわけですよ。
みなさんも、どんなお店なのか分からないと入りにくいという事があると思うんですよね。

お店の方々はみなさん、店の中に魅力的なものを用意し、それに自信があると思います。
更に、外にも知ってもらう努力も必要なんじゃないかなと思っています。
本で言えば序章をちょっと本屋で立ち読みして、これは面白そうだなあ、わくわくさせるなあと興味を持たせるような工夫が、お店にも必要なんじゃないかと。

今回、ダブル受賞された古町糀製造所さんは、外から見ても一目瞭然で、へぎ(糀を発酵させるための板)が壁一面に張られているんですね。
それで糀(こうじ)を作って、それを使った商品を出しているお店なんだなと一目瞭然で分かります。
お店が開店している時は、店内がオープン(外と店内に仕切りが無い)になっていまして、お客様が立ち寄って美味しいドリンクが飲めるようになっているんだなあと良く分かります。

最近、商店街でも無くなって来ているのですが、対面式のパン屋さんとか、(外から見えるように)お惣菜が並んでいるお店や、ぱっと見ると店主のおじちゃんとか、おばちゃんとかが笑顔で立っていらっしゃるところですと、行ってみたいな・入りやすいなと思うんですよね。

外から見ても分かりやすく、知ってもらう工夫というのが必要なんじゃないかなと思いました。



今日はどうもありがとうございました。
ショップデザイン賞の審査では、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。
私達は審査の際、実際に各お店を巡らさせていただいたのですが、これをそのままツアーとして組んでも面白いんじゃないかなと言う話しも出ました。

私は以前から、「商店街バスツアー」をやりたいとラジオ等でも申しておりまして、実は、それを聴いていた新潟市内の観光バス会社さんから「うちのバスを使ってくださいよ」と連絡がありました。

普段は着ない服なんだけれど、お店の人が勧めてくれるから着てみたら、ちょっと今までと違った自分になれて良かったというのがあるじゃないですか。
一人だとなかなか行かないけれども、みんなと一緒だったら行ってみたいという事ってあると思うんですよね。
ぜひ、お店紹介バスツアーをやってみたいなと思います。

私達、お店を利用する側が、お店を元気にして・街を元気にしていく。
一人ひとりが持っているパワーというのは、本当はもっともっと凄いと思うんですよね。
私はこれからも皆さんと一緒に、お店の発掘とか、応援する番組をやっていけたらなと思います。
今日はどうもありがとうございました。

(客席から大拍手)


※※※


以上がお話しされていた事のまとめです。

「商店街バスツアー」いいですねえ。
無駄な税金で建造される「モニュメント(記念建物、記念館等)」で集客を狙うより、とても良いアイディアだと思います。

理由は、その為に新しいものを必要としないからです。
古いものを壊して、意味の無い新しいものを作るという行為が無く、その街本来の姿でお客様をもてなすからです。

街の魅力というのは、抽象的には「歴史」だと思うのです。
その歴史は教科書に書かれているものではなく、実際に歩いて視界に入ってくる外観や住んでいる人・商売している人の顔にあらわれているのです。

既存のものを否定した街づくりを行うと、どこもコンクリート色になってしまいます。


●参考記事:「犬と鬼」〜東洋文化研究科のアレックス・カーさんが語る観光まちづくり【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002206.html

●参考記事:「犬と鬼」〜東洋文化研究科のアレックス・カーさんが語る観光まちづくり【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002207.html


残念ながら、古い歴史のある新潟の街ですら、過去を否定した街となってしまいました。
それは現在も同じです。


●ロビン アート スタジオ・良きものとゆっくりと : 新潟市中心街の江戸時代の蔵が解体されています
http://ssrobin.exblog.jp/13947700/
(ブログ抜粋文章)
古町もただ新しい店を誘致するだけでなく、その場所の歴史にそった街づくりをしなければなりません。藤田さんのおばあさん(80代)はここに住んで生活しています。
ものすごい高額な税金をかけておいて、市役所はこういう小さなことにほとんど注意を払いません。小沢邸や斎藤家別邸などの大きなものには大金を投じますが、私有財産だという理由から、一円たりとも予算を付けません。役所は予算がなくても、本当は壊したくなかった住人に対して、街づくりのビジョンを示したり、アイデアを提供したり、せめて相談にのってあげてもいいのではないかと思います。
小さい歴史や生活をないがしろにした街はシロアリに食われたように、駐車場とコンクリートと役所の認めた遺産だけの街となり衰退崩壊します。

●蔵織のお知らせ : 新潟市古町7の江戸時代の蔵が解体、残念!
http://craole.exblog.jp/12656021/

kura0101.JPG

kura0102.JPG
(写真の転載は、上記社長の許可を得ています)

上記は、NIIGATAショップデザイン賞を受賞したヒッコリースリートラベラーズの建物を設計・施工された会社社長のブログです(いつもお世話になっているので、授賞式を見に行ったのです)。

新潟市古町7の江戸時代の蔵が解体されている記事です。
もし、新潟市に気軽に相談できる窓口があり、広くそれを多くの市民が知っていたら、こういう結果にはならなかったでしょうね。
不動産屋の意見だけが頼りなってしまうから、こうなるのです。

これは街の魅力である「歴史」の一ページが消えた事になります。
役所だけが認めた建物だけが残される街は、もはやモニュメント(記念建物、記念館等)の羅列であり、「魅力的な街づくり」とは逆行してしまうのです。

歴史を壊さないようにするには、個人、会社レベルだけでは無理です。
行政の力が必要になります。
行政の方だって、家に帰れば一般市民。
誰だって、魅力ある街に住みたいものです。
自分自身が住みたい街を作るには、その街や商店街を歩いて、歴史の顔である古い建物、商店街の人々の顔を見て回らないと無理だと思うのです。

もし自分の足で歩く時間が無いのならば、商店街の人々と同じ視線で対話のできる伊勢みずほさんのような方を積極的にアドバイザーとして登用するのが良いのではと思います。

(追記)
今回の記事を伊勢さんの公式サイトにてご紹介していただきました。

●ありがとうございます!!|伊勢みずほさんのオフィシャルブログ
http://ameblo.jp/isemizufo/entry-10770634969.html

※※※
(関連サイト)

●伊勢みずほさんのオフィシャルブログ
http://ameblo.jp/isemizufo/

・伊勢みずほさんのオフィシャルブログ(旧)
http://mizufo.blog129.fc2.com/

・BSNテレビ「THE新潟スペシャル」(月一で放送中、次回は1月19日放送)
http://www.ohbsntv.com/niigatasp/

・BSNラジオ「ラジオ版 まちかど行ってみずほ」(現在レギュラー放送中)
http://www.ohbsn.com/rd_mizuho/

・BSNテレビ イブニング王国「まちかど行ってみずほ」(昨年3月で終了)
http://www.ohbsn.com/eveoh_mizuho/

●伊勢さんについての説明記事:
・新潟のフリーアナウンサー伊勢みずほさんの「上古町版・まちかど行ってみずほ」に参加しました【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002139.html

・新潟のフリーアナウンサー伊勢みずほさんの「上古町版・まちかど行ってみずほ」に参加しました【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002140.html

・新潟のフリーアナウンサー伊勢みずほさんのブログが引越ししました(アメーバブログ)
http://kanzaki.sub.jp/archives/002255.html

・伊勢みずほさん(新潟のフリーアナウンサー)による講演〜「まちなみ探訪 食探訪!行ってみずほオススメのまち」〜景観まちづくりフォーラム【1】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002292.html

・伊勢みずほさん(新潟のフリーアナウンサー)による講演〜「まちなみ探訪 食探訪!行ってみずほオススメのまち」〜景観まちづくりフォーラム【2】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002293.html

・伊勢みずほさん(新潟のフリーアナウンサー)による講演〜「まちなみ探訪 食探訪!行ってみずほオススメのまち」〜景観まちづくりフォーラム【3】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002294.html

・伊勢みずほさん(新潟のフリーアナウンサー)による講演〜「まちなみ探訪 食探訪!行ってみずほオススメのまち」〜景観まちづくりフォーラム【4】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002295.html

・伊勢みずほさん(新潟のフリーアナウンサー)による講演〜「まちなみ探訪 食探訪!行ってみずほオススメのまち」〜景観まちづくりフォーラム【5】
http://kanzaki.sub.jp/archives/002296.html

Posted by kanzaki at 2011年01月16日 17:19